2016年12月25日日曜日

Provision / Scritti Politti (1988)

僕が初めて Scritti Politti を聴いたのは、"Hypnotize" だったと思います。
クリアなサンプリングサウンドとエレクトリックビートに乗せた、中性的なヴォーカルが印象的で、なんてカッコいい曲なんだろうと衝撃を受け、すぐに12インチシングル輸入盤を買いに行ったような気がします。

"Hypnotize" や "Wood Beez" が入ったフルアルバム "Cupid & Psyche 85" に続くアルバムが、この "Provision" になります。
基本的には、 "Cupid & Psyche 85" の路線を踏襲していて、サンプリング、打ち込み系のキラキラサウンドを継承しているのですが、音数は削減されているように感じます。よりブラック・コンテンポラリーに近くなったような。
それなりに味わいはあるのですが、前作までと比べて、勢いというか、集中力、緊張感が低いように思います。
"Provision" は、支給、供給の意味もあります。Green がこのときどういう心境だったのかは分かりませんが、レコード会社を含め世間的に、大成功した "Cupid & Psyche 85" の続編を期待され、それに応える形でアルバム制作せざるを得なかったのではないでしょうか。

また、RogerMiles DavisMarcus Miller ら、豪華ゲスト・ミュージシャンに目を惹かれます。しかしその使われ方は控えめで、必然性は感じられません。
Miles はこの頃、晩年にかけて、ヒップホップやテクノや Prince など、新しい音楽に積極的に接近しています。盛んにミュートを使い、自分のトランペットがうまく活きるサウンドを最後まで模索していたということでしょうか。

2016年12月17日土曜日

Steppin' Out / Joe Cuba Sextet (1963)

ダンス・ナンバーとバラッドが半々くらいかな。

後に Boogaloo の代表選手になるわけですが、ここではまだ片鱗も見えません。
N.Y. 生まれなので、やはり N.Y. Salsa なのでしょうが、後の Fania 勢とはまた違い、素朴な Latin といった感じでしょうか。

しかし、 N.Y. というアメリカ文化の真ん中にいて、よくルーツ音楽である Latin をやろうと思いますよね。
そういうコミュニティがしっかりある、ということでしょうか。そのあたり、日本じゃちょっとわからない感覚ですね。

2016年12月11日日曜日

Floetic / Floetry (2002)

今から十数年前のアルバムですが、まったく古さを感じさせません。
ラップと歌との融合が絶妙です。

ほとんどが、ミッド・テンポからロウ・テンポの曲ですし、その方が彼女らの特色が出ていて、いい曲が多いように思います。

イギリス出身ではありますが、活動の中心はアメリカであり、アメリカのプロダクションと言ってもいいと思います。

いずれにしても、そのラップの量さから、ネオ・ソウルにひとくくりにされてしまうのは惜しい感じがします。

2016年12月4日日曜日

Global a Go-Go / Joe Strummer & the Mescaleros (2001)

何と言ったらいいんでしょう、この感じ。
前作より、さらに趣味性と複雑性が増しております。
さらにアコースティック性も増しています。

パンク・アイコンとしての "Joe Strummer" の姿は最小限となっていますが、ちょいちょい姿を見せます。
決して落胆ではなく、かといって大満足でもなく。

"Mescaleros" の仲間と一緒に、音楽を楽しんでいる、そんな姿を感じます。

僕としては前作の方が好みに合ってますが、これはこれで味わい深いです。

2016年11月27日日曜日

Buffalo Springfield / Buffalo Springfield (1966)

1966年は、Bob Dylan が "Blonde on Blonde" を出し、Beach Boys が "Pet Sounds" を出し、Beatles が "Revolver" を出した年であり、僕の生まれた年でもあります。

フォーク・ロックからカントリー・ロックそして後にサイケデリックが時代の先端を行ってたんじゃないでしょうか。
本作はそういう時代背景を確実に写しています。

その中で光るのは、1曲目の "For What It's Worth" です。Stephen Stills のセンスが既に全開です。名曲ですね。

2016年11月19日土曜日

Mr. Hands / Herbie Hancock (1980)

