2024年6月22日土曜日

Dummy / Portishead (1994)

アルバム通してダウン・テンポです。
ロー・ファイ・サウンドに Beth Gibbons のヴォーカルがマッチしていて、いいサウンドを構成しています。
ある種心地よさを感じますが、一方でなんとも言えない不安や不穏さも感じさせます。
後に、トリップホップと呼ばれるダウン・テンポ・ビートの代表とみなされるようになりました。

Portishead というのは、中心メンバーの Geoff Barrow の出身地で、ブリストルの西にある港湾都市だそうです。
1991年に Barrow と Gibbons によってブリストルで結成されました。
Barrow はスタジオのエンジニアで、Massive Attack や Tricky との仕事を通じて、このダウン・テンポのサウンドのヒントを得たようです。
Gibbons はブリストルのパブで Bryan Adams のコピーを歌っていたということですから驚きです。Barrow と音楽的嗜好が合っていたのかどうかは知りませんが、ヴォーカルはこのサウンドにはベスト・マッチです。


  1. Mysterons
    • Theremin : Adrian Utley
  2. Sour Times
    • Rhodes, Hammond Organ : Neil Solman
    • Written by : H Brooks, L Schifrin, O Turner
  3. Strangers
    • Written by : W.Shorter
  4. It Could Be Sweet
    • Drum Programming : Richard Newell
  5. Wandering Star
    • Drums : Geoff Barrow
    • Hammond Organ : Gary Baldwin
    • Written by : M. Dickerson, C. W. Miller, H. R. Brown, H. Scott, J. Goldstein, L. Oskar, L. Jordan, S. Allen
  6. t's a Fire
  7. Numb
    • Hammond Organ : Gary Baldwin
  8. Roads
    • Strings Arrangement : Adrian Utley, Geoff Barrow
    • Rhodes : Neil Solman
    • Nose Flute : Dave McDonald
    • Strings : Adrian Utley, Strings Unlimited
  9. Pedestal
    • Trumpet : Andy Hague
  10. Biscuit
    • Written by : J. Ray
  11. Glory Box
    • Hammond Organ : Adrian Utley
    • Written by : I. Hayes


  • Program, Electric Piano (Rhodes) : Geoff Barrow
  • Guitar, Bass : Adrian Utley
  • Drums : Clive Deamer
  • Vocals – Beth Gibbons
  • Writer : A. Utley, B. Gibbons, G. Barrow
  • Producer : A Utley, Portishead


2024年6月15日土曜日

Live In NY 1991 / Whitney Houston

2nd アルバム "Whitney" は彼女に莫大なセールをもたらしましたが、自身のルーツである黒人コミュニティには散々な受けでした。
ライブでのブーイングが彼女を苦しめたと言います。

起死回生として出したのが 3rd アルバム "I'm Your Baby Tonight"。
プロデューサーに L.A. Reid & Babyface を迎え、本格的に黒人コミュニティ向けにアルバムを作ろうとしました。
アルバムジャケットもモノクロームで、派手さはありません。
曲もキャッチーさ、ポップさ、あるいはファーストアルバムのような白人マーケット目線は控え目です。
ただ、そこは Clive Davis のこと、売れることが前提のアルバムにはなってます。

3rd アルバムが出た後、Whitney はアルバムタイトルと同名のワールドツアーに出ます。
このアルバムは、そのツアーの U.S. での終盤、N.Y. マディソン・スクエア・ガーデンでのライブの様子を捉えています。
地元 FM、WNEW 用の音源が元になっているようです。

メドレーも合わせると、1stから3曲、2nd から3曲、3rd から5曲、ライブ用のカバー2曲の構成ですが、後半に集中させた 3rd の曲で盛り上がる仕掛けになっています。
"Anymore" なんかはアルバムでは目立たない曲でしたが、ライブでは盛り上がるファンクチューンになっています。

リラックスしたトークとこなれた歌い回し、客席の声援も効果的に取り入れて、まだ若く、初期の絶頂期のパフォーマンスを感じることができ、素晴らしいライブパフォーマンスになっています。


  1. I Wanna Dance With Somebody (Who Loves Me)
  2. Saving All My Love For You
  3. How Will I Know
  4. Love Medley : Didn't We Almost Have It All / A House Is Not A Home / Where Do Broken Hearts Go
  5. All The Man That I Need
  6. My Name Is Not Susan
  7. Anymore
  8. A Song For You
  9. Who Do You Love
  10. I'm Your Baby Tonight
  11. Greatest Love of All


