2022年12月26日月曜日

Anomie & Bonhomie / Scritti Politti (1999)

前作 “Provision” からなんと11年のブランクを経て出された彼らの4作目。

今回は前作までから大幅に路線変更し、ラップを全面に出しています。
それとシンセポップ的なサウンドから、ギターサウンドにも変わっています。グランジって言うんでしょうか。
“Provision” は前作踏襲型でしたが、この “Anomie & Bonhomie” はチャレンジングですね。
成功するかどうかは賭けですが、こういう姿勢は素晴らしいと思います。

変わっていないのは美しいメロディラインと独特な Green の歌声です。
“Cupid & Psyche 85” では Green のヴォーカルとソウルが絶妙に融合していましたが、ラップとではなかなか難しいものです。

それでもこの歌声好きだなあ。ファルセットや中性的な声が好きなんですよね。

ラップなしのアコースティックな  "First Goodbye", "Brushed With Oil, Dusted With Powder" はいい曲です。

それと、ジャケット・デザインがシンプルでアート!


  1. Umm (Gartside, Lee Majors)
  2. Tinseltown to the Boogiedown (Gartside, Majors, Mos Def)
  3. First Goodbye
  4. Die Alone
  5. Mystic Handyman
  6. Smith 'n' Slappy" (Gartside, Mos Def)
  7. Born To Be
  8. The World You Understand (Is Over + Over + Over)
  9. Here Come July
  10. Prince Among Men (Gartside, Majors)
  11. Brushed With Oil, Dusted With Powder


  • Green Gartside – vocals, guitars, Ebow, vinylism (scratches), noises
  • Allen Cato – guitars
  • Wendy Melvoin – guitars
  • David Dyson – bass
  • David Gamson – bass
  • Vere Isaacs – bass
  • Me'Shell NdegéOcello – bass, backing vocals (4, 8), rap (4, 8)
  • Abe Laboriel Jr. – drums
  • William "Juju" House – drums
  • Steve Pigott – string arrangements
  • Paul Riser – string arrangements
  • Brent Fischer – string contractor
  • Patrick "Red Cloud" Mah – backing vocals
  • Lee Major[7] – backing vocals (1, 2, 10), rap (1, 2, 10)
  • Mos Def – rap (2, 6)
  • Jimahl – backing vocals (4), rap (4)

Produced by David Gamson

2022年12月17日土曜日

Rumba Caliente / Típica '73 , Canta Tito Allen (1976)

Ray Barretto バンドのメンバーを母体とする70年代の人気グループの4枚目のアルバムになります。
Johnny Pacheco の FANIA の兄弟レーベルの Inca レーベルから。
プロデューサーは Louie Ramirez。ミュージシャンとして活躍後、75年から FANIA のスタッフとなった名プロデューサー。サルサ界の Quincy Jones とも。

Típica '73 は72年にデビューしたキューバン・ルーツを取り入れたサルサ・コンボです。
チャランガをベースとして、ブラスとパーカッションを強力に押し出したサウンドらしく、バイオリンがメインどころでフューチャされています。
#1熱いルンバ、#2典型的グアヒーラ、#4タンボ・スティックを鳴らす、#8暴力的グワグワンコ、と確かにキューバ音楽に関連した曲名でもあります。
キューバンといっても懐かしさや牧歌的なところはあまり感じさせず、ベースはやはりニューヨーク・サルサです。
ルーツ・ミュージックをうまくブレンドしたところが新しいんでしょうね。

#1の Sonny Bravo のピアノが印象的。リーダーの Johnny Rodriguez Jr. がボンゴ。
ちなみに "Canta" とは Sings、メイン・ヴォーカルは Tito Allen です。

代表曲#4を収録の名盤です。


  1. Rumba Caliente ["Hot Rumba"]
  2. Guajira Tipica ["Typical Guajira"]
  3. Si Me Pudieras Querer ["If you could love me"]
  4. Sonaremos El Tambo ["We will sound the Tambo"]
  5. Pare Cochero ["Stop coach"]
  6. Gandinga
  7. Los Sitios Llaman ["Sites call"]
  8. Guaguanco De Los Violentos ["Guaguanco of The Violent"]


  • Lead Vocals : Tito Allen
  • Timbales : Jose Grajales
  • Bongos : Johnny Rodriguez Jr.
  • Piano : Sonny Bravo
  • Guiro : Ismael Quintana
  • Bata : Cachete
  • Trumpet : Lionel Sanchez, Rene Lopez
  • Trombone : Leopoldo Pineda
  • Saxophone : Don Gonzalo
  • Bass : Dave Perez
  • Violin : Alfredo De La Fe
  • Producer : Louie Ramirez

Recorded at Bell Sound Studios, N.Y.C. 


Amazon Music Link

2022年12月11日日曜日

The Brasil Project / Toots Thielemans (1992)

ベルギーのハーモニカ・プレイヤー Toots Thielemans が、ブラジル音楽の豪華ゲストと組んだ1枚になります。

僕はクロマチック・ハーモニカというのを吹いたことがないので、どれだけ難しいのか分かりませんが、難しいようなことをよく聞くので、難しいんでしょう。
Toots Thielemans の音色は、難しいかどうかを超えて、独特の色合いを持っています。
安心感を与えるような。
これをよくジャズに当てはめようと思ったなと思いますが、実際ジャズというカテゴリーは超越していると思います。

で、このアルバムですが、ハーモニカとボサ・ノヴァはよく合いますね。
過去にボサ・ノヴァを幾度か取り入れているようですので、お気に入りの音楽なんでしょう。
自分のハーモニカの音色によく合うというのを熟知しているのかもしれません。

Toots の音楽をブラジルの人たちが演奏する、というよりは、ブラジル音楽に Toots が参加するような形となっており、基本的にはブラジル音楽のアルバムです。
ゲストは、Ivan Lins, Djavan, Oscar Castro-Neves, Dori Caymmi, Ricardo Silveira, João Bosco, Gilberto Gil, Milton Nascimento, Caetano Veloso, Luiz Bonfá, Edu Lobo, Eliane Elias で、ちょこっと参加するのではなく、がっつり彼らの曲をやっています。
まさに豪華。

翌年には同じようなゲストで "Brasil Project 2" を出していますので、2コイチなんでしょうね。そっちも聴かせてもらいます!


  1. Comecar de Novo [Featuring Ivan Lins]
  2. Obi  [Featuring Djavan]
  3. Felicia and Bianca  [Featuring Oscar Castro-Neves]
  4. O Cantador  [Featuring Dori Caymmi]
  5. Joana Francesca  [Featuring Chico Buarque]
  6. Coisa Feita  [Featuring João Bosco]
  7. Preciso Aprender a So Ser  [Featuring Gilberto Gil]
  8. Fruta Boa [Featuring Milton Nascimento]
  9. Coração Vagabundo [Featuring Caetano Veloso]
  10. Manha de Carnaval [Featuring Luiz Bonfá]
  11. Casa Forte [Featuring Edú Lobo]
  12. Moments [Featuring Eliane Elias]
  13. Bluesette


  • Brian Bromberg (b)
  • Michael Lang (key)
  • Mark Isham (tp)
  • Dave Grusin (p)
  • Teo Lima (ds)
  • Lee Ritenour (g)



2022年12月5日月曜日

Release Some Tension / SWV (1997)

こういうサウンドを聴くと、年代的に安心します。
80年代 R&B からの発展形として、新しいサウンドやラップを取り入れて、本当に心地よい。聴きやすい。

SWV は TLC と並んで、90年代を代表するガール R&B ヴォーカル・グループですよね。
ちゃんとしたオリジナル・・アルバムという意味では、わずか3枚を出しただけで解散してしまいました(その後再結成はしてますが)。

このアルバムは、その3枚目。
名作であるセカンドからの脱皮なのか、飛躍なのか、を狙って少し路線変更しています。
アーバン一辺倒から、大々的にラップを取り入れて、ストリート系を強調しています。
それが成功しているのかどうかは聴く人によるんでしょうが、まぁ悪くない感じです。

意地の悪い批評家には、「Hip Hop All Stars with SWV」と揶揄されるほど、有名ラッパーを多数ゲストに招き、ほとんどの曲でラップをフィーチャしています。
ゲスト(ラッパー)は、Puff Daddy, Lil’ Cease, Snoop Dogg, Redman, Lil’ Kim, E-40, Foxy Brown, Missy Elliott, Timbaland。豪華ですね。