過去('73~)に録音された、いわゆるお蔵入り曲に、 Herbie 自身がシンセサイザーを追加したものを集めたコンピレーションアルバムになります。(ただしラストの"Textures"のみは新録です)
したがって、ミュージシャンも多彩で、1曲ごとにリズムセクションが異なっています。
  1. Spiraling Prism - Byron Miller (bs), Leon "Ndugu" Chancler (ds)
  2. Calypso - Ron Carter (bs), Tony Williams (ds)
  3. Just Around The Corner - Freddie Washington (bs), Alphonse Mouzon (ds)
  4. 4 A.M. - Jaco Pastorius (bs), Harvey Mason (ds)
  5. Shiftless Shuffle - Paul Jackson (bs), Harvey Mason (ds)
特筆すべきはベースです。豪華ですね。

メロディラインはそれほどエッジが立っているわけではないので、全編マイナーな感じは否めませんが、じっくり聴くと奥ゆかしい味が出てくる、そんな感じです。

このアルバムでは Herbie は Apple II を使っているとのこと。今のパーソナルコンピュータから考えると恐ろしいほどスペックが低かったでしょうから、どんなことに使ってたんでしょうね。

2016年11月12日土曜日

Mahogany Soul / Angie Stone (2001)

なんと18曲ですので、昔の感覚で言うとダブルアルバム、二枚組にも相当するボリュームです。

いわゆるネオ・ソウルですが、ソフト&メロウだけではなく、ヒップホップを経た、新しい時代のR&Bという感じがします。

中でも異彩を放っているのが、"Wish I Didn't Miss You" です。O'Jays の "Back Stabbers" を大胆にフィーチャー、というか、 "Back Stabbers" のオケをバックに、別歌を歌ってる、なかなか面白い曲です。全部コードを合わせたんかな?("What they doin?" が欲しい!)

曲数が多いだけあって、全部集中して聞くのは難しいですが、後半のボーナストラック "Brotha Pt.2" がまた盛り上がります。こちらは Alicia Keys をフィーチャしたリミックスバージョンですが、本編の "Brotha" よりカッコいいです。

2016年11月5日土曜日

Day Breaks / Norah Jones (2016)

ジャズから始まり、カントリー、ポップ、そして前作 "...Little Broken Hearts" では、ロックというかオルタナティブまで行った Norah Jones ですが、一周回ってジャズに帰って来ました。

といっても、ディープなモダンジャズもありますが、ポップでロックななジャズもあり、深みを増してるんですよね。
Shorter のソプラノ・サキソフォンが泣かせます。

"Feels Like Home" に並ぶフェイバリットになりそうです。

2016年10月30日日曜日

Fantôme / 宇多田ヒカル (2016)

以前より、より生身感が出ています。
この6年間の経験が生きているのか、曲調、歌詞とも、以前には見られなかったものが多いように感じました。
何か、ジョン・レノンか桑田佳祐のソロを聞いているような感じ。

アルバムを聴こうと思ったきっかけは「ともだち」を聴いたから。同性愛者の歌ですが、歌詞に共感したわけではなく、珍しくホーン・セクションを使ったアレンジが面白いなあと思ったからです。アルバムの前半はストリングス・レンジが多いのですが、後半はホーンも使っています。

以前のような、メロディーラインと歌詞で決める、というのではなく、なんでしょうね、アプローチの幅が広がったというか、私的で生なものを表現できるようになった、というか。
従来路線のハイライトは「花束を君に」です。名曲です。

いずれにせよ、売れることを狙ったわけではないような気がするので、これだけ売れているのが不思議に思います。

2016年10月22日土曜日

You've Got It Bad Girl / Quincy Jones (1973)

ハーモニカのサウンドが印象に残ります。
Toots Thielmans だけではありませんが、ほとんどの曲でハーモニカが使われています。

アルバムの前半は、ゆっくりしたペースで始まりますが、終盤にかけてカラフルな曲が多くなるところは、アルバム全体でゴスペルの構成になっているかのようです。

終わりの2曲 "The Streetbeater" と "Chump Change" が Quincy Jones らしいなって感じます。
'70年代を通じて、Pop / R&B路線を深化させてきたわけですが、ここでは途中経過といったところでしょうか。今になって思えば、発展途上のようです。

2016年10月16日日曜日

Something to Believe In / Curtis Mayfield (1980)

前作 "Heartbeat" に続く、'80年代最初の作品。前作ほどシンセサイザーは多用していません。
あいかわらず、すばらしい出来です。

1曲目のベースラインが特徴的でダンサブルな "Love Me, Love Me Now" 、スローナンバーの2曲目を挟んで、 Bunny Sigler のフィリー・ソウル "Tripping Out" につながるあたりは、カッコいいですね。

