2020年12月24日木曜日

革命 / andymori (2011)

何と言っても、andymori の魅力は、その疾走感でした。
"everything is my guitar" を最初にラジオで聞いた衝撃は忘れられません。
スピードと溢れる言葉。

そのイメージのままセカンドアルバムまで走ってきたけど、このサードアルバムでちょっと立ち止まった感じ。

表題曲 "革命" はストレートなロックンロールで、この曲がこのアルバムを表しています。少し思わせぶりな歌詞。届きたいが届かない現実。

もはや、このアルバムでは疾走感は感じられません。


  1. 革命
  2. 楽園
  3. Weapons of mass destruction
  4. ユートピア
  5. スーパーマンになりたい
  6. ダンス
  7. ボディーランゲージ
  8. Peace
  9. 無までの30分
  10. Sunrise & Sunset
  11. 投げKISSをあげるよ


  • 小山田 壮平: G,V
  • 藤原 寛 : B
  • 岡山 健二 : D

The Hissing of Summer Lawns / Joni Mitchell (1975)

"Court and Spark" に続く7枚目のスタジオアルバムになります。

前作ほどフックのある曲は揃っていませんが、聴きこむほどに良さが染みてくる名作です。

何と言っても、そのサウンドへのこだわりです。実に繊細。
ジャズへの傾倒を言われることが多いのですが、それほどジャズらしさは感じません。おそらく、彼女がイメージするサウンドを再現しようとすると、テクニシャンが必要だったのではないかと思います。

ポップなロックン・ロール "In France They Kiss on Main Street" でアルバムは始まりますが、驚きなのは2曲目 "The Jungle Line" です。アフリカのドラム・サウンドが大胆にフィーチャされており、そこにムーグ、ギターが絡まります。かなり挑戦的なサウンドですが、こういう音楽を作れるところが、Joni Mitchell を偉大なミュージシャンたらしめているのかもしれません。

歌の内容は、僕も敬愛する Henri Rousseau へのオマージュ。
"They go steaming up to Blooklyn Bridge, steaming up the jungle line"

その他 "The Hissing of Summer Lawns"、"The Boho Dance" など、味わい深い曲が揃っています。

ちなみに、彼女のファンである Prince は、このアルバムを最も愛しているとのこと。ちょっと分かるような気がします。


  1. In France They Kiss on Main Street
  2. The Jungle Line
  3. Edith and the Kingpin
  4. Don't Interrupt the Sorrow
  5. Shades of Scarlett Conquering
  6. The Hissing of Summer Lawns
  7. The Boho Dance
  8. Harry's House; Centerpiece
  9. Sweet Bird
  10. Shadows and Light


  • Victor Feldman : Congas, Keyboards, Vibraphone
  • Joe Sample : Keyboards
  • Wilton Felder : Bass
  • Larry Carlton : Guitar
  • Jeff Baxter : Guitar
  • Robben Ford : Guitar
  • David Crosby : Vocals
  • Graham Nash : Harmonica, Vocals
  • James Taylor : Guitar, Vocals

2020年12月12日土曜日

Have Fun / シンリズム (2017)

"シンリズム"ってなんと本名らしい。ミュージシャンにならないといけない名前をつけましたね。

この2枚目のアルバムは、ストレートなポップ・ミュージックで好感が持てます。
歌詞の内容はなんてことはない日常。意味深な言い方や、怒りやアジテーションや応援の表現なんかはなく、なんだろう、素直な正確なんだろうなと思います。

ビックリなのは、"ショートヘア"。SHISHAMO 宮崎朝子をフィーチャして、彼女のボーカルから始まる女性目線の曲です。でもシンリズムの曲調は、全体的に女性ボーカルの方が合ってるかも。というか、宮崎朝子の声がいいんだろうか。

"遊びロック"では、ギターロックにも挑戦していて、意外とバリエーションに富んだ内容になっていると思います。

聞くところによるとシンリズムは神戸出身らしい。それ聞くだけでちょっと応援しようという気になりました。1997年生まれということなので、大学は卒業したのかな。このアルバムは大学生のときに作ったらしいです。


  1. 彼女のカメラ
  2. FUN!
  3. 春の虹
  4. ラジオネームが読まれたら
  5. ATTACK! ATTACK! ATTACK!
  6. Pure
  7. 話をしよう
  8. 遊びロック
  9. ショートヘア
  10. 長く続く道
  11. Music Life

2020年12月6日日曜日

Beauty Behind the Madness / The Weeknd (2015)

ドラッグ、セックス、犯罪というダークな世界観音楽の中心的存在 The Weeknd のセカンド・アルバムにして、彼をスターダムに昇らせたヒット・アルバムです。

サウンド的には、ヘビー R&B とでも言うんでしょうか。音数の絞りとシンセとコーラスの重装のコントラストが効いています。
また、80年代のシンセ・ポップ的なところもあり、決してヘビー一辺倒ではないところが不思議な感じです。
"Can't Feel My Face" はベース・ラインの効いたダンス・チューンですし。

特徴は、やはり彼の声。ファルセットを含めた高音が綺麗で艶かしい。
世間が言うように、また本人がリスペクトしているように、Micheal Jackson 的な感じが強く感じられます。


  1. Real Life
  2. Losers (feat. Labrinth)
  3. Tell Your Friends
  4. Often
  5. The Hills
  6. Acquainted
  7. Can't Feel My Face
  8. Shameless
  9. Earned It
  10. In the Night
  11. As You Are
  12. Dark Times (feat. Ed Sheeran)
  13. Prisoner (feat.Lana Del Rey)
  14. Angel


Produce:Jason "Daheala" Quenneville, Stephan Moccio,  Carlo "Illangelo" Montagnese, Labrinth, The Pope, Kanye West, Ben Billions, Mano, Dannyboystyles, Quenneville, Ali Payami, Max Martin, Peter Svensson


2020年11月29日日曜日

MOONGLOW / 山下達郎 (1979)

1979年のこの時期においては、山下達郎はほぼマイナーな存在だったと言っていいと思います。

次に出る "Ride on Time" で一気にブレーク・アップすることになりますが、その直前の上向き度合いが感じられます。

一番いい曲は、"永遠のFull Moon" でシングルカットもされています。ドラム・パターンが心地よいです。いい曲ではあっても、売れるようなキャッチーさはないですが。

Curtis Mayfield バリの "Rainy Walk" は、翌年出たシングル "Ride on Time" のB面に入れていることから、本人も気に入っていたのかもしれません。Curtis ほどねちっこくはありません。