そんな中でも、僕がお気に入りなのは、スローな歌ももの、"Rain" と "Here For You" ですかね。いずれも残念ながらラップなしです。
"Rain" はシングルにもなりましたので、このアルバムの一番の曲ということになるのでしょうか。
どこかで聴いたことあるメロディだなと思ったら、なんと Jaco Pastorius の "Portrait of Tracy" の一部を使用していました。驚きの選曲です。"Rain" に使われているフレーズは、"Portrait of Tracy" の最初と最後にちょろっと出てくるのですが、ジャズでいうところのテーマにしては短すぎ、それでも印象的なメロディです。

アルバム全体としては、絶対的なキラーチューンはないものの、サウンドの心地よさは抜群です。


  1. Someone [featuring Puff Daddy]
  2. Release Some Tension [featuring Foxy Brown]
  3. Lose My Cool [featuring Redman]
  4. Love Like This [featuring Lil' Cease]
  5. Can We [featuring Missy Elliott]
  6. Rain
  7. Give It Up [featuring Lil' Kim]
  8. Come and Get Some [featuring E-40]
  9. When U Cry
  10. Lose Myself
  11. Here For You
  12. Gettin' Funky [featuring Snoop Dogg]



2022年11月20日日曜日

High Life / Wayne Shorter (1995)

Weather Report を脱退してから10年。このアルバムはアフター・Weather Report の最高傑作にたどり着いた感じです。
Miles Davis がこの世を去って、その偉業をどう継ぐか、というのが同時代を生きたミュージシャンに課された課題だったのかもしれませんが、見事に答えを出して見せました。
復活してからの Miles はジャズをいかにコンテンポラリーにするか、ということに主に取り組んできたと思いますが、このアルバムはコンテンポラリー・ジャズのメインストリームと言ってもいいと思います。

テーマからパート・ソロへ、そしてテーマへ、といったクラシック・ジャズとはまた違い、曲を曲として完成させようという意思を感じます。もちろん、インプロビゼーションも織り交ぜてのことですが。
思えば、Weather Report で挑戦していたのもそういうものだったのかもしれません。

それにしてもソプラノが美しい。
軽やかにそして滑らかに移り行く旋律。
そしてそれを支えるバンド。
フュージョンといえばそれまでですが、ジャンルを超えた奥深さがあります。


  1. Children of the Night 
  2. At the Fair  
  3. Maya
  4. On the Milky Way Express 
  5. Pandora Awakened
  6. Virgo Rising
  7. High Life  
  8. Midnight in Carlotta's Hair 
  9. Black Swan (in Memory of Susan Portlynn Romeo)


  • Wayne Shorter (ss,ts,bs)
  • Rachel Z (p,syn,sound design,sequencing)
  • David Gilmore (g)
  • Marcus Miller (b,b-cl,rythm programming)
  • Lenny Castro (per)
  • Airto Moreira (per)
  • Munyungo Jackson (per)
  • Kevin Ricardo (per)
  • Will Calhoun (ds)
  • Terri Lyne Carrington (ds)
  • David Ward (additional sound design)
  • Orchestra
    • Daniel Kelly (frh)
    • Joseph Meyer (frh)
    • Brad Warnaar (frh)
    • Jon Lewis (tp)
    • Rob McGregor (tp)
    • Steven Holtman (tb)
    • Robert Payne (tb)
    • Kazue McGregor (fl)
    • Annarenee Grizell (fl)
    • Sarah Weisz (fl)
    • Emily Bernstein (cl)
    • Ralph Williams (cl)
    • Joyce Kelly-Clark (oboe)
    • Linda Muggeridge (english horn)
    • Leslie Reed (english horn)
    • Ronald Jannelli (bassoon)
    • Julie Feves (contrabassoon)
    • Michele Grego (contrabassoon)
    • Bruce Dukov (vln)
    • Armen Garabedian (vln)
    • Suzie Katayama (vln)
    • Edith Markman (vln)
    • Sid Page (vln)
    • Michele Richards (vln)
    • Robert Becker (viola)
    • Denyse Buffum (viola)
    • Ralph Fielding (viola)
    • Harry Shirinian (viola)
    • Evan Wilson (viola)
    • Larry Corbett (cello)
    • Marcus Miller (conducter)



2022年11月13日日曜日

Mezzanine / Massive Attack (1998)

30年ほど前に聴いたのは、彼らのファースト・アルバム "Blue Line" だったか。
レイヴの流れの1組と思っていて、どちらかというと、イギリスらしいインディ・ロック・バンドと言う感じだったと記憶しています。

で、今回サード・アルバムを聴いてみたわけですが、全く印象が違ってました。
ひたすらダークで、ミニマルで、ダウン・テンポ。
ミニマル・ミュージック、ミニマル・ハウスの源流でしょうか。
暗いのはあまり得意じゃありませんが、音数少なく、テンポを落とした音楽は好きです。

そう言う意味じゃ、このアルバムはいい音楽が多く入っています。
例えばラストの曲 "(Exchange)"。#5 "Exchange" のベース音を少し抑え、レゲエ・シンガー Horace Andy のヴォーカルを被せてます。ゆったりとしたテンポにハイトーン・ヴォーカルが合います。
それに代表曲 "Teardrop"。ヴォーカルと作詞に Cocteau Twins の Elizabeth Fraser を迎え、アルバムの中でも唯一ポップに仕上がっています。"Mezzanine" は Massive Attack の一番売れたアルバムということになっていますが、ほぼ全て "Teardrop" のおかげでしょうね。これ以外「売れる」という要素ゼロですから。
同じく Elizabeth Fraser をフィーチャした "Black Milk" もアンニュイ感半端なく、いい感じです。
Horace Andy といい、Elizabeth Fraser といい、このサウンドには細いヴォーカルが合いますね。

ロンドンの西170kmの港湾都市ブリストル、Massive Attack を中心としたブリストル・サウンドを Trip Hop と言うのだそうです。音数の少ないダウン・テンポはトリップそのものかもしれません。

ちなみに、メイン・メンバーの 3D は、Banksy かもと言われてますが、真偽の程はわかりません。この音楽世界と Banksy の絵画世界はちょっと違うような気もします。

  1. Angel
    • feat. Horace Andy
    • sampling : "Last Bongo in Belgium" by The Incredible Bongo Band
  2. Risingson
    • sampling : "I Found a Reason" by The Velvet Underground
  3. Teardrop
    • feat. Elizabeth Fraser
    • sampling : "Sometimes" by Les McCann
  4. Inertia Creeps
    • sampling : "Rockwrok" by Ultravox
  5. Exchange
    • sampling : "Summer in The City" by Quincy Jones and "Our Day Will Come" by lsaac Hayes
  6. Dissolved Girl
    • feat. Sara Jay
  7. Man Next Door
    • feat. Horace Andy
    • sampling : "When The Levee Breaks" by Led Zeppelin and "10:15 Saturday Night" by The Cure
  8. Black Milk
    • feat. Elizabeth Fraser
    • sampling : "Tribute" by Manfled Manns Earth Band
  9. Mezzanine
    • feat. Daddy G
    • sampling : "Heavy Soul Slinger" by Bernard Purdie
  10. Group Four
    • feat. Elizabeth Fraser
  11. (Exchange)
    • feat. Horace Andy
    • sampling : "Summer in The City" by Quincy Jones and "Our Day Will Come" by lsaac Hayes


  • Massive Attack are 3D, Tricky, Mushroom
  • Additional Musician
    • Angelo Bruschini : guitar
    • Jon Harris, Bob Locke, Winston Blissett : bass
    • Andy Gangadeen : drums
    • Dave Jenkins, Michael Timothy : keyboard
  • Producer : Neil Davidge



2022年11月6日日曜日

そばのかす / 矢野真紀 (2001)

聴けば聴くほどいい音楽です。

初めは、亀田誠治のアレンジがかっこいいなと思ったのと、メロディの割に歌詞がぎこちないと感じました。

椎名林檎の "無罪モラトリアム" が出たのが1999年。アレンジで名を上げた亀田誠治にプロデュースを頼んだのは正解でしょう。もろ椎名林檎的アレンジも1曲ありますが、基本的には曲の良さを引き出すようなアレンジで、さすがだなと思います。
ロックをベースにしながら、打ち込みをメインにしたり、オーケストラを使ったり、フルート、口笛、なかなか多彩です。
"オアシス"、"ネジと愛" なんかのドラム・パターンとサウンドも素晴らしい。

違和感を感じた歌詞は、聴き込むと味が出ていいです。
硬派なんですね。
恋愛をテーマにしているように思える歌でも、間接的に表現するような感じで、風景、事象を羅列するような。
というか、事象を語っている中に、急に恋愛的な言葉が挟み込まれて面食らう感じでしょうか。
金魚、洗濯機などの日常を歌詞にしているところも面白いです。洗濯機の歌なんかはクセになります、

"真夜中の国道"、"タイムカプセルの丘" はいい曲です。


  1. オアシス
  2. 真夜中の国道
  3. お天気
  4. 大きな翼
  5. うず
  6. タイムカプセルの丘
  7. ネジと愛
  8. 青空に浮かぶは白い月
  9. 夢を見ていた金魚
  10. 君の為に出来ること
  11. 明日 (MAKIGAME Ver.)