  • Musical Director : Ricky Minor
  • Bass Guitar, Bass Sythesizer : Ricky Minor
  • Guitar : Ray Fuller
  • Keyboard : Michael Bearden, Bette Sussman, Kevin Lee
  • Saxophone : Kirk Whale
  • Drums : Ricky Lawson
  • Percussion : Bashiri Johnson
  • Background Vocalists : Gary Houston, Vonchita Rawls, Carmen Rawls, Tiawana Rawls
  • Dancers : Diesko Boyland, Bryant Cash-Welch, Jonathan Webbe, Luca Tommassini


Recorded July 23, 1991 at Madison Square Garden, New York City


2024年6月10日月曜日

The Gil Evans Orchestra Live at Fabrik Hamburg 1986 (2022)

Gil Evans はこの年、2度のヨーロッパツアーを行いましたが、今回の録音は2回目の10月のツアー時のものです(1回目は5月)。ちなみに5月のツアーの様子は "The Honey Man" に収められています。

"Fabrik" というのは、ハンブルクのイベント会場で、機械加工工場跡地をそのままの形で利用している場所だそうです。記念にクレーンがそのまま残されているという。Factry ですね。
アルバムジャケットでは、ステージに鉄骨が組まれていますが、演出ではなく、そういう理由によるものです。
比較的若い層向けのイベント会場らしく、このライブも少し若い人が多かったのかもしれません。

そのせいかどうか分かりませんが、Jimi Hendrix の曲を、全8曲中4曲も取り上げています(他はキーボードの  Pete Levin および Delmar Brownの曲、Tony Williams の曲、自作)。
Jimi Hendrix の曲とは言うものの、最近は Gil Evans アレンジのものしか聴かないので、もうオリジナルを聴いても分からないかも。

そしてなんと、Weather Report の "Birdland" も "There Comes A Time" からのメドレーで取り上げてます。若い層へのサービスでしょうか。初めて聞きました。

"Birdland" 以外はお馴染みのレパートリーなんですが、今回のライブのアレンジも素晴らしいです。
さすがアレンジャー、今まで聴いたのとはまた違ったアレンジが施されています。
色んなアレンジをして、それをバンドが消化していっていることに素直に感動しました。

さらに、録音がいい!
綺麗に録音されていて、アレンジ、ソロも最高。
傑作ライブと言っていいんじゃないでしょうか。

最後、メンバー紹介を Miles Evans が行なっているんですが、残念ながら半分より前はマイクが入ってなかったのか聞き取れません。マイクが入って以降は、
"Delmar Brown on DX7 Synthesizer, Hiram Bullock on Guitar, Shunzo Ohno on Trumpet,  Lew Soloff Trumpet, David Bargeron on Tenor Trombone, Mark Egan on Bass, Bass Trombone David Taylor, Victor Lewis on the Drums, Marilyn Mazur on Percussion, Pete Levin on DX7 Synthesizer, my name is Miles Evans, Leader Gil Evans"
という順で紹介されてます。席順でしょうか。
16人編成なので、残り4人が前半で紹介されてたんでしょうね。資料によるとサックス陣 alto Chris Hunter, tenor Bill Evans, baritone  Howard Johnson にフレンチホルンの John Clark でしょう。ジャケットではサックス陣が最前列にいそうです。


  1. Stone Free [Jimi Hendrix]
  2. Up From The Skies [Jimi Hendrix[
  3. Little Wing [Jimi Hendrix]
  4. Subway [Pete Levin]
  5. There Comes A Time & Birdland [Anthony "Tony" Williams & Joe Zawinul]
  6. Sometimes [Delmar Brown]
  7. Voodoo Chile [Jimi Hendrix]
  8. Orgone [Gil Evans]


  • Trumpet : Lew Soloff, Miles Evans, Shunzo Ohno
  • Alto Saxophone : Chris Hunter
  • Baritone Saxophone : Howard Johnson (3)
  • Tenor Saxophone : Bill Evans
  • Trombone :David Taylor
  • Trombone, Tuba : David Bargeron
  • French Horn : John Clark
  • Piano : Gil Evans
  • Synthesizer : Pete Levin, Delmar Brown
  • Guitar : Hiram Bullock
  • Bass : Mark Egan
  • Drums : Victor Lewis
  • Percussion : Marilyn Mazur
  • Vocals : Delmar Brown


