2024年12月29日日曜日

Surprises / Herbie Mann featuring Cissy Houston (1976)

Cissy Houston が10月に亡くなったので、追悼で聴いてみました。
娘も孫も麻薬で亡くしてしまって、本当につらい人生だと思います。元は一家に広まった麻薬の習慣だったわけですが、Cissy がどこまで関わっていたのかは知りません。
Whitney と違って Cissy はふくよかなイメージでしたが、きっと健康だったんでしょう。
御年91歳。

彼女のリーダー作ではなく、フルート奏者 Herbie Mann の'76年のリーダー作ですが、アルバムの半分以上を Cissy Houston が歌っています。
'76年ということもあって、フュージョン・サウンドですが、Cissy Houston のあっさりとした歌いぶりが不意―ジョンに合っています。

実は Herbie Mann 自体聞いたことがなく、クラシック・ジャズのイメージでしたが、このアルバムのサウンドは、実にコンテンポラリーです。
アルバムの最初の方は、ポピュラーミュージックのカバーで、フュージョンとしてうまくアレンジしています。

#1 "Draw Your Breaks" はレゲエ。ジャマイカで録音されています。"Draw Your Breaks" は '72年のサウンド・トラック "The Harder They Come" に入っていたので、Herbie Mann もそれを聴いたんでしょう。"The Harder They Come / Draw Your Breaks" のアーティスト Scotty は Keith & Tex の '67 のロック・ステディ "Stop That Train" をベースにサンプリングしているわけですが、こちらのオリジナルは '65 The Spanishtonians のスカのようです。"Stop That Train" は Bob Marley のものも有名ですが、そちらは「俺は出ていく」というものに対して、こちらは「彼女が乗った列車を止めてくれ」というラブソングになっています。
#2 "Cajun Moon" は J.J. Cale のカバー。'74 年のサード・アルバム "Okie" 収録になります。
#3 "Creepin" は '74 の Stevie Wonder "Fulfillingness' First Finare" の中の一曲。
この1曲目から3曲目までが最強ですね。

#6,7,8 はインスト曲。#6, 8, 9 は '74 年春の日本公演中の東京で録音され、#6, 8 は和楽器アンサンブルとの共演となっています。最初違和感がありましただが、もともとフルートは和楽器的なエッセンスを持っているので、まあそこそこ合ってるのかなとも思います。

アルバムタイトルは "Surprises" ですが、一番驚いたのは最後の曲 "9 "Anata (I Wish You Were Here with Me)" です。小坂明子の '74 年のヒット曲 "あなた" を取り上げており、小坂明子自身も歌で参加しています。
Herbie Mann も何が気に入ったのやら。アルバムの中でもひときわ異彩を放っています。

アルバムは、ポピュラー・ミュージックのカバーから入り、日本音楽を取り入れ、日本のポップスで終わるという、とりとめのない構成となっていますが、全体的になサウンドは好きな方です。


  1. Draw Your Breaks
    • Alto Flute : Herbie Mann
    • Bass : Jackie Jackson
    • Drums : Michael Richard
    • Guitar : Hux Brown, Rod Bryan
    • Keyboards : Pat Rebillot
    • Organ : Winston Wright
    • Piano : Gladstone Anderson
    • Tenor Saxophone : David Newman
    • Vocals : Cissy Houston, Eunice Peterson, Rannelle Braxton
    • Written by D. Scott, Derrick Harriot
  2. Cajun Moon
    • Bass : Tony Levin
    • Bass Flute, Flute : Herbie Mann
    • Drums : Steve Gadd
    • Guitar : Hugh McCracken, Jerry Friedman
    • Keyboards : Pat Rebillot
    • Percussion : Armen Halburian, Ralph MacDonald
    • Tenor Saxophone : David Newman
    • Vocals : Cissy Houston
    • Written by J.J. Cale
  3. Creepin'
    • Bass : Tony Levin
    • Drums : Steve Gadd
    • Flute : Herbie Mann
    • Guitar : Bob Mann, Jerry Friedman
    • Keyboards : Pat Rebillot
    • Percussion : Armen Halburian, Ralph MacDonald
    • Tenor Saxophone : David Newman
    • Vocals : Cissy Houston
    • Written by Stevie Wonder
  4. Easter Rising
    • Bass : Bob Babbitt
    • Cello : Charles McCracken, Jesse Levy
    • Drums : Rick Marotta
    • Flute : Herbie Mann
    • Guitar : Bob Mann, Jerry Friedman
    • Vocals : Cissy Houston
    • Percussion : Armen Halburian
    • Viola : Emanuel Vardi, Richard Maximoff
    • Violin : David Nadien, Gene Orloff, Guy Lumia, Richard Sortomme
    • Written by Pat Kirby
  5. Asa Branca
    • Bass : Tony Levin
    • Drums : Rick Marotta
    • Flute : Herbie Mann
    • Guitar : Bob Mann, Jeff Mironov
    • Keyboards : Pat Rebillot
    • Percussion : Armen Halburian, Rafael Cruz, Sammy Figueroa
    • Vocals : Cissy Houston
    • Written by Oliverra, Teixeira, Gonzaga
  6. The Sound Of Windwood
    • Bass : Tony Levin
    • Drums : Steve Gadd
    • Guitar : Sam Brown
    • Keyboards : Pat Rebillot
    • Percussion : Armen Halburian
    • 尺八 : 村岡実
    • 琴 : 蔵元エリ子, 鍔本和子, 中丸春美三味線 : 佐々木壮明
    • 笙 : 佐藤要征
    • 和太鼓 : 堅田影輝
    • 大太鼓 : 堅田啓輝Flute : Herbie Mann
    • 鼓 : 藤舎清晃
    • Flute : Herbie Mann
    • Written by Herbie Mann
  7. Cricket Dance
    • Bass : Tony Levin
    • Drums : Steve Gadd
    • Guitar : Bob Mann, Jerry Friedman
    • Keyboards : Pat Rebillot
    • Percussion : Armen Halburian
    • Flute : Herbie Mann
    • Written by Herbie Mann
  8. The Butterfly In A Stone Garden 石庭に舞う蝶
    • Bass : Tony Levin
    • Drums : Steve Gadd
    • Guitar : Bob Mann
    • Keyboards : Pat Rebillot
    • Percussion : Armen Halburian
    • 琴 : 蔵元エリ子, 鍔本和子, 中丸春美三味線 : 佐々木壮明
    • 笙 : 佐藤要征
    • 和太鼓 : 堅田影輝
    • 大太鼓 : 堅田啓輝Flute : Herbie Mann
    • 鼓 : 藤舎清晃Written by Herbie Mann
    • Flute : Herbie Mann
    • Written by Herbie Mann
  9. Anata (I Wish You Were Here With Me) あなた
    • Bass : Tony Levin
    • Drums : Steve Gadd
    • Flute : Herbie Mann
    • Guitar : Jerry Friedman
    • Keyboards : Pat Rebillot
    • Percussion : Armen Halburian
    • Vocals : 小坂明子
    • Written by 小坂明子