  • 作詞・作曲:矢野真紀
  • プロデュース・編曲:亀田誠治



2022年10月31日月曜日

Damn Right, I've Got the Blues / Buddy Guy (1991)

Buddy Guy はブルーズ・マンとしては若手で、60年代から70年代にかけて活躍しました。
1972年には、盟友 Junior Wells と名盤 "Play the Blues" を出しています。
80年代はライブ中心の活動でしたが、心機一転91年に出したのが本作です。

モダン・ブルーズが、90年代の録音技術で、さらにモダンになった感じ。
ストレートなブルーズとテンションの高いギター・サウンドがホント素晴らしい!
ブルーズ・ロックを経て、もう一回ブルーズに回帰したような。

ゲスト・ミュージシャンに Mark Knopfler、Jeff Beck、Eric Clapton と豪華。イギリスのブルーズ好きが分かります。彼らが参加する意味があったのかどうかは分かりませんが、少なくとも彼らが Buddy Guy を敬愛しているのは分かりますし、おそらくレコード・セールスにも役に立ったでしょう。

当時僕はこのあたりの音楽を聴いてなかったので、残念ながら本作の存在も知りませんでした。
ビルボードで138位。そりゃ知らんわな。
でも Buddy Guy としては初のビルボード200位以内だったそうです。

ボーナス・トラックを除いてラストの "Rememberin' Stevie" は前年に死んだ Stevie Ray Vaughan に捧げられたもの。
事故の直前にライブで共演していたようです。
本当に惜しい人を亡くしました。


  1. Damn Right, I've Got the Blues [Buddy Guy]
  2. Where Is The Next One Coming From? (faet, Mark Knopfler) [John Hiatt]
  3. Five Long Years [Eddie Boyd]
  4. Mustang Sally (faet, Jeff Beck) [Sir Mack Rice]
  5. There Is Something On Your Mind [Big Jay McNeely]
  6. Early In The Morning (faet, Jeff Beck, Eric Clapton) [Leo Hickman, Louis Jordan, Dallas Bartley]
  7. Too Broke To Spend The Night [Buddy Guy]
  8. Black Night [Jessie Mae Robinson]
  9. Let Me Love You Baby [Willie Dixon]
  10. Rememberin' Stevie [Buddy Guy]
  11. Doin' What I Like Best [Buddy Guy]
  12. Trouble Don't Last [Eddie "Guitar Slim" Jones]


  • Buddy Guy : lead vocals & lead electric guitar
  • Greg Rzab : bass guitar
  • Richie Hayward : drums
  • Mick Weaver : Hammond B-3 organ, piano, electric piano
  • Pete Wingfield : piano
  • Neil Hubbard : rhythm guitar
  • John Porter : bass guitar
  • Tessa Niles, Katie Kissoon, Carol Kenyon - backing vocals
  • Mark Knopfler : electric guitar on 2
  • Jeff Beck : electric guitar on 4 & 6
  • Eric Clapton : electric guitar on 6



2022年10月23日日曜日

Thrust / Herbie Hancock (1974)

 ジャズ・ファンクの名盤の誉れ高い本作は、’73年の "Head Hunters" の次作になります。
従って、基本的には "Head Hunters" を踏襲しつつ、よりファンク色を強めた感じでしょうか。

メンバーは "Head Hunters" とほぼ同じ。ドラムスが、 Harvey Mason から Mike Clark に替わっています。
キーパーソンのベース Paul Jackson とバス・クラリネットの Bennie Maupin は健在ですから、そこに Herbie Hancock のエレピが加われば、もう "Head Hunters" でしょう。

一番好きなのは、#1 "Palm Grease" です。
分かりやすい。ルーズさがたまりません。
こういうのが、大名盤 "Secrets" (1976) につながるんでしょうね。

#1以外でも、アクション映画 "The Spook Who Sat by the Door" 用に作られ、Fender Rhodes が使われた #2 "Actual Proof"、ライブでの定番 #3 "Butterfly"、スピード感あふれるファンク・ナンバー #4 "Spank-a-Lee" と全4曲ながらも、捨て曲なしで一気に聴かせます。


  1. Palm Grease
  2. Actual Proof
  3. Butterfly
  4. Spank-a-Lee


  • Herbie Hancock : Fender Rhodes electric piano, Hohner D6 clavinet, ARP Odyssey, ARP Soloist, ARP 2600, ARP String Ensemble
  • Bennie Maupin : tenor saxophone, soprano saxophone, saxello, bass clarinet, alto flute
  • Paul Jackson : electric bass
  • Mike Clark : drums
  • Bill Summers : percussion



2022年10月16日日曜日

Live It Up / The Isley Brothers (1974)

Ernie Isley、Marvin Isley、Chris Jasper が加わってから2作目。
つまり "3+3" の次作ということになります。

キラー・チューンこそないものの、やはり3人が加わっての、ファンク・サウンドの厚みが増したように思います。
特に表題曲は、Chris Jaspe の弾くクラビネットが曲を特徴づけ、Ernie Isley の叩くドラムがホントかっこいい。
ちなみに、"Live It Up Part 1 & 2" となっているのは、前半のヴォーカル中心部分が "Part 1" で後半のインストゥルメンタル部分が "Part 2" ということです。
"Part 2" の宇宙的なアレンジもいい感じです。

結構このアルバム、"Part 1 & 2" が多い。
シングル・カットする際にボーカル部分だけを切り取りたいということなんでしょうけど、アルバムではあえてインスト部分を重要視するところに演奏3人組をフィーチャーしようという意図が感じられます。

バラッド・サイドもいつものように素晴らしい。
#2 "Brown Eyed Girl" が一番お気に入りです。
初めはサビで "Brown Eyed Girl" の発音が分かりませんでしたが。

面白いところでは、#6 "Hello It's Me"。
Todd Rundgren のカバーなんですね。
72年の名作 "Something/Anything?" に入ってます。
大胆にアレンジ・チャンジしてませんので、曲自体を気に入ったんでしょうね。

アルバム全体を通して、グッド・サウンドです。


  1. Live It Up (Part 1 & 2)
  2. Brown Eyed Girl
  3. Need a Little Taste of Love
  4. Lover's Eve
  5. Midnight Sky (Part 1 & 2)
  6. Hello It's Me
  7. Ain't I Been Good to You (Part 1 & 2)


  • Ronald Isley : lead vocals
  • O'Kelly Isley, Jr. : background vocals
  • Rudolph Isley : background vocals
  • Ernie Isley : electric guitar, acoustic guitar, drums, percussion
  • Marvin Isley : bass guitar
  • Chris Jasper : electric piano, clavinet, ARP synthesizers, T.O.N.T.O., piano
  • George Moreland : drums
  • Karl Potter : percussion
  • Truman Thomas : organ



2022年10月9日日曜日

Funky Kingston / Toots and the Maytals (1975)

Toots and the Maytals の "Funky Kingston" にはオリジナル1973年の UK 版と、1975年のコンピレーション USA 版があり、これは USA 版の方です。

スカ、ロックステディ時代から活躍していた3人組ヴォーカル・グループの The Maytals を Toots and the Maytals としてイギリスデビューさせたのは、アイランド・レコードの Chris Blackwell。
当時イギリスではスキン・ヘッド・レゲエとして不良グループに人気となったようです。

同じ時期にイギリスに紹介された Bob Marley & The Wailers は、ソリッドなヴォーカルとロック寄りのサウンドですが、The Maytals のサウンドはスカをベースにしながら、非常にファンキーというか R&B 色を強く感じます。
アメリカの評論家が、The Wailers を The Beatles に、The Maytals を The Rolling Stones になぞらえたのが分かりやすいかもしれません。
なかなか味があっていい感じです。