"Funky Flushin'" は、"Bomber" の人気を受けて発展させたもの。ポリリズム路線で、この後もいろいろな曲で試しているようです。

"Hot Shot" は、ファンキーさの中にギターソロが入ってくるという、典型的なブラック・ロックですが、歌詞が "Solid Slider" 路線ですね。

シンセが効いているファンク・ナンバー "Yellow Cab" から一番ポップと言える(初めてのタイ・アップ JAL) "愛を描いて -Let's Kiss The Sun- でアルバムは締めくくられます。

相変わらず凝った作りの曲ばかりですが、どちらかというとライブを意識した作り出そうで、大半の曲はパーマネント・バンド・メンバーで録音されています。また、ほとんど全ての曲の作詞が吉田美奈子というのもこのアルバムの特徴でしょう。


  1. 夜の翼(Nightwing)
  2. 永遠のFull Moon
  3. Rainy Walk
  4. Storm
  5. Funky Flushin'
  6. Hot Shot 
  7. Touch Me Lightly
  8. Sunshine -愛の金色-
  9. Yellow Cab(イエロー・キャブ)
  10. 愛を描いて -Let's Kiss The Sun-


  • Guitar : 椎名和夫(2,5,6,8-10), 山下達郎(2,5,6,8-10), 松木恒秀(4,6), 松原正樹(3)
  • Bass : 田中章宏(2,5,6,8-10), 岡沢章(4,6), 細野晴臣(3)
  • Drums : 上原裕(2,5,6,8-10), 村上秀一(4,6), 高橋幸宏(3)
  • Keyboards : 難波弘之(2,5,6,8-10, 佐藤博(3,4,6)
  • Synthesizer : 坂本龍一(9)
  • Percussion : 斉藤ノブ
  • Songs : 吉田美奈子(2-6,8-10), Chris Mosdell(7)


2020年11月23日月曜日

MATOUSIC / 竹内アンナ (2020)

この前サイクリングしながら聴いたら、気持ちよかったあ。
ハイパーなアップチューンがいい!
それに、若い!

こういう曲は、コードを追いかけて作るようには感じなかったんですが、本人はギタリストだというのに驚きました。
アコギで作曲しているのか?
しかも Earth, Wind and Fire のような R&B に影響されているとのこと。
新感覚です。
そう言えば、Earth もギターの使い方がかっこいいもんね。

R&B かと言われれば、ちょっと違ってて、J-Rock かと言われれば全くかけ離れれてるし、ポップスかと言われればポップではあるし、シティ・ポップの要素もあるうえに、ウェストコーストの香りもするし。
何とも違うオリジナリティがあるのがすごい。
新鮮な柑橘系果物を割ったような感じ。

ハイパー系の、"RIDE ON WEEKEND", "B.M.B", "I My Me Myself", "Free! Free! Free!"...
kiki vivi lily を彷彿とさせる "TOKYO NITE", "Midnight Step"
宇多田ヒカルライクな "20 -TWENTY-"
そして、ギターがかっこいい "ALRIGHT" で終わります。

これからどう展開していくんだろう。楽しみです。
(このアルバムの後に出た EP "at Four" はさらにポップになってます)

  1. RIDE ON WEEKEND
  2. B.M.B
  3. I My Me Myself
  4. TOKYO NITE
  5. If you and I were,
  6. 伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聞こえなきゃ。
  7. 20 -TWENTY-
  8. Midnight Step
  9. SUNKISSed GIRL
  10. Free! Free! Free!
  11. ALRIGHT

2020年11月17日火曜日

The Omni-American Book Club: My Journey Through Literature in Music / Brian Lynch Big Band (2019)

 Brian Lynch は、トランペッターですが、Eddie Palmieri と永年一緒に働いていたように、ラテン・ジャズ・フィールドのプレーヤーでもあり、Art Blakey の最後のバンドにもいたように、ストレート・ジャズでも活躍しています。

Art Blakey 自体は、アフロなビッグ・ビートが特徴のドラマーですので、アフロ・ジャズのフィールドとも言えます。

そんな Brian Lynch ですから、このアルバムでも、ラテン、アフロ、ストレートのそれぞれのテイストをブレンドしたジャズを聴かせてくれます。ビッグ・バンド編成で、スウィングするきっちり構成された楽曲に好感が持てます。

特に、アルバムの冒頭の3曲、"Crucible for Crisis"、"The Struggle Is in Your Name"、"Affective Affinities" は、ラテン、アフロ・テイストがあり、特に印象に残ります。ラテンの特徴であるフルートを使ったり、ボレロ、チャチャチャそのものを取り入れたりしています。もちろんコンガも効いてます。

ストレート・サイド・ジャズでは、"Opening Up" がいいです。ビッグ・バンドらしいゴージャズさとB級映画的要素があり、かっこいいです。

アルバムは 2020年 GRAMMY® Best Large Ensemble Album Award を獲得しています。 


  1. Crucible for Crisis
  2. The Struggle Is in Your Name
  3. Affective Affinities
  4. The Trouble with Elysium
  5. Inevitability and Eternity
  6. Tribute to Blue (Mitchell)
  7. Opening Up
  8. Africa My Land
  9. Woody Shaw
  10. The Struggle Is in Your Name (extended version)
  11. Woody Shaw (extended version)


<Personnel>

  • Brian Lynch : leader, composer, arranger, trumpet
  • Michael Dudley : trumpet
  • Jean Caze : trumpet
  • Jason Charos : trumpet
  • Alec Aldred : trumpet
  • Tom Kelley : alto, soprano sax, flute
  • David Leon : alto sax, flute, clarinet
  • Gary Keller : tenor, soprano sax, flute, clarinet
  • Chris Thompson-Taylor : tenor sax, clarinet
  • Mike Brignola : baritone sax, bass clarinet
  • Dante Luciani : trombone
  • Carter Key : trombone
  • Steven Robinson : trombone
  • John Kricker : bass trombone
  • Alex Brown : piano
  • Lowell Ringel : bass
  • Boris Kozlov : electric bass
  • Kyle Swan : drums
  • Murph Aucamp : percussion
  • Little Johnny Rivero : percussion (5, 7)

<Guest artists>

  • Dafnis Prieto : drums (1)
  • Orlando “Maraca” Valle : flute (1)
  • Donald Harrison : alto sax (2, 10)
  • Regina Carter : violin (3)
  • David Liebman : soprano sax (4)
  • Jim Snidero : alto sax (6)

2020年11月8日日曜日

afropia / 小泉今日子 (1991)

小泉今日子と同い年なのが自慢でしたが、最近の若者は小泉今日子自体を知らない、という事実に気づいて、近頃はあまり言ってません。

ということは、このアルバムが出たとき25才。

思えば、この頃小泉今日子は、尖った感性のアイドル、という何か危なっかしい存在でした。
急速に大人の世界に近づいて行って、不安よりも喜びが大きいような。
それは、同じ時代を生きる僕も同じ感覚でした。急速に世界が広がって、消化できていないうちに次の刺激があるといった感覚です。