Recorded October 26, 1986 at the FABRIK, Hamburg


2024年6月2日日曜日

Welela / Miriam Makeba (1989)

南アフリカ出身の歌手、Miriam Makeba が89年に出したアルバムです。
30年代生まれの人生は、アパルトヘイトが色濃く影を落としていたようです。
また、人生の初期には、若くして子供を授かり、乳がんも経験しています。
60年代にアメリカで評価され、グラミー賞にも選ばれます。主に南アフリカ以外での活動を中心にせざるを得なかったようです。

南アフリカがアパルトヘイト撤廃方針を出したのが1991年ですから、このアルバムはそれ以前になります。
ベルギーとイギリスに行って録音されてます。

60年代にヒットしたものの焼き直しが多く収録されている印象ですが、アレンジ、録音がモダンになっていて、80年代後半のワールドミュージックらしい、聞きやすいアレンジになっています。

何曲か英語バージョンの曲もありますが、英語じゃない方が趣がありますね。


  1. Amampondo [M. Makeba]
  2. African Sunset [S. Mabuse]
  3. Djiu De Galinha [J.C. Scwartz]
  4. A Luta Continua [M. Makeba]
  5. Soweto Blues [H. Masakela, S. Todd]
  6. Welela [Nelson Lee]
  7. Hapo Zamani [D. Masuka*, M. Makeba]
  8. Pata Pata [ M. Makeba]
  9. Saduva [ M. Makeba]
  10. Africa [K. Mathela]


  • Vocals, Backing Vocals : Miriam Makeba
  • Backing Vocals : Doreen Webster, Dorothy Masuka, Sipho Mabuse
  • Bass : Emmanuel "Chulo" Gatewood
  • Drums : Damon Duewhite
  • Percussion : Smith Haliar
  • Piano, Keyboards : Louis Laguerre
  • Guitar : Keith Matthew
  • Trumpet : Claude Deppa
  • Saxophone : Mike Rose
  • Producer :  Sipho Mabuse, Roberto Meglioli
  • Recorded at ICP Recording Studios and Raezor Studios


2024年5月26日日曜日

猫とアレルギー / きのこ帝国 (2015)

メジャー移籍後第一弾アルバムだそうです。
確かにEMI。
一つ前の「フェイクワールドワンダーランド」はレコード会社がUKプロジェクトだったようです。(ちなみに"UK"というのは英国のことじゃなくて "Unknown" 知られざる者を見つける、という主旨だそうで、野球の独立リーグの精神に近いのかもしれません。

で、メジャー、ということで、見事にポップになっています。見事にインディーズ感は払拭されています。
曲を作っている佐藤千亜紀も、多くの人が聞くようになることを意識したようなことを言っています。
賛否両論あるのかもしれませんが、バンドが成長していく上で、ポップさの獲得は必須でしょう。
逆にポップを感じさせる曲を作ることができなければ、おそらくバンドは終わっていくような気もします。

「猫とアレルギー」という曲が先にできていて、この曲の色でアルバムを作りたいと思ったそう。なんで、アルバムタイトルも「猫とアレルギー」。
アルバムに先行して「桜が咲く前に」を春にシングルで出して、秋にアルバム。
「フェイクワールドワンダーランド」で膨らんだ期待をシングルで繋げて、アルバムでしっかり期待に応えました。

ちなみに「桜が咲く前に」は青春の旅立ちの歌で、メジャーへの移籍の飛翔感も表しているのかもしれません。MVは佐藤の地元の岩手・盛岡が舞台になっています。ここから出て東京へ。

一番ポップなのは「怪獣の腕のなか」で、好きです。ループのキーボードが印象的ですが、「猫とアレルギー」といい「怪獣の腕のなか」といい、ストレートな表現じゃないところがいいですね。


  1. 猫とアレルギー
  2. 怪獣の腕のなか
  3. 夏の夜の街
  4. 35℃
  5. スカルプチャー
  6. ドライブ
  7. 桜が咲く前に
  8. ハッカ
  9. ありふれた言葉
  10. Youthful Anger
  11. 名前を呼んで
  12. ひとひら


  • 佐藤千亜妃:Vo. G. 作詞作曲
  • あーちゃん:G.
  • 谷口滋昭:B.
  • 西村"コン":D

2024年5月18日土曜日

Livin' Large / E.U. (1989)