このアルバムで一番いいのは表題曲の "Funky Kingston" でしょうか。
速い16ビートに性急なヴォーカル。パンキッシュでもあります。

それと、"Pressure Drop"。
こちらは、超有名既発の "The Harder They Come" から。
The Clash のカバーが有名ですが、やっぱ僕は Robert Palmer かな。セカンド・アルバムのタイトルですね。

1973年の UK 版は、8曲入り37分ですが、USA 版はそこから3曲、次のアルバム "In the Dark" から6曲、そして "The Harder They Come" から1曲の変則10曲入りとなっています。
同じアルバム・タイトルで同じジャケット。でも中身は全然違う。
アメリカのプロデューサーは結構勝手なことをやりますよね。
おかげで、小ベスト盤的に楽しめるのでそれはそれでいいですが。


  1. Time Tough [from "In the Dark" #4]
  2. In the Dark [from "In the Dark" #2]
  3. Funky Kingston [from "Funky Kingston #7]
  4. Love's Gonna Walk Out on Me  [from "In the Dark" #9]
  5. Louie Louie [from "Funky Kingston #3]
  6. Pomp and Pride [from "Funky Kingston #2]
  7. Got to Be There [from "In the Dark" #1]
  8. Take Me Home, Country Road [from "In the Dark" #7]
  9. Pressure Drop [[from "The Harder They Come" #9]
  10. Sailin' On [from "In the Dark" #12]


  • Frederick "Toots" Hibbert : vocals
  • Ralphus "Raleigh" Gordon : vocals
  • Nathaniel "Jerry" Matthias : vocals
  • Radcliffe "Dougie" Bryan : guitar
  • Neville Hinds : keyboards
  • Jackie Jackson : bass
  • Paul Douglas : drums
  • Winston Grennan : drums
  • Sons of the Jungle : horns



2022年10月6日木曜日

David Byrne's AMERICAN UTOPIA -film- (2019)

感激しました!
これこそアート。
Pink Floyd の "The Dark Side of the Moon" を初めて聴いた時と同じ感覚です。
日本人は平気でミュージシャンのことを「アーティスト」と言いますが、本物の「アーティスト」とは、こういったことをする人のことを言うのだと思います。

ブロード・ウェイで上演されたとのことですので、通常のミュージック・コンサートとは違うのかもしれませんが、今までこんなの見たことがありませんし、非常に芸術的です。
独創というのはこういうことかと。

グレーのスーツで裸足の11人のメンバーが、演奏すると同時にダンスする。
楽器は全てコードレス。なので、ステージ上を自由に動き回れると同時に、マス・ダンスも形成できる。
通常持ち運びできないドラムスはマーチング・バンドよろしく担ぐ形にして、パーカッションも含めてかなりの人数を割いています。
それでもやっぱり、ロック・ミュージックなんですね。ダンスと音楽が融合して、素晴らしいショーとなっています。

David Byrne のソロ・アルバム "AMERICAN UTOPIA" のツアーですが、Talking Heads 時代の曲も多く、オールタイム・ベストの様相を呈しています。
そして、曲間のウィットに富んだ MC。サウンド・トラックではなく、映像を見るべきです。
字幕があるのも意外とよかったです。シニカルな歌詞とアフリカン・ベースのニュー・ウェイヴ・サウンドとユニークなダンス。どれ一つ欠けてもこのアートにはなりません。

監督は Spike Lee。同じニュー・ヨークがベースの David Byrne から依頼があったそうです。
映像化も見事。カメラ・クルーは一切映っておらず、客席側、ステージ横・裏・上から、彼らのパフォーマンスが一番活きるショットを選んでいるのは驚嘆です。
しかも観客との一体感もうまく切り取っていて、こんなにスキルが高かったのかと、改めて感心しました。


  1. Here (from “American Utopia”)
  2. I Know Sometimes a Man Is Wrong (from “Rei Momo”)
  3. Don’t Worry About the Government (from “Talking Heads:77”)
  4. Lazy (Muzikizum by X-Press 2) (from “Grown Backwards”)
  5. This Must Be the Place (Naïve Melody) (from “Speaking in Tongues”)
  6. I Zimbra (from “Fear of Music”)
  7. Slippery People (from “Little Creatures”)
  8. I Should Watch TV (from “Love This Giant”)
  9. Everybody’s Coming To My House (from “American Utopia”)
  10. Once in a Lifetime (from “Remain in Light”)
  11. Glass, Concrete & Stone (from “Grown Backwards”)
  12. Toe Jam <David Byrne and Dizzee Rascal> (from “I Think We’re Gonna Need a Bigger Boat” by The Brighton Port Authority)
  13. Born Under Punches (The Heat Goes On) (from “Remain in Light”)
  14. I Dance Like This (from “American Utopia”)
  15. Bullet (from “American Utopia”)
  16. Every Day Is a Miracle (from “American Utopia”)
  17. Blind (from “Naked”)
  18. Burning Down the House (from “Speaking in Tongues”)
  19. Hell You Talmbout (from “The Electric Lady” by Janelle Monae)
  20. One Fine Day (from “Everything That Happens Will Happen Today”)
  21. Road To Nowhere (from “Little Creatures”)


  • David Byrne : lead vocals, occasional guitar
  • Chris Giarmo : dancing, melodica
  • Tendayi Kuumba : dancing
  • Karl Mansfield : keyboards, musical director
  • Angie Swan : electric guitar
  • Bobby Wooten III : bass
  • Mauro Refosco : Percussion, musical director
  • Tim Keiper : percussion
  • Gustavo Di Dalva : percussion
  • Jacquelene Acevedo : percussion
  • Daniel Freedman : percussion
  • Stephane San Juan : percussion

監督:Spike Lee

https://americanutopia-jpn.com/




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2022年10月3日月曜日

The Gap Band III / The Gap Band (1980)

The Gap Band はオクラホマ州タルサで結成された、Wilson 3兄弟によるファンク・バンドですね。
タルサと言えば、この夏よく聴いた J. J. Cale です。彼の音楽はタルサ・サウンドと呼ばれました。
1901年に油田が発見された油田都市なので、それ目当てにいろんな人が集まってきたんでしょうね。

アルバムは、ファンクとスロー・テンポが交互に入って全9曲。
ファンクは #1 "When I Look in Your Eyes", #3 "Burn Rubber (Why You Wanna Hurt Me)", #5 "Are You Living", #7 "Humpin'", #8 "The Way", #9 "Gash Gash Gash"、スローが #2 "Yearning for Your Love", #4 "Nothin' Comes to Sleepers", #6 "Sweet Caroline" といった具合です。

僕はどっちかというと、スローの方が好きやね。
特にこのアルバムではスローな曲の代表 #2 "Yearning for Your Love" が入ってます。
極上のメロウ・チューン。
とろけるようなカッティング・ギターが効果的。
この1曲だけでもアルバムを買う価値ありです。

なお、シングルで一番売れたのは #3 "Burn Rubber (Why You Wanna Hurt Me)"。
こちらも The Gap Band を代表する1曲です。


  1. When I Look in Your Eyes [Lonnie Simmons, Rudy Taylor, Wilmer Raglin]
  2. Yearning for Your Love [Oliver Scott, Ronnie Wilson]
  3. Burn Rubber (Why You Wanna Hurt Me) [Charlie Wilson, Lonnie Simmons, Rudy Taylor]
  4. Nothin' Comes to Sleepers [Oliver Scott, Ronnie Wilson]
  5. Are You Living [Charlie Wilson, John Black]
  6. Sweet Caroline [Charlie Wilson, Malvin Vice]
  7. Humpin' [Charlie Wilson, Lonnie Simmons, Ronnie Wilson, Rudy Taylor]
  8. The Way [Oliver Scott, Ronnie Wilson]
  9. Gash Gash Gash [Robert Wilson]


  • Charlie Wilson : Keyboards, Synthesizer, Percussion, Lead Vocals
  • Ronnie Wilson : Trumpet, Keyboards
  • Robert Wilson : Bass, Lead vocals on "Gash Gash Gash"
  • Oliver Scott : Horns, Keyboards, Synthesizer
  • Raymond Calhoun : Drums, Percussion
  • Melvin Webb : Drums
  • Ronnie Kaufman : Drums
  • John Black : Keyboards
  • Malvin "Dino" Vice : String Arrangements
  • Cavin Yarbrough : Synthesizer
  • Robert "Goodie" Whitfield : Keyboards
  • Fred Jenkins : Guitar
  • Glen Nightingale : Guitar
  • Marlo Henderson : Guitar
  • Wilmer Raglin : Horns
  • Earl Roberson : Horns
  • Katie Kilpatrick : Harp


2022年9月25日日曜日

Still Over It / Summer Walker (2021)

]

 Summer Walker は PV のイメージが強く、アメリカで何て言うのか知らんけど、コギャルの代表、長いつけまつ毛、必要以上に胸を強調したファッション・スタイル、といったイメージ先行型で、正直いい印象を持ってませんでした。

しかし、音楽を聴いてみると、これが素晴らしい!!