ジャケットもなかなかです。女性DJが、 "And Here's..." と紹介するのが、このレコード。これからターンテーブルに乗せようとしています。

社会的メッセージをバリバリ出していた’70年代前半から後は、商業的には成功せず、苦しい時期だったと思いますが、'76~'80のアルバムはいい曲ばかりで、マチュア・イヤーズのようにも思います。

2016年10月9日日曜日

Free / Free (1969)

記念すべき1969年作。

何と言ってもジャケットが素晴らしい。
Ron Raffaelli の写真だそうです。
対角線に女性の足を配置して、背景に青空と雲。飛び上がるような手の先には "Free" の文字。しかも、体には星空まで表現しています。
Ron Raffaelli という人は、Jimi Hendrix のツアー写真で有名で、ロックミュージックのジャケットもいくらか手掛けているようですが、ダントツでこのジャケットがいいですね。

肝心の音楽の方も、ブリティッシュ・ブルーズ全開、という感じですが、売れた次作よりいいんじゃないでしょうか。
派手ではなく、ハードすぎず、ブルーズ傾向が強く、好感が持てます。

2016年10月2日日曜日

This Is Sparrow / Mighty Sparrow (1958)

カリプソって、リトルマーメイドの音楽のイメージで、スティールパン=カリプソ、という間違ったイメージを持ってました。

Mighty Sparrow がトリニダードのカーニバルでカリプソ・キングになったのは1956年。その2年後になります。

サウンドがカッコいい。詩もカッコいい。

2016年9月25日日曜日

The Unique Thelonious Monk (1956)

Riverside でのセカンドアルバムとなります。

Orrin Keepnews のプロデュースのもと、ファーストの "Plays Duke Ellington" 同様、オリジナルの曲はなく、すべてスタンダードです。
したがって、曲の良し悪しではなく、演奏に集中、ということになります。
Monk の魅力は、いくつもの傑作曲を作り出したメロディメーカーとしての才能ももちろんですが、独特なピアノの音色にもあり、その演奏力を十分に生かそう、ということでしょう。
ピアノ(Monk)、ベース(Oscar Pettiford)、ドラムス(Art Blakey)という最小限のコンボで、Monk のピアノ演奏の魅力がよく出ています。

リリカルというより打楽器に近いタッチ、シングルトーンでもブロックコードでもときに微妙にずれる音階。
唯一無二、アルバムタイトル通り、ユニークですよね。
素晴らしい!

2016年9月19日月曜日

Maxwell's Urban Hang Suite / Maxwell (1996)

ベースラインが効いています。題名通りアーバンなアルバムです。

ほとんどミッドテンポで、曲の違いがはっきり分からないのも特徴です。
もちろんよく聴くと、それぞれ際立ってますが。

Neo Soul ムーヴメントの代表と言ってもいいでしょう。

Maxwellの中では一番好きです。

2016年9月11日日曜日

Sing to the Moon / Laura Mvula (2013)

ユニークですね。
アップテンポの曲が少ない、とレコード会社からダメ出しを受けたほど、スローでシンプルな曲が多いです。
かといって、暗いわけではなく、カラフルではあります。

全体的にジャズやR&Bより、クラシックの影響が強いように感じます。
それともアカペラか。

それにしても、"m"で始まる名前って、やっぱりアフリカ系に多いんですかね。
ンヴーラ or ムヴーラ、いずれにしても名前呼びにくいですよね。

2016年9月4日日曜日

De Ti Depende (It's Up to You) / Héctor Lavoe (1976)

前作 La Voz に続き、Willie ColónRubén Blades のバックアップを受けた第2弾です。

名作と呼ぶのにふさわしく、いい曲が揃っています。
少しスローな曲が多いでしょうか。

それにしてもこのジャケットの存在感すごいですね。正直、買うのがためらわれます。

2016年8月28日日曜日

Captured Alive / Toots Thielemans (1974)

夏の夕方から夜に、ハーモニカのさわやかな音色を。

内容は典型的な4ビートのモダン・ジャズです。
Toots Thielemans のハーモニカが少し浮いているようにも感じますが、ハーモニカにはスローな曲が合っているような気がします。

暑い香港のハーバー。

2016年8月7日日曜日

Born Under a Bad Sign / Albert King (1967)

ロックテイスト、あるいはソウルテイストにより、入りやすいアルバムだなあと思いました。
Stax レコードのハウスバンドである MG's をバックにレコーディングしているので、それもそのはず、納得です。
ただ、やはり基礎になっているのは、確かなギタープレイで、派手すぎず、曲に寄り添っています。ブラスがいるのか、という感じもします。