音楽的には、藤原ヒロシとタッグを組んだり、近田春夫に近づいたり。
どこまでが作られたものか分かりませんが、当時のスタッフのインタビューによると、小泉今日子の性格を核にして、彼女の世界を形作るために曲作りやアルバムコンセプトを決めていっていたようです。

このアルバムのコアは、"あなたに会えてよかった" です。小林武史はこの曲が売れて自信がついたと言っていますし、小泉今日子はレコード大賞の作詞賞を受賞しています。当時の主演ドラマ「パパとなっちゃん」の主題歌ということもあり、お父さんのことを念頭においた詞と本人は言っていますが、まあそれはアイドル的発言なんでしょう。
別れをポジティブに感謝に転換したいい曲です。

全体的には、それまでの尖った路線から少し落ち着いた感じで、ほとんどの作詞を小泉今日子自身が手掛けています。
解散したばかりの JAGATARA のメンバーが作曲陣に加わり(5曲)、藤原ヒロシ(2曲)やチェッカーズ藤井尚之(2曲)、おもしろいところではサザンの関口和之の曲も取り上げていますが、いろんな人が作曲しているにもかかわらず、統一感はあります。余裕のある曲調と、アーシーなサウンドのせいでしょうか。

小泉今日子の若く優しい歌声に癒されます。

  1. 君はSunshine     作詞・作曲 EBBY
  2. 夜を駆けぬけて     作詞 小泉今日子、作曲 EBBY
  3. あなたに会えてよかった 作詞 小泉今日子、作曲 小林武史
  4. プロセス       作詞 小泉今日子、作曲 藤井尚之
  5. Afropia       作詞 小泉今日子、作曲 OTO
  6. あなたがいた季節   作詞 小泉今日子、作曲 鈴木祥子
  7. 最後のkiss       作詞 小泉今日子、作曲 EBBY
  8. Endless…       作詞 小泉今日子、作曲 藤原ヒロシ
  9. 休日の過ごし方     作詞 小泉今日子、作曲 藤原ヒロシ
  10. 君に届くかな?     作詞 小泉今日子、作曲 OTO
  11. 風になりたい     作詞 小泉今日子、作曲 藤井尚之
  12. 海を見ていた     作詞 小泉今日子、作曲 関口和之

2020年10月31日土曜日

I Heard That! / Quincy Jones (1976)

"The Musical World of Quincy Jones"

2枚組LPで、1枚目は新曲、2枚目は過去発表曲のコンピレーションという変則アルバムです。
それって、Michael の "HIStory" と同じ手じゃん。Michael にこんなやり口あるよ、と Quincy が耳打ちしたのか。
確かに一石二鳥だと思うし、入り口としては入りやすいし、買いやすい。
でも、アルバムとしての評価はイマイチになっちゃうのは何でやろうね。アルバムとして認められない、というか。

それでも、この "I Heard That!" の新譜盤だけでもいいと思います。

70年代初め以降のブラック・コンテンポラリー路線をまた1つ推し進め、次の "Sounds...And Stuff Like That!!" へのブリッジとなっています。

ポップR&B "Things Could Be Worse For Me"
ゴスペル調の "What Good Is A Song"
TV Show "Rebop" の曲 "You Have To Do It Yourself"
O'jays のような "There's A Train Leavin'"
弾むシンセとホーンが絡むインスト "Midnight Soul Patrol" 最高です。
Toots Thielemans のハーモニカがほっこりさせる "Brown Soft Shoe"

と、まあいろんなタイプの曲が入り乱れてますが、なんとなく統一感があるのは Quincy のすばらしいところです。

  1. I Heard That!!
  2. Things Could Be Worse For Me
  3. What Good Is A Song
  4. You Have To Do It Yourself
  5. There's A Train Leavin'
  6. Midnight Soul Patrol
  7. Brown Soft Shoe
  8. Superstition
  9. Summer In The City
  10. Is It Love That We're Missin'
  11. Body Heat
  12. If I Ever Lose This Heaven
  13. Killer Joe
  14. Gula Matari
  15. Theme From "The Anderson Tapes"
  16. Walking In Space

Side C(#9-12) is the Award Winning Side
Side D(#13-16) is the Grammy Winning Side


2020年10月25日日曜日

MONOCHROME / 吉田美奈子 (1980)

アルファレコードができて契約条件が緩くなったので、前作から2年開いたそうです。

初のセルフプロデュースですが、非常によくできた傑作です。

ピアノを基調に、ベースが強調され、シンセが特徴的です。

1曲目 "TORNADO" や "MIDNIGHT DRIVER" などは、独特のファンクになってます。

アメリカのディスコやソウルの真似ではなく、日本人として昇華して別物を作ったような感じです。

サウンドも、ウェストコーストのような乾いた感じではなく、少し湿度が高いです。

あいかわらず松木恒秀のギターはカッコいいし、時折入ってくる Mike Mainieri のヴィブラフォンも心地いい。


  1. TORNADO
  2. RAINY DAY
  3. BLACK MOON
  4. SUNSET
  5. AIRPORT
  6. MIRAGE
  7. MIDNIGHT DRIVER
  8. 午後 (AFTERNOON)


Musician:吉田美奈子(key)、松木恒秀(G)、岡沢章(B)、渡嘉敷祐一(D)、清水靖晃(Sax)、Mile Mainieri(Mallets)
Produced by 吉田美奈子
Sound by 吉田保
All songs written by 吉田美奈子 except #2 by 山下達郎


2020年10月11日日曜日

M.V.P. / Harvey Mason ‎(1981)

ジャズ、フュージョンのミュージシャンを使っていますが、これはジャズとかではなく、ディスコ、R&B のジャンルに入るべき音楽です。

ほとんど Earth, Wind & Fire ですね。1981年ですから、 Earth, Wind & Fire が "Let's Groove" を出したあたり。

盟友 Herbie Hancock で言えば "Magic Windows" を出してます。

  • Kool and the Gang "Celebration"
  • Rick James "Give It to Me Baby"
  • Evelyn "Champagne" King "I'm In Love"

ディスコのブームは定着しつつ、ファンク色が強くなってきたような時代でしょうか。

Harvey Mason と周辺のミュージシャンは持てるテクニックを駆使して(それほど駆使しなくても大丈夫でしょうが)、そのど真ん中にストレートを投げ込んだ感じです。