Summer Walker だけあって、夏にピッタリ。チル・アウト・ミュージックです。(ちなみに Summer Walker は本名みたいです)

アメリカの R&B シーンはこういった、抑揚の少ない、ダークかスローな音楽の全盛のように思いますが、そんな中でも Summer Walker は際立っていいと思います。

メロウともちと違う、やっぱチル感でしょうかね。
なんでしょう、ヒット曲がある、といったポップス界とは一線を画したスタンスが潔い。
アルバム全体を聴いて、そのチル感に浸れ!といった感じでしょうか。


  1. Bitter (Narration by Cardi B)
  2. Ex for a Reason (Featuring JT)
  3. No Love (Featuring SZA)
  4. Throw It Away
  5. Reciprocate
  6. You Don't Know Me
  7. Circus
  8. Insane
  9. Constant Bullshit
  10. Switch a Nigga Out
  11. Unloyal (Featuring Ari Lennox)
  12. Closure
  13. Toxic (Featuring Lil Durk)
  14. Dat Right There (Featuring Pharrell Williams)
  15. Screwin (Featuring Omarion)
  16. Broken Promises
  17. Session 33
  18. 4th Baby Mama (Prelude)
  19. 4th Baby Mama
  20. Ciara's Prayer



2022年9月17日土曜日

Naturally / J. J. Cale (1971)

元祖レイド・バック。

J. J. Cale は Eric Clapton のカバーが有名で、それしか聴いたことがなかったのですが、本物はやっぱり本物でした。
Clapton が一番影響を受けたミュージシャンと公言しているようですが、僕から見ると、影響を受けたレベルではなく、コピーをやっている印象です。
同じく Clapton は The Band のメンバーになりたかったと言っている通り、The Band にも多大な影響を受けています。
Clapton の活動を見ると、ブルーズへの傾倒が顕著ですが、彼自身は、自分の音楽をやっているというよりは、J. J. Cale や The Band のコピーをやっているという感覚に近いんじゃないかと思ったりします。

というわけで、初めてまともに J. J. Cale のアルバムを聞いたわけですが、改めて「素晴らしい!」という感想です。

この夏最大のヒットです。

フックの強いキャッチーさはまるでなく、派手な演奏もない。
ブルーズ、ジャズ、カントリーの要素はあるけど、それぞれのルーツに忠実なわけでもない。
売れるかと言われれば売れる要素はない。
ただ一点、レイド・バック感がものすごいんですね。
今の言い方で言うとチル・アウトですかね。
1曲目 "Call Me the Breeze" から "Call the Doctor"、"Don't Go to Strangers" へと続く流れは完璧です。

その他にも "Magnolia"、"Crazy Mama" という名曲もありますし、何よりも彼の名前を世に知らしめた Clapton がコピーした "After Midnight" も収録されています。

一発で好きになりました。


  1. Call Me the Breeze
  2. Call the Doctor
  3. Don't Go to Strangers
  4. Woman I Love
  5. Magnolia
  6. Clyde
  7. Crazy Mama
  8. Nowhere to Run
  9. After Midnight
  10. River Runs Deep
  11. Bringing It Back
  12. Crying Eyes


  • Drums Karl Himmel, Chuck Browning
  • Bass Tim Drummond, Carl Radle, Norbert Putnam
  • Keyboard Bob Wilson, David Briggs, Jerry Whitehurst
  • Steel guitar Weldon Myrick
  • Fiddle Buddy Spicher, Shorty Lavender
  • Dobro Walter Hayness
  • Slide guitar Mac Gayden
  • Harmonica Ed Colis



2022年9月4日日曜日

Cheshire Cat / Ronnie Foster (1975)

オルガン奏者 Ronnie Foster による、70年代中盤のポップ・ソウル・アルバム。

Foster 自身のエレクトリック・ピアノに加え、George Benson のギターがいい感じです。
George Benson が "Breezin'" を出すのは1976年ですが、"Breezin'" にも Foster は参加して、重要な役割を担っています。曲も提供してます。

このアルバムでは、もはやジャズの進化系ではなく、Herbie Hancock 的なソウルへの接近方法です。より直接的というか。
とは言っても、演奏はやはりジャズ出らしくしっかりしています。
そこがやっぱりこのアルバムの魅力でしょうね。

Stevie Wonder の "Tuesday Heartbreak" のカバーもいいですが、1曲目 "Like A Child" とラストの "Heartless" のメロウ・グルーヴさが好きです。


  1. Like A Child
  2. Tuesday Heartbreak
  3. Fly Away
  4. Funky Motion
  5. Cheshire Cat
  6. Heartless


  • All music composed by Ronnie Foster
  • Except #2 by Stevie Wonder


  • Bass : William Allen, Gary King (#3, #5, #6) 
  • Percussion : James Mtume
  • Drums : Dennis Davis
  • Guitar : Joe Beck, George Benson (#5) 
  • Vocals, Keyboards : Ronnie Foster



2022年8月29日月曜日

Brandy / Brandy (1994)

90年代 R&B において、最も影響力のあった1つに数えられるヒット・アルバムです。
今聴くとどうってことのないサウンドですが、何でこんなに多くの人から支持されてるんでしょうかね?

1つは、ラップが大きく盛り上がる中で、ストレートなソウル・ミュージックに徹しているところじゃないかと思います。
R&B は70年代のニュー・ソウル・ムーブメントから、80年代に入ってディスコ、ブラック・コンテンポラリーと進み、少し停滞というか、アメリカン・アフリカンにとって少し距離があるというか、古臭い音楽になっていたんじゃないでしょうか。そんな中ヒップ・ホップ・ムーブメントが起こり、若者の心をラップが鷲掴みし、新しい=ラップという図式ができ上がってたような気がします。
でもやっぱ、メロディって人の心には必要なんですよね。
そこの評価。

もう1つは、Brandy の若さでしょうかね。
当時16歳。
人は若い才能に惹かれます。
ニュー・スターが、ひと回りして「新しい」歌もの R&B を出して、結構これいいじゃない?って感じでウケたのかも。
同じ1994年に TLC "CrazySexyCool" がありますが、TLC はグループにラップの人がいるのが象徴的です。

やはり同じ1994年に Aaliyah がデビューし、Brandy、Aaliyah、TLC、Monica、Faith Evans、SWV らが90年代 R&B を牽引していくことになります。


  1. Movin' On [Keith Crouch, Kipper Jones]
  2. Baby [Crouch, Jones, Rahsaan Patterson]
  3. Best Friend [Crouch, Glenn McKinney]
  4. I Wanna Be Down [Crouch, Jones]
  5. I Dedicate (Part I) [Brandy, Rochad Holiday, Curtis Wilson, Jeffrey Young]
  6. Brokenhearted [Crouch, Jones]
  7. I'm Yours [Arvel McClinton, Damon Thomas]
  8. Sunny Day [Brandy, Holiday, Wilson, Young]
  9. As Long as You're Here [Holiday, Wilson, Young, Trina Powell]
  10. Always on My Mind [Kenneth Crouch]
  11. I Dedicate (Part II) [Brandy, Holiday, Wilson, Young]
  12. Love Is on My Side [Robin Thicke, Thomas]
  13. Give Me You [Brandy, Holiday, Wilson, Young]
  14. I Dedicate (Part III) [Brandy, Holiday, Wilson, Young]


  • Derek Organ [drums]
  • Robert Jones [programming, drums]
  • Chacha Orias [bass]
  • Glenn McKinney [guitar]
  • Thomas Organ [guitar]
  • Cat Daddy Ro [keyboard]
  • Kenneth Crouch [piano]
  • Damon Thomas [piano, keyboard]
  • Derrick Edmondson [flute & saxophone #3, horns #1]
  • Rahsaan Patterson [backing vocals #2]
  • Tiara Lemacks [backing vocals #4]
  • Tamara [backing vocals #9, 13]
  • Robin Thicke [backing vocals #12]
  • Jeffrey Young [backing vocals #12]
  • Arvel McClinton III [programming]
  • Jerry Conaway [programming]