D.C. Go-Go の中でもポップ、R&B 寄りのバンド、E.U. の89年のアルバムです。

これを聴くと、Go-Go とラップが近い存在だったことが分かります。
Isley の "It's Your Thing" を下敷きにした "Shake Your Thang" は大胆にラップを取り入れてますし、"Shaka Zulu" もラップです。
ちなみに "Shake Your Thang" は Hip-Hop グループ Salt-N-Pepa をフィーチャしていますが、Salt-N-Pepa のシングルでは、フィーチャリング E.U. といった表記になっています。

"Taste of Your Love" "Don't Turn Around" といったバラード曲もあり、R&B 色も強くなっています。

後半はどちらかというと Go-Go の比率が高く、"Da Butt 89" はパーカッションの多用もあり、アルバム中では一番 Go-Go 的ですね。Spike Lee の初期の作品 "School Daze" に起用されヒットした曲の焼き直し。なんと Marcus Miller が作曲に加わっています。

 Go-Go、ラップ、R&B が混沌としてなかなか楽しめるアルバムです。


  1. Buck WIld
    • Producer : Kent Wood, William House
    • Co-producer: Raymond Jones
  2. Livin' Large
    • Producer : Larry Robinson
  3. Shake Your Thang
    • Producer : Hurby Luv Bug
  4. Taste Of Your Love
    • Producer, Writer, Lead & Backing Vocals, Bass, Drum Programming, Horns, Keyboards : Marvin Ennis
    • Lead Vocals : Edward Henderson, Gregory "Sugar Bear" Eliot
  5. Shaka Zulu
    • Producer : Ivan Goff
  6. Come To The Go-Go
    • Producer : Marcus Miller
  7. Shake It Like A White Girl
    • Producer : Larry Robinson
  8. Da Butt '89
    • Producer : Ivan Goff, Kent Wood
  9. Don't Turn Around
    • Producer : Raymond Jones
  10. Express
    • Producer : Kent Wood, William House


  • Gregory "Sugar Bear" Elliot : vo, b
  • Ivan Goff : key
  • William "Ju Ju" House : ds
  • Genairo "Foxxy" Brown Foxx : congas
  • Timothy "Shorty Tim" Glover : per
  • Valentino "Tino" Jackson : g
  • Darryel "Tidy Boy" Hayes : tp
  • Michael "Go Go Mike" Taylor : tb
  • Kent Wood : key
  • Edward "Junie" Henderson : vo

2024年5月12日日曜日

The Glass Hours / Linda May Han Oh (2023)

ジャズベーシスト Linda May Han Oh の6枚目のリーダー作ですが、ちゃんと聴くのは初めてです。

前作 "Aventurine" 後に彼女はコロナ下で子供を産み母となりました。
その経験が今回の音楽に反映されているかどうかは分かりませんが、大きな転機となりうる経験だったでしょう。

Linda May Han Oh はマレーシア生まれの中国系で、オーストラリア・パース育ち。
僕が大学生の時の生まれですが、もう40手前なんですね。当たり前か。
ウッドベースを軽やかに演奏する姿を YouTube で見ましたが、中華系のクールビューティでカッコいいです。

今回のアルバムは変則的なクインテット編成のバンドからなっています。
ベース、ドラムス、ピアノ、サックス、ヴォーカル
旧知のコラボレーターのようです。特にピアノの Fabian Almazan は学生の時からの知り合いで、夫でもあるんですね。今回のアルバムでは流れるような演奏で、このアルバムの音楽に大きな影響を与えています。
基本的にアコースティックであり、シンプルな楽器構成でありながら、複雑さを感じさせます。
繰り返すテーマは時にわかりづらく、他の楽器とユニゾンするスキャットのようなヴォーカルが独特の感じを醸し出しています。
静寂を思い起こさせるようでありながら、バックでは忙しく音が鳴っている、そんな感じ。
ジャズのような、ジャズではないような。
アクが強いですが、時折聞きたくなるような音楽です。


  1. Circles
  2. Antiquity
  3. Chimera
  4. Jus Ad Bellum
  5. The Glass Hours
  6. The Imperative
  7. Phosphorus
  8. Respite
  9. The Other Side
  10. Hatchling

Composed by Linda May Han Oh
Recorded at Brooklyn Recording on June 13th and 14th 2022