どの曲もすばらしい。彼のソロ・アルバムを聴くのはこれが初めてなので、他とは比べられませんが、スキのないタイトなポップ・ディスコ・サウンドを作り上げてます。スローな曲もいいんですがね。

翌年、Marvin Gaye が "Sexual Healing" を出し、ブラック・ミュージックでは火がついたようにシンセによるサウンドづくりが盛んになり、懐かしのブラコン時代に入っていきます。

  1. How Does It Feel
  2. We Can Start Tonight
  3. Universal Rhyme
  4. Spell
  5. On And On
  6. Going Through The Motions
  7. You And Me
  8. Don't Doubt My Lovin'

  • Drums – Harvey Mason
  • Bass – Deon Estus
  • Guitar – Lee Ritenour, Mike Levin*, Spencer Bean
  • Synthesizer – Michael Boddicker
  • Producer – Harvey Mason
  • Co-producer – Kenny Mason

2020年10月4日日曜日

Pick Me Up Off the Floor / Norah Jones (2020)

前作 "Day Breaks" はすばらしいアルバムで、好きでした。

ミニアルバム "Begin Again" を挟み、フルアルバムとしては4年ぶりとなるそうです。

イメージ的には、前作よりさらに落ち着いて、スローになって、かつプライベートになったような気がします。

バンドの構成がシンプルだからでしょうか。ピアノとドラムス、ベースに、静かにホーンやストリングス、ハーモニカ、オルガン、スティールギターが絡んでくる。

編成はジャズなのですが、ジャズのくくりに入れるにはあまりにユニークです。

Norah Jones ミュージックというものを完全に確立しています。オリジナルです。

カントリー、オルタナティブロック、ポップスを通過してきたことが大きいのかもしれません。

初め聴いたときは、ジャケットのようにモノクロームで単調な感じを受けたのですが、曲が際立ってくると少しずつカラーが感じられる、そんなアルバムです。アルバムトータルとして統一感があります。

"Hurts To Be Alone", "Heartbroken, Day After", "This Life", "Were You Watching?" あたりがお気に入りです。


  1. How I Weep
  2. Flame Twin
  3. Hurts To Be Alone
  4. Heartbroken, Day After
  5. Say No More
  6. This Life
  7. To Live
  8. I’m Alive
  9. Were You Watching?
  10. Stumble On My Way
  11. Heaven Above

2020年9月27日日曜日

Years Gone By / Albert King (1969)

たまに、たまらなくエレクトリック・ブルーズを聴きたくなるときがあるんよね。

Robert Johnson のような古いやつじゃなくて、モダンなやつね。

どっちかというとロックに近い。

このアルバムは、そういう渇望を満たしてくれました。


"Born Under a Bad Sign" の成功を受けて制作された 3rd. アルバム。

自作の曲を抑えめに、カバーがほとんどになっている分、ギタープレイを中心に聞くことができます。

Stax レーベルということで、ホーンを絡めたソウルテイストあふれるブルーズになっているのは前作同様。全体にみなぎる力強さは相変わらずです。

どの曲もいいですが、なかでも

  • "Wrapped up in Love Again"
  • "Killing Floor"
  • "You Threw Your Love on Me Too Strong"
  • "The Sky Is Crying"

あたりがいいですね。

"The Sky Is Crying" は Elmore James がオリジナルですが、僕が聴いたことがあるのは Stevie Ray Vaughan のカバーです。泣かせますね。


Albert King は、右利き用のギターの弦の張り方のまま、左手でプレイしているらしく、かなり特殊です。そんなことができるのか不思議でたまりませんが、コードを抑えず、単音を弾くのであればできるのかも。

Produced and Arranged by Al Jackson Jr.


2020年9月21日月曜日

祝祭 / カネコアヤノ (2018)

 独特のヴォーカルスタイルが印象的です。特に押し殺したような中低音部でしょうか。

これは才能ですね。

この特徴を活かしたサウンド、メロディ、歌詞で、一つの世界を作り出してます。

サウンドとしてはシンプル、ミニマル、曲調を引き立たせるアレンジ。

そこに、日常を綴った歌詞が乗り、地に足がついているようなファンタジーのような不思議な世界ですね。この愛おしい毎日を生きていこうというポジティブなメッセージも伝わってきます。

先日俳優の斎藤洋介さんの訃報を聞きました。決して主役ではないけど、一目見たら忘れられない風貌。カネコアヤノもそんな感じに思えます。こういった異才を発掘した本人とエージェントに感服します。

  1. Home Alone
  2. 恋しい日々
  3. エメラルド
  4. ごあいさつ
  5. ジェットコースター
  6. 序章
  7. ロマンス宣言
  8. ゆくえ
  9. サマーバケーション
  10. カーステレオから
  11. グレープフルーツ
  12. アーケード
  13. 祝日

Written by カネコアヤノ
Produced by カネコアヤノ


2020年8月27日木曜日

Modal Soul / Nujabes (2006)

 Nujabes のセカンドにして、最高傑作と言われているアルバムです。

"Nujabes" というヘンテコなアーティスト名は、"瀬場潤"という名前のアルファベットを逆から綴ったもの。れっきとした日本人です。

でも。音はほぼ洋楽。ジャズとヒップホップの融合ですが、アシッド・ジャズとはチト違う。
ヒップホップのベーストラックに、ジャズピアノとラップをを乗っけたような。
Easy Mo Bee が作った、Miles の "Doo Bop" 的な音楽です。
とはいっても、ダンサブルというわけではなく、リリカルというか落ち着きを感じさせるサウンドです。アンビエント的な。

本人が言うには「metaphorical musicに続く心象風景的比喩音楽第二章」らしいです。何らかの心象風景を表現しているんでしょうね。「比喩音楽」というのが何なのかは分かりませんが。

渋谷でレコードショップを開いて、売るレコードの紹介をしようと思って、レコード・サンプリングの音楽を作り出したとのこと。純粋に音楽が好きな人は、いい音楽を作ることができるんですね。

残念ながら、このアルバムを出して数年後、2010年に36歳で交通事故により死亡してしまいます。

もっとこういう音楽を世に出し続けて欲しかったです。

  1. Feather - Feat.Cise Starr & Akin (Cyne)
  2. Ordinary Joe - Feat.Terry Callier
  3. Reflection Eternal
  4. Luv(Sic.) Pt.3 - Feat.Shing02
  5. Music Is Mine
  6. Eclipse
  7. Sign - Feat.Pase Rock
  8. Thank You - Feat.Apani B
  9. World's End Rhapsody
  10. Modal Soul - Feat.Uyama Hiroto
  11. Flowers
  12. Sea Of Cloud
  13. Light On The Land
  14. Horizon