Producer

  • Keith Crouch #1-4
  • Keith Crouch & Kipper Jones #6
  • Somethin' for the People #5, 8, 9, 11, 13, 14
  • Damon Thomas #12
  • Arvel McClinton & Damon Thomas #7
  • Kenneth Crouch #10


Executive producer : Darryl Williams



2022年8月21日日曜日

5 / Roberto Roena Y Su Apollo Sound (1973)

Roberto Roena はプエルトリコ出身のパーカッショニスト。
Fania All-Stars のパーカッションとしても活躍しています。

彼のコンボ Apollo Sound による5枚目のアルバムになります。

これがまた素晴らしい!
70年代初頭の N.Y. サルサ、特に Fania レーベルのサウンドに外れはありませんね。

コンガ、ティンバレス、ピアノ、ブラスが生み出すポリ・リズムによるグルーヴにヴォーカルが乗り、見事なサウンドに仕上がっています。
名門 Tommy Olivencia 楽団から迎え入れたシンガー、Sammy Gonzalez の貢献大ですね。

真夏の暑い夜に熱い演奏、軽やかなヴォーカルが逆に涼しげです。

#1 "Cui Cui", #7 "Aquellos Que Dicen", Fania All-Stars のカヴァー、Johnny Pacheco 作の #10 "Ponte Duro" あたりがお勧めかな。


  1. Cui Cui [Calixto Ochoa]
  2. Oriza Eh [Junior Cepeda]
  3. Como Tu No Hay Nadie
  4. Que Se Sepa [José Cauto Pavón]
  5. Asuncion
  6. Avisale A Mi Contrario [Ignacio Piñeiro]
  7. Aquellos Que Dicen [C. Curet Alonso]
  8. La Marunga
  9. Solo Contigo Basta
  10. Ponte Duro [Johnny Pacheco]


  • Congas : Papo Clemente
  • Timbales : Julito Morales
  • Piano : Jorge Millet
  • Bass : Jappy Castro
  • Trumpet [1st] : Dario Morales
  • Trumpet [2nd] : Mario Cora
  • Trombone : Gunda Merced
  • Tenor Saxophone, Flute : Miguel Rodriguez
  • Vocals : Frankie Calderon, Sammy Gonzalez, Tito Cruz (2)


  • Produced by Roberto Roena



2022年8月13日土曜日

Air Kiss / 尾崎亜美 (1981)

David Foster 全曲編曲という豪華アルバムです。
洋楽のクオリティを目指したのだろうとは思いますが、ポップスというより、当時の歌謡曲の範疇に入ると思います。
David Foster 何しててん、と思いましたね。

歌詞なのかな.....
今の時代を通った僕たちには、ちょっと野暮ったい歌詞に感じます。

こういう歌謡曲的な曲が狙いなら、成功してると思いますが。

いずれにしても時代性を感じるアレンジですよね。

メロディは悪くないだけに、アレンジと歌詞がちょっともったいない。

  1. . Deep
  2. グラスのルージュ
  3. Foggy Night
  4. 銀幕の恋人
  5. 純情
  6. Flash Back
  7. ハートの色は海の色
  8. Just Once Again
  9. Sweet Christmas Song (シングル・カップリング)
  10. Deep (シングル・バージョン)
  11. 海(女)~空(男)へ (シングル・カップリング)

  • DAVID FOSTER : Arrangement, Keyboards, Mini Moog Bass
  • MICHAEL LANDAU : Guitar, Bass
  • MICHAEL BAIRD : Drums



2022年8月7日日曜日

One on One / Bob James and Earl Klugh (1979)

Earl Klugh は最近の僕のお気に入りのおやすみの音楽です。
いろんな楽器がありますが、アクースティック・ギターの音色が僕には一番リラックスできるみたいです。

で、アクースティック・ギターといえば Earl Klugh ということですが、そのあたりが僕の歳なんですよね。
高校の時に、友人から教えてもらったのが Earl Klugh を知るきっかけでした。実に38年前。"Finger Paintings" やったかな。
その後、Bob James と共作 "Two of a Kind" の CD を買い、これは随分長い間、今でもですが、僕のお気に入りになりました。

その共作の1作目にようやく辿り着きました。
まぁ、これも素晴らしい!

Bob James は成功したピアニストですし、このアルバムも彼のレーベル ”Tappan Zee” から出ているのに、それほど前に出ず、Earl Klugh のギターを支える役割に徹しているように見えます。そこがちょうどいい塩梅なんですね。

また、ものすごくサウンドが凝っているのにも驚きです。決してデコデコしてないんですが。ときにストリングスも入り、ギターとピアノだけでもいいくらいなのに、これだけのバンド・サウンドにしているところがすごいなあと思います。
Eric Gale、Gary King、Ron Carter、Harvey Mason、Ralph MacDonald と豪華すぎるバンド・メンバーです。

6曲入りですが、Earl Klugh 3曲、Bob James 3曲をそれぞれ持ち寄っています。
僕はその中でもどっちかというと Earl Klugh の曲がお気に入りですかね。"Love Lips"、"I'll Never See You Smile Again" はお薦めです。

ジャケットのアート・ワークも秀逸です。
こんなの今もあるんかどうか分かりませんが、紙マッチの内側に残っているマッチ棒2本。
LP だとこれが本物の紙マッチと同じように2つ折になっているという趣向(紙マッチは2つ折りの間を擦って着火する仕組みになってます)。CD や配信では味わえない LP を前提としたアイデアですよね。


  1. Kari [Klugh]
  2. The Afterglow [James]
  3. Love Lips [Klugh]
  4. Mallorca [James]
  5. I'll Never See You Smile Again [Klugh]
  6. Winding River [James]


  • Bob James acoustic piano, Fender Rhodes
  • Earl Klugh acoustic guitar
  • Eric Gale guitar (2, 3, 5)
  • Neil Jason bass (1, 2)
  • Gary King bass (3, 5)
  • Ron Carter acoustic bass (4, 6)
  • Harvey Mason drums
  • Ralph MacDonald percussion


  • Produced by Bob James



2022年7月31日日曜日

Ella Mai / Ella Mai (2018)

Chill Out R&B というようなジャンルがあるのかどうか知りませんが、ダウンテンポと抑揚の少ないメロディ、音数の少ないサウンドは、現代主流になりつつある R&B の一面を代表しています。
'90年代 R&B にベースを持ってはいますが、メロウさは引き継いでいるものの、華やかさは控えめです。
メインストリームではないイギリスからこういった音楽が出てくるというのは、素人の僕なんかにすれば驚きですが、ロンドンの音楽シーンの奥深さも感じさせます。
そう言えば宇多田ヒカルの最新作もロンドンのチームでしたっけ。

Ella Mai 自身はアイリッシュとジャマイカの混血とのことで、生粋の R&B ルーツではないところも面白いですね。
Arize という3人組のガール・グループに参加し TV にも出たりしますが、ここでは全く注目されませんでた。グループの中でもメインではなかったようです。その後ソロに転向した後、インスタが縁で DJ Mustard の目に止まり、彼のレーベル 10 Summers Records と契約することになります。
きっと見栄えがいいわけではない、けど飛び抜けて歌唱力があるわけでもない、そんな彼女がうまくチャンスを掴んだ。分からないものです。

一気にスターダムに駆け上がったのは、このアルバムにも入っている "Boo'd Up" のヒットです。2017年に出した EP "Ready" の中の1曲で、じわじわと人気が出ていきました。
控えめなメロディーですが、何か心に引っかかるザラザラ感を持っている不思議な曲です。
アルバムの中で引っかかり度が高いもう1曲が "Trip" です。同じようなテイストを持っていますが、サビのフックが少し強いでしょうか。

アルバムでは Mustard のサウンド一色というわけではなく、ロンドン・コネクションのサウンドもいくつか含まれています。ただ、注意深く聴かないと特色の違いは分かりません。


  1. Emotion
  2. Good Bad [Rogues]
  3. Dangerous [Cox]
  4. Sauce [DJ Mustard, Gulledge]
  5. Whatchamacallit (featuring Chris Brown) [DJ Mustard, Holt]
  6. Cheapshot [H*Money]
  7. Shot Clock [DJ Mustard]
  8. Boo'd Up [DJ Mustard, Rance]
  9. Everything (featuring John Legend) [Rush Hr., DJ Mustard, Gulledge]
  10. Own It [Kosine, Snoddy]
  11. Run My Mouth [DJ Mustard]
  12. Gut Feeling (featuring H.E.R.) [DJ Mustard, Gulledge]
  13. Trip [DJ Mustard, Gulledge]
  14. Close [DJ Mustard, Gulledge]
  15. Easy [Lido, DJ Mustard, Gulledge]
  16. Naked (bonus) [DJ Mustard, Fedi, Groziuso, Sesson II, Friedman]

[ ] Producer
Marlon M. Williams : guitar (track 9)

Samples

  • "Shot Clock" contains an interpolation of "Legend" performed by Drake.
  • "Own It" contains samples from "T-Shirt & Panties" performed by Adina Howard featuring Jamie Foxx.
  • "Easy" contains an interpolation of "I Melt with You" performed by Modern English.