  • #1 recorded at Dynamic Studios, Jamaica
  • #1, 4, 5, 8 recorded at Media Sound Studios N.Y.
  • #2, 3, 5, 7, 9 recorded at Atlantic Recording Studios, N.Y.
  • #6, 8, 9 recorded at Mori Studios, 東京, 日本


2024年12月22日日曜日

Steps Ahead / Steps Ahead (1983)

グループ名を、”Steps“ から "Steps Ahead" に改名してからの最初のアルバム。
ドラムスが、Steve Gadd から Weather Report をやめたばかりの Peter Erskine に、ピアノが Don Grolnick から、ブラジルから来た美人ピアニスト Eliane Elias に代わっています。
ジャケットは、5人の男たちが1人の女性を運んでいる?図。バンドが Eliane Elias そフィーチャしている様子と重なります。
ブラジルから N.Y. に来た彼女は最初にベーシストの Eddie Gómez に認められますが、それがすなわち Steps Ahead への参加となったのでしょう。
しかし、サウンド的には彼女が前面に立っているわけではなく、やはり中心はテナー・サクソフォンの Michael Brecker であり、ヴィブラフォンの Mike Mainieri です。

Michael Brecker の流れるような、重すぎず軽すぎないサックスは、本当に聴いていて気持ちのいいものです。
一方で、僕が Steps Ahead のサウンドが好きな1番の理由は、やはりヴィブラフォンなんですね。
Mike Mainieri は自分のヴィブラフォンがどんなサウンドと合っているのかをよく知っていて、そのサウンドのためのバンドを作っているようにも思えます。
このアルバムでの Steps Ahead は前作までの流れを引き継ぎアコースティックですが、ヴィブラフォンが不思議とエレクトリカルな表情を見せてるんですよね。


  1. Pools [Don Grolnick]
  2. Islands [Mike Mainieri]
  3. Loxodrome [Eddie Gómez]
  4. Both Sides of the Coin [Brecker, Mainieri]
  5. Skyward Bound [Mainieri]
  6. Northern Cross [Peter Erskine]
  7. Trio (An Improvisation) [Brecker, Gómez, Mainieri]


  • Michael Brecker : tenor saxophone
  • Mike Mainieri : vibraphone, synthesizer vibes, marimba, synthesizer, percussion
  • Eliane Elias : piano
  • Eddie Gómez : bass
  • Peter Erskine : drums


2024年12月14日土曜日

PRIVATE / iri (2023)

iri の名前はあちこちで聞いていたんで、今回改めて聴いてみました。

女性ヴォーカルとしては、ロートーンでユニークですよね。
ラップシンガーということもあり、ラップの言葉数と相まって中低音で押してくるようなプレッシャーを感じます。

アルバムの前半は、ダンサブルな曲が並びます。
#2 "STARLIGHT" はこのアルバムの中でも一番ポップです。
The Weeknd の "Starboy" を思い出しました。サッポロ黒ラベルの "Star Lyrics" 企画タイアップ曲だそうですが、TV CM とかじゃなくて WEB サイトの企画のようです。どうりで知らんわけです。