Cover Art by David Verba
Keyboards by Uyama Hiroto
Mastered by Yoei Hashimoto
Produced, Recorded, Mixed by Nujabes


2020年8月16日日曜日

Plastic Letters / Blondie (1978)

2枚目です。

デビューアルバム "Blondie" (1976)は、ニュー・ウェーブ・ポップとでも言うべきフォーマットで、一応世の中に認知されたのではないでしょうか。商業的にはほとんど成功とは言えなかったみたいですが。

3枚目は、名作 "Parallel Lines" です。曲もよく商業的にも成功しました。

その1枚目と3枚目の間に埋もれ、評価がイマイチなのがこの2枚目になります。

確かに方向が定まらず、迷路に入っているようにも感じられます。

何せ、一番ヒットしたのが、カバー曲 "Denis" なんですから。

もともと Blondie は型があるようなないようなバンドなので、迷っているように見えても、これが Blondie なのかもしれません。

"(I'm Always Touched by Your) Presence, Dear" なんかはいい曲です。

このアルバムで、一番いいのはアルバムカバーです。ピンクのドレス、長い脚、ブロンドヘアーに疑いの表情。Debbie Harry のイメージですよね。


Producer:Richard Gottehrer
Debbie Harry(Vo)、Chris Stein(G,B)、Clem Burke(D)、Jimmy Destri(Key)、Frank Infante(G,B)


2020年8月2日日曜日

Friends / Shalamar (1982)

Jody Watley がいた伝説のポップ・ソウル・バンド Shalamar のヒットアルバムです。
ポップで非常に心地いいサウンドになっています。
ディスコを経由した、当時の「ブラック・コンテンポラリー」的なサウンドですね。

まだそれほどシンセサイザーが普及してなかったんでしょうか。基本的には、楽器を演奏するスタイルにブラスやストリングスが絡む、オーソドックスな作りになっています。
基本的に自分たちで作曲するスタイルではないので、いろんなところからいい曲を集めて選曲したんでしょうから、それぞれがホントいい曲です(アルバムのうち数曲は自分たちの作曲ですが)。
中でも、"A Night to Remember" は名曲ですね。
軽快なダンス・チューンとしてヒットしました。

ビデオを見るとロボット・ダンスとパントマイムが合わさったようなカッコいいダンスですが、ムーン・ウォークは既にかなりの完成度です。

"A Night to Remember" 以外でも、"Friends"、"There It Is"、"I Can Make You Feel Good" などいい曲が揃っています。

Shalamar を聴くのはこれが初めてですが、他のアルバムも聴いてみたいですねぇ。
  1. A Night To Remember
  2. Don't Try To Change Me
  3. Help Me
  4. On Top Of The World
  5. I Don't Wanna Be The Last To Know
  6. Friends
  7. Playing To Win
  8. I Just Stopped By Because I Had To
  9. There It Is
  10. I Can Make You Feel Good
Shalamar are Howard Hewett, Jeffrey Daniel and Jody Watley
Producede by Leon F. Sylvers III

2020年7月25日土曜日

Sweet Swingin' / 佐藤奈々子 (1977)

デビュー前の佐野元春との共作で曲を作ったセカンド・アルバム。
作詞は全曲佐藤奈々子本人ですが、そこここに佐野元春的なフレーズが出てきますので、かなり影響されてたんでしょうね。

ロック・テイストはあまり感じられず、ボサノバ・フレーバーのかかったジャズ・ポップといったところでしょうか。
曲の良さを活かしたアレンジというよりは、佐藤奈々子のウィスパー・ボーカルに合わせた選曲とアレンジのように思います。

  1. グッド・タイム・スウィンギン
  2. フェアウェル・パーティー
  3. ラズベリー・ラヴァー
  4. ハリー・ブギー
  5. スリーピー・コール
  6. ミューズの恋人
  7. 週末のハイウェイ
  8. 海にうかぶピアノ
  9. チープ・ダンス
  10. オリーブの風
  11. イヴの月の上で
  12. ふらりさよなら ≪ボーナス・トラック≫
  13. フラミンゴの夜 ≪ボーナス・トラック≫

作詞:佐藤奈々子
作曲:佐藤奈々子・佐野元春
アレンジ:横内章次

2020年7月22日水曜日

De Mar y Río / Canalón De Timbiqui (2019)

先日、Harrison Ford が CIA 情報分析官 Jack Ryan を演じる映画 “Clear and Present Danger”(邦題「今そこにある危機」)を観たところでした。
麻薬組織のあるコロンビアの首都ボゴタが映画のステージになってます。
1994年の映画ですが、ボゴタはちゃんとした都会でした。でもめっちゃ危険そう。
僕の数少ないコロンビアの知識、コーヒー、麻薬、以上。くらいなもんで、場所もはっきり認識できてませんでした。ベネズエラの隣なんですね。

そのコロンビアの太平洋側のティンビキという地域をホームにしている、伝統音楽集団が、この Canalón De Tinmbiqui です。直訳すれば、ティンビキの樋。
コロンビアというのは、北はカリブ海に、西は太平洋とエクアドルに、東はベネズエラに、南はペルーとブラジルに面しているという位置関係になります。
その太平洋側のカウカ県にティンビキはあります。

この地域はアフリカ系住民が95%だそうで、伝統音楽というのはつまりアフリカ音楽なんですね。それにちょっとラテンが混じっている。
Canalón De Tinmbiqui も、マリンバとパーカッションにボーカル、といったシンプルな構成を基本としているアフリカン・スタイルの音楽をやってます。
このシンプルさが素晴らしく、いい!シンプルなアンサンブル。
マリンバのリズムとサウンドが心地よい。

アフリカのポップ・ミュージックはいくつか聞いたことはありますが、この Canalón De Tinmbiqui のスタイルは、そのどれとも違います。アフリカの純粋なコア部分だけが残ったように感じます。昔の京言葉が沖縄で一部残っているような。

Canalón De Tinmbiqui はなんと1974年に結成された歴史あるバンドだそうで、今はボーカルの Nidia Góngora に率いられています。堂々としたハスキーなスモーキン・ボーカルがいい感じです。
ライブ映像も、シンプルそのもの。
こういう風に、伝統音楽を真摯にやって、発展させているバンドが世界中にいて欲しいと願います。


  1. Tio Guachupesito グアチュペシトおじさん
  2. A Palanquero パランケロへ
  3. Quitate de mi escalera 梯子を降りて
  4. De mar y río 海と川から
  5. En Belén nació ベツレヘムで生まれた
  6. Subiendo bubuey arriba ブブエイ川を上流に向かって
  7. La casa de la compañia 仲間の家
  8. Digna y feliz ふさわしく幸せな
  9. La posada ラ・ポサーダ
  10. Agustín se casó アグスティンは結婚した
  11. Malvada 悪女
  12. Oí yo オイ・ジョ
  13. Bárbara aplaca tu llanto バルバラ、鳴き声を鎮めて