2022年7月26日火曜日

Specialty Profiles / Sam Cooke & The Soul Stirrers

Sam Cooke は 50 年代初頭にゴスペル・グループ The Soul Stirrers のメイン・ボーカルになりました。
素晴らしいゴスペルを紡ぎ出していましたが、彼にはポップ・シーンでの成功といいうアンビションがあり、ゴスペルとポップの間の葛藤があったようです。
ソロ名義の "You Send Me" の成功を受けて、レコード会社 Specialty も少し日和り、Cooke 名義のポップ・ミュージックを出すようになります。
もちろん、The Soul Stirrers のメンバーとしては、ポップ・ミュージックをやるということは不本意だったはずで、最終的には、Sam Cooke はソロへ転向していきます。
ソロ転向は、Sam Cooke にとってもThe Soul Stirrers にとってもハッピーだったのではないでしょうか。その後の Sam Cooke の成功を見れば分かります。

このアルバムはそんな時代の、ゴスペルとポップ(ソウル)ミュージックが混じったコンピレーションです。
やはりここでは、僕はゴスペルを推したい。
"Peace In The Valley", "Touch The Hem Of His Garment", "Jesus Gave Me Water" あたりの曲ですね。
曲調は地味ですが、なんか染み込むものがあります。

アメリカって独特な文化ですよね。ゴスペルといいミュージカルといい。何でもかんでも歌っちゃえ!
それに宗教音楽って、レコードで普通売れへんで。


  1. I'll Come Running Back To You [Sam Cooke]
  2. Forever [Sam Cooke]
  3. Jesus, I'll Never Forget [The Soul Stirrers]
  4. Peace In The Valley [The Soul Stirrers]
  5. Just Another Day [The Soul Stirrers]
  6. Touch The Hem Of His Garment [The Soul Stirrers]
  7. Lovable [Sam Cooke]
  8. Farther Along [The Soul Stirrers]
  9. Jesus Gave Me Water [The Soul Stirrers]
  10. The Last Mile Of The Way [The Soul Stirrers]
  11. That's All I Need To Know [Sam Cooke]
  12. Any Day Now [The Soul Stirrers]
  13. I Don't Want To Cry [Sam Cooke]
  14. I'm Gonna Built Right On That Shore [The Soul Stirrers]



2022年7月18日月曜日

Beautifully Human: Words and Sounds Vol. 2 / Jill Scott (2004)

前作、"Who Is Jill Scott? Words and Sounds, Vol. 1" を発展させたようなセカンド・アルバムです。

静かで、ミディアム〜スロウ・テンポ、そして平板。
H.E.R.、Jhené Aiko、Lucky Daye、Summer Walker、Ella Mai.....
今の R&B シーンのメイン・ストリームはこの Jill Scott の影響が大きいのではないでしょうか。
幾分か Jill Scott の方がネオ・ソウルしていますが。

サウンド的には、オーガニックかつジャジー。
アルバムの中の多くの曲がフィラデルフィアの A Touch Of Jazz Studios で録音されており、ライター、プロデューサーとも Andre Harris、Vidal Davis、Darren Henson、Keith Pelzer、Carvin Haggins、Ivan "Orthodox" Barias、Anthony Bell、Ronald "PNutt" Frost といった A Touch Of Jazz Studios のメンバーが関わっています。
そのあたりがジャジーさを感じさせるところなんでしょうか。
その他の曲でも、The Roots の James Poyser、Pete Kuzma、意外にも Raphael Saadiq らの名前がクレジットされており、全体的なサウンド・カラーが統一されています。

先行シングルの "Golden" では珍しく力強いヴォーカルとアップ・テンポが使われていますが、むしろこれは稀です。
どの曲が際立っている、というより、アルバム全体として聴かせるという意味ではトータル・アルバムなんでしょうね。


  1. Warm Up [Jill Scott, James Poyser]
  2. I'm Not Afraid [Scott, Omari Shabazz]
  3. Golden [Scott, Anthony "Ant" Bell]
  4. The Fact Is (I Need You) [Scott, Pete Kuzma]
  5. Spring Summer Feeling [Scott, Raphael Saadiq, Kelvin Wooten]
  6. Cross My Mind [Scott, Keith "Keshon" Pelzer, Darren "Limitless" Henson]
  7. Bedda at Home [Scott, Ivan "Orthodox" Barias, Carvin "Ransum" Haggins, Frank Romano, Johnnie Smith]
  8. Talk to Me [Scott, Poyser]
  9. Family Reunion [Scott, Barias, Haggins, George Kerr]
  10. Can't Explain (42nd Street Happenstance) [Scott, Poyser]
  11. Whatever [Scott, Ronald "PNutt" Frost]
  12. Not Like Crazy [Scott, Kuzma]
  13. Nothing" (Interlude) [Scott, Andre Harris, Vidal Davis]
  14. Rasool [Scott, Harris, Davis, Tom Brock, Percy Taylor, Barry White]
  15. My Petition [Scott, Harris, Davis]
  16. I Keep / Still Here [Scott, Harris, Davis / Scott, Kuzma, Dave Manley]


"Family Reunion" contains elements of "Look Over Your Shoulder" by the Escorts.
"Rasool" contains a sample of "Mellow Mood Pt. 1" by Barry White.



2022年7月10日日曜日

In Our Lifetime? / Marvin Gaye (1981)

このアルバムのレコーディングを始めた1979年当時、Marvin Gaye は私生活で大きなトラブルを抱えていました。
再婚相手との不仲、コカイン、脱税容疑、借金、モータウンとの契約解除...
ずたぼろ状態だったわけですね。

音楽的には、前作 "Here, My Dear" (1978) の商業的失敗が、大きな負担になっていました。
何せ、1977年の "Got to Give It Up" 以降ヒット曲が出ていなかったわけです。

Marvin は一念発起して "Love Man" プロジェクトを立ち上げ、より大衆層にウケる商業的成功を狙ったアルバムの制作を目指します。

レコーディングはしたものの、私生活のトラブルが次々と発生し、完成は混乱を極めます。
特にコカインのオーバードーズがひどかったんでしょうね。
脱税その他への対応としてロンドンに移り、Odyssey スタジオと George Martin の AIR スタジオで最終的なミックスを始めます。
単なるミックスではなく、シンセサイザーを加え、アルバム・コンセプトも見直しています。

そんな中、音源を入手したモータウンは、アルバムを勝手にリリースしてしまいます。ギターなどの追加と独自のミックスを施して。Marvin の最終ミックス中でした。
契約解除を控えて、いつまでも完成しないアルバムに業を煮やしたんでしょうね。
そんなこんなで、商業的にはさっぱり、評判も芳しくなかったアルバムですが、改めて数
年の時を経て聴いてみると、なかなかいい曲が揃っている、いいアルバムだと思います。
"What's Going On" 以降、コンセプチュアルなアルバムを作り続けてきた Marvin にとっては少し散漫に感じているかもしれませんが。

アルバムの最初の "Praise" は明るく、"Love Party" は軽快なダンス・ナンバーです。
"Heavy Love Affair" は "Let's Get It On" の系列に繋がる名曲だと思います。
"I Want You" 以降の少し暗めの曲調から、明るく突き抜けたような感じでまとまっているのは好感が持てます。
"Love Man" アルバムの先行シングルの扱いで出された "Ego Tripping Out" は当初の発売にには入っていませんでしたが、CD化に伴って追加されています。

そして、2007年についに、Odyssey スタジオと AIR スタジオミックスがボーナス・追加された "Expanded edition" 版が発売されました。
最初に発売されたモータウン・ミックス版も悪くはないですが、ロンドン・ミックス版がより原作者の意図に近いモノだと思うと、こちらの方が正統かなと思います。
イントロダクションが全く違っていたり、シンセの追加で少し宇宙的なアレンジが施されている曲もあります。曲のタイトル、歌詞が代わっている曲もあります。