後半はスローな曲が多くなりますが、実はこっちの方がお気に入りだったりします。
#8 "moon" から #9 "boyfriend" と続くあたりはこのアルバムの個人的ハイライトです。


  1. Season [Esme Mori]
  2. STARLIGHT [Esme Mori]
  3. Roll
  4. DRAMA [Yaffle]
  5. Go back [Kazuki Isogai, edbl]
  6. friends [Grooveman Spot]
  7. moon [Taar]
  8. boyfriend [Taar]
  9. private [Aso]


[ ] Co-producer, Composer


2024年12月8日日曜日

Don't Sleep on Us / Junk Yard Band (1991)

The Junk Yard Band は1980年に結成された、ワシントンD.C.の Go-Go バンドです。
結成当時は全員子供だったそうで、楽器を買うお金もなく(楽器もできず?)、身近な缶やフライパンで即興「演奏」していたそうです。
なので、基本的には打楽器バンドなんですね。
僕のワシントン Go-Go の一番好きなところは、パーカッションの多用なんですが、それを体現してくれていて嬉しい限りです。

LP では曲がメドレーになっていて、A面24分の1曲、B面24分と4分の2曲で構成されていたようです。これまたワシントン Go-Go らしい。

曲調は少しトボけたところがあって、キーボードなんかはユーモアを感じさせます。

Junk Yard って人の名前かと思ってましたが、"Fat Albert and the Cosby Kids" というテレビ番組の中のバンド "The Junk Yard Gang" から来てるみたいですね。


  1. Let Us Get On Down
  2. Cold Crankin'
  3. Heavy One
  4. Make No Fuss
  5. Ha Ha, Yuck Yuck Yuck Yah
  6. I Want to Be Loved
  7. (You're) Jigglin' Baby
  8. Tear the House Down
  9. Take Me Out to See Junkyard


2024年12月1日日曜日

T-Bone Blues / T-Bone Walker (1959)

たまにブルーズが聴きたくなるんですよね。
で、聞いたことのない T-Bone Walker。
名前はもちろん聞いたことあって、多分曲も聴いたことがあるんですが、アルバムとしてじっくり聴いたのは初めて。

エレクトリック・ギター・シカゴ・ブルーズという先入観があったんdすが、結構ピアノやホーン・セクションが入って、ゴージャスな感じを受けました。

"Call It Stormy Monday (But Tuesday Is Just as Bad)" がブラック&ホワイト・レコードから出されたのが1947年。日本で言うと、戦後すぐですね。
このアルバムに入っている虚無のいくつかもこの頃にリリースされています。

その後契約したアトランティックは、シカゴ・ブルーズ・プレーヤーをバックにこのアルバムを作りましたが、もちろん "Call It Stormy Monday“ や “T-Bone Shuffle“ といった有名曲も再録しました。

50年代とは思えないほど、音がクリアで、割れてません。アトランティックの素晴らしいところでしょう。

僕はエレクトリック・ギターを弾かないし、もちろんギター・ソロもできないので知らなかったのですが、T-Bone Walker のギター・プレイは今や全てのロック・ギターの基本になっているそうです。

エレクトリック・ギターをブルーズに取り入れた先駆者であり、今も使われるテクニックを開発し、特定のキメソロのフレームを作った、ギター界のパイオニアだそうです。
B.B. King から Eric Clapton やヘビー・メタルや B‘z に至るまで、T-Bone Walker の影響下にないロック系のギタリストはいないみたいです。

オリジナルのブラック&ホワイト時代のものも聴きたくなりました。


  1. Papa Ain't Salty [Grover McDaniel, T-Bone Walker]
  2. Why Not
  3. T-Bone Shuffle [T-Bone Walker]
  4. Play On Little Girl [T-Bone Walker]
  5. T-Bone Blues Special [Aaron Walker]
  6. Mean Old World [Michael H. Goldsen*, T-Bone Walker]
  7. T-Bone Blues [Les Hite]
  8. Call It Stormy Monday [T-Bone Walker]
  9. Blues For Marili [T-Bone Walker]
  10. Shufflin' The Blues [T-Bone Walker]
  11. Evenin' [Harry White, Mitchell Parish]
  12. Two Bones And A Pick [T-Bone Walker]
  13. You Don't Know What You're Doing [Ace Adams, Horace Holmes]
  14. How Long Blues [Leroy Carr]
  15. Blues Rock [T-Bone Walker]


  • Bass : Billy Hadnott, Joe Comfort
  • Drums : Earl Palmer, Os.car Bradley
  • Guitar : Barney Kessel, R.S. Rankin
  • Guitar, Vocals : T-Bone Walker
  • Piano : Lloyd Glenn, Ray Johnson
  • Tenor Saxophone : Plas Johnson
  • Producer : Nesuhi Ertegun

On "Two Bones And A Pick," R. S. Rankin plays the first guitar solo; Barney Kessel plays the second guitar solo; T-bone Walker plays the third guitar solo. The order of guitar solos is the same on "Blues Rock." The guitar solos on "Evenin'" are played by T-Bone Walker.