Nidia Góngora Bonilla – Voz principal y Dirección Musical
Policarpa Angulo Hinestroza – Voz y guasa
María Celia Zuñiga Sinisterra – Voz y guasa
Yuli Magali Castro Bonilla – Voz y guasa
Lizandro Vallecilla – Bombo Arullador
Duvan Dias del Castillo – Cununo
Danilo Cuenú Carabalí – Bombo Golpeador
Andrés Lucumí – Cununo
Cristian Bonilla Zuñiga – Marimba

*Guasa:シェイカー、Cununo, Bombo:パーカッション

2020年7月12日日曜日

Stanley Road / Paul Weller (1995)

Paul Weller は、"Wild Wood" 以降、ほとんど聴いてませんでした。
この "Stanley Road" は、その "Wild Wood" に続く、ソロ3作目になります。

Stanley Road は、Paul Weller が生まれ育った通りの名前らしく、つまり、このアルバムでは、彼のルーツ・ミュージックに焦点を当てたものです。
Steve Winwood がゲスト参加しているのが象徴的なのですが、かなり、ソウル寄りの曲が集められています。そして、ブルーズ。
ブリティッシュ・ロックというよりは、アメリカン・ミュージックへのあこがれが詰まっています。
元々、イギリスのロックはアメリカのR&B、ブルーズに強い憧憬をもったものでしたから、ルーツをたどると、そこへ行きつくのは当然かもしれません。
彼のアイドル、The Who はともかくとして、Small Faces は強くソウルを意識したバンドでしたし、Small Faces の Steve Marriott が作ったバンド Humble Pie はまさしくヘビー・ソウルともいえるサウンドが特徴でした。

The Jam、The Style Council に続く Paul Weller のキャリア3世代目のソロ時代は、原点回帰、アメリカン・ロックの追求時代なのでしょうか。
The Jam、The Style Council ともに、いたってイギリス的でした。
キャリア最高傑作(だと僕は思います)の "All Mod Cons" の "Down in the Tube Station at Midnight" なんかは、イギリス人の、かつ彼でなければ書けない曲だと思います。
The Style Council も確実に時代を作っていました。

この "Stanley Road" もすばらしい曲が集められた、これまた傑作ですが、アメリカ色が強すぎるところに、レス・オリジナリティの物足りなさを感じるのは僕だけでしょうか。
それとも期待が高すぎるのか。

それでも、このアルバムには、カッコいい曲が揃っています。
  • 1曲目 Eric Clapton ばりの "The Changingman"、スロー・ダウンした2曲目 "Porcelain Gods"
  • 美しい "You Do Something to Me"
  • デラックス・エディションにはデモ・バージョンも収録されていますが、"Broken Stone" はデモの方がワイルドで断然いいです
  • エッジの効いた "Whirlpool's End"

  1. The Changingman
  2. Porcelain Gods
  3. I Walk On Guilded Splinters
  4. You Do Something To Me
  5. Woodcutter's Son
  6. Time Passes...
  7. Stanley Road
  8. Broken Stones
  9. Out Of The Sinking
  10. Pink On White Walls
  11. Whirlpools' End
  12. Wings Of Speed

Noel Gallagher(ac-g)
Steve White (d)
Steve Winwood (org, ep)
Produced by Brendan Lynch

2020年7月4日土曜日

It's About Time / Nile Rogers & Chic (2018)

1992年の “Chic-ism” 以来、実に26年ぶりとなる Chic のニュー・アルバムですが、Bernard Edwards と Tony Thompson がいない Chic は、もはや Chic と言えるのか、と思いますので、実際は、Nile Rogers のソロ・アルバムと言っていいでしょう。
ただ、フロントに女性ボーカルを使ったり、かつてのディスコ・サウンドを再現したりという、Chic のフォーマットを使っているのは確かなので、それで Chic の名前をあえて使ったのかもしれません。

相変わらず、カッティング・ギターが効いています。これでもか、というくらい、繰り返し、繰り返し、コピーのように使われます。
そして、BPM を刻むかのような、単調なドラム。ディスコ・サウンド。
ここには、僕たちが Nile Rogers に期待するもののが全てあります。

今回の復活は、2013年の Daft Punk“Get Lucky” への起用がベースになっているに違いありません。もう7年も前かと思いますが、彼らのディスコ・サウンドへのオマージュが、 “Random Access Memories” の大成功につながり、かつ Nile Rogers に活力を与えたのでしょう。
思えば、80年代前半は、Nile Rogers はプロデューサーとして引っ張りだこでした。
Let's Dance / David Bowie (1983)Like a Virgin / Madonna (1984)Notorious / Duran Duran (1986)Original Sin / INXS (1984)Cosmic Thing / The B-52's (1989)
いずれも商業的な成功に導きました。ダンサブルなサウンドを下敷きに、アーティストのユニークさを際立たせる力があったんでしょうね。

それでも、やはり Nile Rogers の全盛は1977年〜1979年にかけての Chic 時代だと言えます。革新的なサウンドだったが故に、ワン・パターンと認識されて飽きられてしまったのは残念ですが、そのワン・パターンこそが、ワン・アンド・オンリーだということを、僕たちは後で気づかされます。

その時代の再現に “Get Lucky” で自信を持ったのでしょう。見事に1970年代の Chic サウンドを現代のサウンドに置き換えて、再現してくれています。
中に、フュージョン的な曲(“State of Mine”)、The Stylistics の "You Are Everything" の焼き直し、”I Want Your Love” のセルフ・カバー、Nile Rogers の活躍の後の時代を担ったニュー・ジャック・スイングを再現するために Teddy Riley まで担ぎ出した曲があるのが面白いところです。豪華なゲストも見もの。


  1. Till the World Falls (featuring Mura Masa, Cosha and Vic Mensa)
  2. Boogie All Night (featuring Nao)
  3. Sober (featuring Craig David and Stefflon Don)
  4. Do You Wanna Party (featuring LunchMoney Lewis)
  5. Dance with Me (featuring Hailee Steinfeld)
  6. I Dance My Dance
  7. State of Mine (It's About Time) (featuring Philippe Saisse)
  8. Queen (featuring Elton John and Emeli Sandé)
  9. I Want Your Love (featuring Lady Gaga)
  10. New Jack' Sober" (Teddy Riley version)

2020年6月28日日曜日

14番目の月 / 荒井由実 (1976)