このアルバムの翌年には、名盤 "Midnight Love" を出すんですから、Marvin の才能には底知れないものがあります。


  1. Praise
  2. Life Is for Learning
  3. Love Party
  4. Funk Me
  5. Far Cry
  6. Love Me Now or Love Me Later
  7. Heavy Love Affair
  8. In Our Lifetime
  9. Ego Tripping Out


Air Studios Mix (Outtake)

  1. Nuclear Juice
  2. Ego Tripping Out
  3. Far Cry


Odyssey Studios Mix

  1. Praise
  2. Life Is For Learning
  3. Heavy Love Affair
  4. Love Me Now or Love Me Later
  5. Ego Tripping Out
  6. Funk Me
  7. In Our Lifetime
  8. Love Party


The Love Man Sessions

  1. Life's a Game of Give and Take [→Heavy Love Affair]
  2. Life Is Now in Session
  3. I Offer You Nothing But Love [→I Offer You Nothing But Love]
  4. Just Because You're So Pretty [→Love Me Now or Love Me Later]
  5. Dance 'N' Be Happy [→Love Party]
  6. Funk Me, Funk Me, Funk Me [→Funk Me]
  7. A Lover's Plea [→Praise]


Personnel

  • Marvin Gaye – vocals, keyboards, drums
  • Preston "Bugsy" Wilcox – drums
  • Lee Kentle – drums
  • Nigel Martinez – drums
  • William Bryant – drums, keyboards
  • Joe James – percussion
  • Gary Jones – percussion, conga
  • Joe Mayo – percussion
  • Elmira Collins – vibraphone
  • Raymond Crossley – keyboards
  • Frank Bates – bass
  • Frank Blair – bass, drums
  • Robert Ahwry – guitar
  • Gordon Banks – guitar
  • Curtis Anthony Nolen – guitar
  • Dr. George Shaw – trumpet
  • Ray Brown – trumpet
  • Kenny Mason – trumpet
  • Nolan Andrew Smith – trumpet
  • Sidney Muldrew – French horn
  • Fernando Harkness – saxophone
  • Raphael Ravenscroft – alto saxophone



2022年7月1日金曜日

Dear Love / Jazzmeia Horn and Her Noble Force (2021)

Noble Force という15人編成のビッグ・バンドと組んだ初めてのアルバムになります。(前2作はソロ名義)
といっても、ビッグ・バンド的アレンジはあまり感じさせず、少し管が多めなのかな、といった程度に感じました。

アフリカンで、ラップ(というか語り)が中心の #1 "I Feel You Near" で面食らいますが、あとは通常の歌ものです。

Jazzmeia というだけあって、ジャズが好きなんでしょうか。でも決してジャズの範疇に収まり切らない才能を感じます。
曲調もバラエティに富んでいて、4ビート・ジャズから、ポップス、R&B など、それぞれ違った顔を見せてくれます。もちろん僕は R&B の顔が好きですが。

そんな中で、僕が 1 番いい、と思ったのはラストの曲 "Where Is Freedom!?" ですかね。グルービーなオルガンから始まる R&B ナンバーです。


  1. I Feel You Near
  2. Be Perfect
  3. He Could Be Perfect
  4. He's My Guy
  5. Let Us (Take Our Time)
  6. Back to Me
  7. Lover Come Back to Me
  8. Money Can't Buy Me Love
  9. Nia
  10. Strive
  11. Strive (To Be)
  12. Where We Are
  13. Judah Rise
  14. Where Is Freedom!?


  • Bruce Williamson (alto saxophone)
  • Keith Roftis (tenor saxophone)
  • Freddie Hendrix (trumpet)
  • Corey Wilcox (trombone)
  • Sullivan Fortner (organ)
  • Keith Brown (piano)
  • Eric Wheeler (bass)
  • Anwar Marshall (drums)



2022年6月18日土曜日

Camouflage / Rufus with Chaka Khan (1981)


Chaka Khan が参加した Rufus 最後のアルバム。
ビッグ・ヒット・シングルがなかったので、あまり人気のないアルバムですが、僕はすごくクオリティ高いと思います。
Quincy Jones のプロデュースを受けた前作 "Masterjam" の経験が活かされて、きらびやかなアレンジとなっています。

最初の "Better Together" はキックの強いビートが特徴で、やっぱバンド Rufus はすごいなと思わせます。
#2 はノリのいい "Jigsaw"。アルバムベスト・ソングじゃないでしょうか。
アルバムの中盤 (A面ラスト〜B面)は比較的スローな曲が中心となりますが、これもまた良し。
シングルカットされた "Sharing the Love" もいいですが、僕はA面最後の曲 "True Love" と、途中レゲエ調でスチール・ドラムが入る "Quandary" が好きですね。

1981年は、イギリスのシンセ・ポップ・バンド The Human League が "Don't You Want Me" を出した年。そう思うと、このアルバムの世界は少し古くなっていたのかもしれません。
時代の波に乗っていなくても、いいものはいい!
長いポピュラー・ミュージックの歴史の中ではいつか再評価されるでしょう。


  1. Better Together [Tony Maiden, Lalomie Washburn]
  2. Jigsaw [Maiden, Chaka Khan]
  3. Secret Friend [Maiden, René Moore, Angela Winbush, Allee Willis]
  4. Music Man (The D.J. Song) [John Robinson, David Wolinski]
  5. True Love [Wolinski]
  6. Sharing the Love [Kevin Murphy]
  7. Quandary [Maiden, Khan]
  8. Lilah [Wolinski, Willis]
  9. Losers in Love [Wolinski, Danny Seraphine]
  10. Highlight [Bobby Watson, Moore, Winbush]


  • Chaka Khan - vocals
  • Tony Maiden - guitar, vocals
  • Bobby Watson - bass guitar
  • Kevin Murphy - keyboards
  • David "Hawk" Wolinski - synthesizer, keyboards
  • John Robinson - percussion, drums
  • Angela Winbush - keyboards, background vocals
  • René Moore - background vocals
  • Lalomie Washburn - background vocals
  • Vince Charles - steel drums
  • Paulinho Da Costa - percussion
  • Greg Phillinganes - keyboards
  • Larry Williams - saxophone


  • Produced  by Rufus
  • Mixed by Bruce Swedien

2022年6月14日火曜日

Best of Friends / Twennynine featuring Lenny White (1979)

僕はほぼ Return to Forever は聞いてませんので、Lenny White も当然聞いたことがありません。
このアルバムは、そういう意味で、彼が通ってきたジャズの道からは外れるものです。
Return to Forever のようなフュージョンを大きく通り越して、純粋なR&Bあるいはファンクのジャンルになるでしょう。
若干、Stanley Clarke に通ずるフュージョン・ファンク的な感じもありますが。

Lenny White は Jack DeJohnette と同時に若くして Bitches Brew に起用されたドラマーです。
同じく Miles のバンドにいた Herbie Hancock もフュージョンを経て、R&B の世界に入っていきましたので、Miles の見えざる影響力の一つのコースなのかもしれません。

曲はほヴォーカルもので、Earth, Wind & Fire のようにブラスが効果的に使われるきらびやかなサウンドです。
シングル・ヒットしたのは "Peanut Butter" ですが、僕はタイトル曲が一番好きです。ピアノ・ソロの導入が意表をついてます。
ラストの "Tropical Nights" だけがインストゥルメンタル曲で、メタリックなギターが聴ける、典型的なフュージョン曲になってます。


  1. Citi Dancin' [Lenny White]
  2. Take Me or Leave Me [Eddie Martinez]
  3. Best of Friends [Lenny White, Danall Miller]
  4. Peanut Butter [Donald Blackmon]
  5. Betta [Barry Johnson]
  6. Morning Sunrise [Donald Blackmon]
  7. Oh Sylvie [Denzil Miller, Valmon Burke]
  8. Tropical Nights [Lenny White]


  • Lenny White Drums, Percussion, Synthesizer
  • Barry Johnson Bass
  • Eddie Martinez Guitar
  • Nick Moroch Guitar, Glockenspiel
  • Denzil Miller Keyboards
  • Skip Anderson keyboards
  • Don Blackman Clavinet, Electric Piano, Organ, Piano, Synthesizer
  • Paulinho Da Costa Percussion
  • Produced by Lenny White and Larry Dunn
  • Executive Producer Don Mizell
  • Recorded at the Indigo Ranch, Malibu, May - June 1979