この時代の音楽は、ロックカルチャを抜きには語れません。Otis Redding が売れたのは、ロック・オーディエンスに受け入れられたからだし、Miles Davis はロックの売れるパイに驚き、ロックに近づいていきました。また、イギリスのロックミュージシャンの、ブルーズ好きも、人々の目をブルーズに向けさせる一因にもなったことでしょう。
そういう意味では、このアルバムもうまく機を捉えたもの、と言えますし、Albert King の活躍自体も、時流に乗ったものという印象です。

混血に美人が多い。ブルーズとロックとソウルを融合した本作は、名作です。

2016年7月30日土曜日

Big / Macy Gray (2007)

ipodのパッケージが印象に残ってます。

will.i.am がプロデュースということで、ところどころに彼のポップ・センスが現れます。
ロックテイストあり、ポップあり、テクノあり。

思えば前作は傑作でした。前作のような素晴らしい曲が少ないのが残念ですが、Macy Gray の声は変わりません。ハスキー、スモーキー、潰れた.....どれも当たっていますが、どれも正しくありません。ずっとこの声だけは変わりません。
天賦の才能って言うんですかね。

2016年7月26日火曜日

Indestructible / Ray Barretto (1973)

何といっても、スーパーマンシャツのジャケットですよね。
こんなおっさん、おらんわな。
タイトルは「不死身」、だからスーパーマン?

ジャケットで何を言いたいのかは別として、内容は素晴らしいです。
キューバのソンやチャランガ、ルンバを取り入れた曲もあったり、サルサ全開の曲があったりですが、どの曲もクオリティが高いです。
傑作と言われるのも分かります。

Tito Allen の哀愁あるヴォーカルも冴えてますが、コンガもタイトに曲を絞めています。
Good!

2016年7月17日日曜日

Caricatures / Donald Byrd (1976)

名作 "Places & Spaces" に続く Mizell Brothers プロデュースによる Blue Note 最後の作品です。

ファンクよりも少しダンス寄りになっており、 Mizell Brothers の神通力も少し弱くなっているように思いますが、これはこれでアリです。一曲目 "Dance Band"のノリとヴォーカルがカッコいいですね。
シンセの多用もよいと思います。

Gary Bartz, Harvey Mason, David T. Walker と豪華なメンバーです。

2016年7月9日土曜日

Sally Can't Dance / Lou Reed (1974)

Lou Reedのソロ作としては一番売れたようです。
1972年"Transformer"、1973年"Berlin"に続く本作だけに期待が高かったんでしょうね。

一般的評価としては、まとまりのない印象、ということだそうですが、いい曲が多くあり僕は好きです。
70年代というのはコンセプトアルバム症候群じゃないかと思います。聴く方はその方がいいのかもしれませんが、ロックってそうじゃないんじゃないの、と思います。

ヘビー・ギターサウンドあり、ブラスサウンドあり、アクースティク・ギター・バラードあり、なかなかの意欲作だと思います。

2016年7月2日土曜日

The Way I See It / Raphael Saadiq (2008)

ヴィンテージ・レトロ。60年代ソウルの雰囲気を忠実に再現しています。
60年代の録音技術がよかったらこんな感じになるのかな、と思わせます。

いい曲が多く、アレンジもカッコいいです。
"Never Give You Up"はStevie Wonderが参加していますが、ハーモニカが最高です。

Phill Colinsのモータウン完コピアルバムはあまり積極的に聴く気がおきませんが、これもオリジナリティの追求というよりは、既にあるものの再現ですので、ある意味一緒かもしれませんね。

2016年6月25日土曜日

Esso / The Esso Trinidad Steel Band (1971)

20世紀最大の楽器の発明と言われるスティールパン。

カーニバルでの荒々しいドラミングとは違い、トロピカル感を演出したアルバムです。

Essoの名前パクってるやん、と思ってましたが、パクってるんじゃなくて、Essoがスポンサーになっているんですね。
もともと"Tripoli Steel Band"というスティールバンドのオリジネイターに、国民の人気を高めるためにオイルメジャーがスポンサーになって、名前も変えた、ということのようです。そろいのEssoのTシャツを着て、ポップミュージックを奏で、世界中を回る。
1960年代のスティールバンドの変節を絵に描いたような活躍です。

スティールパンによるトロピカル音楽の入門には分かりやすくていいんじゃないでしょうか。