松任谷正隆との結婚とほぼ同時にリリースされた、4枚目のオリジナルアルバムですが、なんと彼女はこれを最後に引退しようと考えていたようです。
歌の内容は、結婚を前にしたハッピーなものが多く、あっそう、って感じです。「中央フリーウェイ」なんか、まんまですよね。自分をさらけ出せるところも才能なんでしょうか。もっと後の方になると、他人のストーリーが中心になりますが、この頃は自分が主人公ですね。

プロデュースと編曲は全て松任谷正隆。
ファーストアルバムからずっとティン・パン・アレイがバックを固めていましたが、このアルバムでは、彼らのサポート一辺倒から少し卒業しつつあります。ドラムとベースはアメリカ西海岸のミュージシャンが務め、ストリングス、ブラス、ハープなども使われています。
当時の音楽シーンから一線を画しているのは、やはりポップセンスあふれる編曲でしょうか。一つの型にはまらず、曲に合わせて自由にアレンジするスタイルは、なんなんだろうこの人は、と思います。
荒井由実本人はピアニストで、おそらくピアノで作曲しているはずですが、このアルバムではピアノは抑えられ、いろんな楽器で曲をサポートするという、アレンジャー松任谷正隆を前面に出したアルバムだとも言えるのではないでしょうか。サンバ調はどうかと思いますが。

「天気雨」がおすすめです。

  1. さざ波
  2. 14番目の月
  3. さみしさのゆくえ
  4. 朝陽の中で微笑んで
  5. 中央フリーウェイ
  6. 何もなかったように
  7. 天気雨
  8. 避暑地の出来事
  9. グッド・ラック・アンド・グッドバイ
  10. 晩夏 (ひとりの季節)

作詞作曲:荒井由実
プロデュース・編曲・キーボード : 松任谷正隆
ドラム : Mike Baird
パーカッション : 斎藤ノブ
エレクトリック・ギター : 松原正樹、鈴木茂
ベース : Leland Sklar
コーラス : 山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子、尾崎亜美他

2020年6月20日土曜日

3.15.20 / Childish Gambino (2020)

アルバムタイトル:日付
アルバムアートワーク:白
曲名:ほとんどスタートタイム
という、曲以外の情報はほぼなく、曲にフォーカスせなあかんアルバムです。
彼はラッパーと紹介されることが多い人なので、ラップアルバムかと思いきや、そうでもなかったです。
ブラックミュージックをベースとしながらも、いろんな音楽をごった煮にしたような、あるいはコラージュのようなアルバム、というのが印象です。
  1. 0:00 :”We are, we are, we are” だけの曲ですが、イントロ的に、このアルバムは私たち自身の物語なのだと宣言してるのかもしれません。
  2. Algorhysm:アルゴリズムに合わせて “Move your body”, “That’s gonna make you move and groove”。いつの間にかアルゴリズムに囚われてないか、という問いかけなんでしょうか。機械的なバックにエフェクトのラップが不気味さを表してます。Tom Waits にも通じるような
  3. Time:”Running out of time” 時間が足りない。地球環境を憂えとるのか、社会の動くスピードを憂えとるのか。Ariana Grande フィーチャですが、彼女らしさはほぼなし。でも、曲としてはポップに仕上がってます。
  4. 12:3821 Savage が参加したラップ曲。ドラムマシンに乗せて。
  5. 19:10 “Beautiful”;Prince そのものの、なかなかポップなええ曲です。”To be beautiful is to hunted”。うーん、ちょっと意味不明。
  6. 24.19 “Sweet Thing, Thank You”:パートナーへのラブソング。素直にこう言いたいね。Sly Stone のような曲調が心地よいです。
  7. 32:22 “Warlord”:かなり実験的な曲。”Billie Jean is on fire” 何を指しているんやろう。
  8. 35.31 “Little Foot, Big Foot”:young drug dealer に向けての警告?童謡調が遊び心を出してます。
  9. 39.28 “Why Go To The Party”:ミステリアスなアカペラ調の曲。パーティに行ったから2発やられてもた。
  10. 42:26 “Feel Like Summer”:ミニマルなバックに、美しいメロディが乗っかって進みます。Everyday gets hotter, slow down,  go down.
  11. 47:48 “The Violence”:暴力についての複雑な曲。”Beat him up, keep him down, never say what you see, keep quiet” と言いながら “Don’t worry ‘bout tomorrow” と言う。アメリカでの黒人に対する暴力への反対デモを先取りしたような歌詞に驚きます。終盤の子供とのやりとりにほっとさせられます。
  12. 53:49:ロックテイストあふれるラップ。Beastie Boys を思い出しました。

ドラッグ、地球環境、暴力、差別、機械依存など、現代社会への憂いにあふれ、たまにラブソングが入っているいいアルバムだと思います。
全然違うサウンドの集まりの割には、なぜか統一感があり、何度でも聴いていられるのが不思議です。

2020年6月13日土曜日

Stuff / Stuff (1976)

"Miles in the Sky" が出たのは1968年。
Herbie Hancock にフェンダー・ローズ、Ron Carter にエレクトリック・ベースを持たせ、初めてロックを取り入れました。
ジャズ界は Miles の動きに触発され、怒涛のようにクロス・オーバー、フュージョンへと流れていきます。
その曲 "Stuff" は最初に取り組んだとは思えない完成度の高い曲になってます。

それから、8年。
Gordon Edwards は "Miles in the Sky" を意識したのかどうか分かりませんが、名うてのセッション・ミュージシャンを集めて "Stuff" というバンドを組み、ファースト・アルバムを出します。
ドラムスの Steve Gadd だけがジャズ畑出身で、他のメンバーは全て R&B 畑ですので、決してジャズ、フュージョンといった音楽をやりたかったわけではなさそうです。
ジャズ、フュージョンの枠じゃなくて、R&B とかソウル・ミュージックというジャンルで語られることも多いんですが、それもちょっと違うんよねぇ。
ファンクとかグルーブを強調したような言われ方もするんですが、どっちかというと「インスト軽音楽」って感じでしょうか。とはいってもイージー・リスニングとはだいぶ違う。
フュージョンのようにテクニックを前面に出すのではなく、曲の雰囲気を一番大切にしてそれそれがいい仕事をする、さすがセッション・ミュージシャンの集まりですね、と言いたくなります。

