このアルバムのレコーディングを始めた1979年当時、Marvin Gaye は私生活で大きなトラブルを抱えていました。
再婚相手との不仲、コカイン、脱税容疑、借金、モータウンとの契約解除...
ずたぼろ状態だったわけですね。
音楽的には、前作 "Here, My Dear" (1978) の商業的失敗が、大きな負担になっていました。
何せ、1977年の "Got to Give It Up" 以降ヒット曲が出ていなかったわけです。
Marvin は一念発起して "Love Man" プロジェクトを立ち上げ、より大衆層にウケる商業的成功を狙ったアルバムの制作を目指します。
レコーディングはしたものの、私生活のトラブルが次々と発生し、完成は混乱を極めます。
特にコカインのオーバードーズがひどかったんでしょうね。
脱税その他への対応としてロンドンに移り、Odyssey スタジオと George Martin の AIR スタジオで最終的なミックスを始めます。
単なるミックスではなく、シンセサイザーを加え、アルバム・コンセプトも見直しています。
そんな中、音源を入手したモータウンは、アルバムを勝手にリリースしてしまいます。ギターなどの追加と独自のミックスを施して。Marvin の最終ミックス中でした。
契約解除を控えて、いつまでも完成しないアルバムに業を煮やしたんでしょうね。
そんなこんなで、商業的にはさっぱり、評判も芳しくなかったアルバムですが、改めて数
年の時を経て聴いてみると、なかなかいい曲が揃っている、いいアルバムだと思います。
"What's Going On" 以降、コンセプチュアルなアルバムを作り続けてきた Marvin にとっては少し散漫に感じているかもしれませんが。
アルバムの最初の "Praise" は明るく、"Love Party" は軽快なダンス・ナンバーです。
"Heavy Love Affair" は "Let's Get It On" の系列に繋がる名曲だと思います。
"I Want You" 以降の少し暗めの曲調から、明るく突き抜けたような感じでまとまっているのは好感が持てます。
"Love Man" アルバムの先行シングルの扱いで出された "Ego Tripping Out" は当初の発売にには入っていませんでしたが、CD化に伴って追加されています。
そして、2007年についに、Odyssey スタジオと AIR スタジオミックスがボーナス・追加された "Expanded edition" 版が発売されました。
最初に発売されたモータウン・ミックス版も悪くはないですが、ロンドン・ミックス版がより原作者の意図に近いモノだと思うと、こちらの方が正統かなと思います。
イントロダクションが全く違っていたり、シンセの追加で少し宇宙的なアレンジが施されている曲もあります。曲のタイトル、歌詞が代わっている曲もあります。
このアルバムの翌年には、名盤 "Midnight Love" を出すんですから、Marvin の才能には底知れないものがあります。
- Praise
- Life Is for Learning
- Love Party
- Funk Me
- Far Cry
- Love Me Now or Love Me Later
- Heavy Love Affair
- In Our Lifetime
- Ego Tripping Out
Air Studios Mix (Outtake)
- Nuclear Juice
- Ego Tripping Out
- Far Cry
Odyssey Studios Mix
- Praise
- Life Is For Learning
- Heavy Love Affair
- Love Me Now or Love Me Later
- Ego Tripping Out
- Funk Me
- In Our Lifetime
- Love Party
The Love Man Sessions
- Life's a Game of Give and Take [→Heavy Love Affair]
- Life Is Now in Session
- I Offer You Nothing But Love [→I Offer You Nothing But Love]
- Just Because You're So Pretty [→Love Me Now or Love Me Later]
- Dance 'N' Be Happy [→Love Party]
- Funk Me, Funk Me, Funk Me [→Funk Me]
- A Lover's Plea [→Praise]
Personnel
- Marvin Gaye – vocals, keyboards, drums
- Preston "Bugsy" Wilcox – drums
- Lee Kentle – drums
- Nigel Martinez – drums
- William Bryant – drums, keyboards
- Joe James – percussion
- Gary Jones – percussion, conga
- Joe Mayo – percussion
- Elmira Collins – vibraphone
- Raymond Crossley – keyboards
- Frank Bates – bass
- Frank Blair – bass, drums
- Robert Ahwry – guitar
- Gordon Banks – guitar
- Curtis Anthony Nolen – guitar
- Dr. George Shaw – trumpet
- Ray Brown – trumpet
- Kenny Mason – trumpet
- Nolan Andrew Smith – trumpet
- Sidney Muldrew – French horn
- Fernando Harkness – saxophone
- Raphael Ravenscroft – alto saxophone
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