このアルバムは全体的に曲調は明るくて好きです。軽快な気持ちにさせてくれます。

  • "Foots" は Gale と Dupree のギターがブルージーですが、ソウルフルで明るい、さわやかな曲になっています。最初の Dupree のギターの入りなんかは、これは絶対ジャズじゃないです。エレクトリック・ブルースとR&Bが混じったような。このアルバムを代表する曲だと思います。
  • "My Sweetness" はフュージョンっぽい曲。途中盛り上がる箇所がありますが、そこから急に下る。Tee のキーボードがメロウです。
  • "(Do You) Want Some Of This" は、Edwards のうねるようなベースではじまり、Tee のキーボードがフィーチャされたリズミカルな曲。
  • "Looking For The Juice" と "Reflections Of Divine Love" は、Gale と Dupree のギター・プレイを活かしたゆっくり目の曲で、"Reflections Of Divine Love" は、ゴスペル・マナーで、後半盛り上がっていきます。
  • "How Long Will It Last" はB面の1曲目らしく、はじけるジャンプ・ナンバー。少しデキシーズ。
  • 一転して次の "Sun Song" はスロー・テンポに、Dupree の低音ギターと Tee のキーボードが絡みます。
  • "Happy Farms" は曲名通りハッピーなカントリー調の曲で、結構好きです。いっときの細野晴臣の曲調を感じさせます。
  • ラストは、ラストらしく "Dixie / Up On The Roof"、眠りに誘うような心地よさです。


リード楽器でグイグイ引っ張っていく感じじゃなくて、アンサンブル重視のバンド・サウンドが素晴らしいです。

  1. Foots (Written by Stuff)
  2. My Sweetness (Written by R.Tee)
  3. (Do You) Want Some Of This (Written by R.Tee)
  4. Looking For The Juice (Written by G.Edwards, R.Tee)
  5. Reflections Of Divine Love (Written by G.White)
  6. How Long Will It Last (Written by E.Gale)
  7. Sun Song (Written by L.Thomas)
  8. Happy Farms (Written by C.Dupree)
  9. Dixie / Up On The Roof

Gordon Edwards(b), Cornell Dupree(g), Eric Gale(g), Richard Tee(k), Chris Parker(d), Steve Gadd(d)

2020年5月31日日曜日

Future Nostalgia / Dua Lipa (2020)

売れるために、非常によく練り上げられたポップ・アルバムだと思います。
優秀なスタッフのプロダクションを感じさせます。
Dua Lipa の特徴は、少し低いハスキー・ヴォイスとクールさだと思いますが、そのイメージを表現するための音楽を用意した感じでしょうか。
ダンス、EDM、ロック、ディスコ、といったジャンルやカテゴリーに全く興味なさそうで、どういう音楽かと問われれば「ポップ」としか言いようがありません。

タイトルに “Nostalgia” と入っているように、テーマの1つは過去の音楽のようです。
  • “Rolling Stone”、”Glass House”、”Talking” などの単語が挟まるタイトル曲。
  • なんとそのままの”Let’s get physical”。
  • オーストラリアのバンド INXS のギターリフを使った “Break My Heart”。
これらはすべて80年代を想起させます。
懐古趣味というわけではなく、30年近く前の音楽を勉強し、その後出てきたサウンドと技術をうまくミックスさせて売れる音楽を作る、という意気込みも込めて “Future” がついているんでしょう。
Daft Punk を見習った戦略でしょうが、カテゴリーに見境がないところが突き抜けています。

ちなみに、“Break My Heart” では、出来上がるまで INXS のギターリフに似ていることに気づかず、あとでクレジットに Michael Hutchence と Andrew Farriss を加えたと言っています。
しかし、このメロディの使い方はサンプリングしたくらいのレベルだと思いますので、Dua Lipa 本人は知らなかったかもしれませんが、スタッフには INXS のリフが頭にあったか、意図的に使ったのではないかと思います。
ただ、1987年のこの曲は、リアルタイムではそれほど印象にありませんが。

キャッチーなフックのあるポップは嫌いじゃありません。

  1. FUTURE NOSTALGIA
  2. DON’T START NOW
  3. COOL
  4. PHYSICAL
  5. LEVITATING
  6. PRETTY PLEASE
  7. HALLUCINATE
  8. LOVE AGAIN
  9. BREAK MY HEART
  10. GOOD IN BED
  11. BOYS WILL BE BOYS

2020年5月24日日曜日

Young Gifted And Black / Bob Andy And Marcia Griffiths (1970)‎

Bob Andy 自身、優れたソング・ライターですが、ここではほぼカバーに徹しています。
ソウル・ミュージックからロックまで幅広くピックアップされ、誰が選曲したのかは分かりませんが、超有名ではない曲の選曲はなかなかいいです。
さらに、それを、全体的にハッピーに感じるロック・ステディ・アレンジがすばらしいです。

Eric Clapton が “I Shot the Sheriff” をカバーしたのが1974年ですので、この1970年という年では、まだ世界中にレゲエが広まっていなかったと推測されます。
その中で、欧米のポピュラー曲をカバーすることによって、レゲエが世界中に大衆性を持つということを示したのではないでしょうか。親しみやすい曲が揃っています。

“Young Gifted And Black” は、Aretha Franklin が1972年にカバーしており、これもまた素晴らしいアレンジで、曲の気高さが際立っています。ちなみに、この曲を表題曲にした Aretha のアルバムは大名盤です。
その Aretha Franklin のバージョンより、この Bob Andy バージョンの方が好きになりました。Nina Simone のオリジナル・バージョンも含めて、Bob Andy バージョンが一番いいんじゃないでしょうか。この曲の持つ若さへの賛辞が、レゲエ・アレンジによって明るく前面に出て、素晴らしい出来になっています。
続く、”Private Number” もいい、こちらも明るい。
すべての曲がハッピーです。Bob Dylan の “It Ain't Me Babe” でさえハッピーに聞こえます。
Bob Andy だけではなく Marcia Griffiths の伸びやかなヴォーカルが入っているのがいいんでしょうね。

アルバム全体として、何度聴いても心地よい、ポップ・レゲエ・アルバムに仕上がっていると思います。

  1. Young Gifted And Black (Original by Nina Simone ‎”To Be Young, Gifted, And Black”)
  2. Private Number (Original by Judy Clay & William Bell)
  3. United We Stand (Original by Brotherhood Of Man)
  4. We've Got To Get Ourselves Together (Original by The Staple Singers)
  5. Peace Of Mine
  6. It's a Rocking Good Way (Original by Priscilla Bowman “A Rockin' Good Way”)
  7. It Ain't Me Babe (Original by Bob Dylan)
  8. Ain't Nothing But The Real Thing (Original by Marvin Gaye & Tammi Terrell)
  9. Put a Little Love In Your Heart (Original by Jackie DeShannon)
  10. Onion Song (Original by Marvin Gaye & Tammi Terrell)
  11. Gee Baby
  12. Keep The Customers Satisfied (Original by Simon and Garfunkel “Keep The Customer Satisfied”)