2022年7月31日日曜日

Ella Mai / Ella Mai (2018)

Chill Out R&B というようなジャンルがあるのかどうか知りませんが、ダウンテンポと抑揚の少ないメロディ、音数の少ないサウンドは、現代主流になりつつある R&B の一面を代表しています。
'90年代 R&B にベースを持ってはいますが、メロウさは引き継いでいるものの、華やかさは控えめです。
メインストリームではないイギリスからこういった音楽が出てくるというのは、素人の僕なんかにすれば驚きですが、ロンドンの音楽シーンの奥深さも感じさせます。
そう言えば宇多田ヒカルの最新作もロンドンのチームでしたっけ。

Ella Mai 自身はアイリッシュとジャマイカの混血とのことで、生粋の R&B ルーツではないところも面白いですね。
Arize という3人組のガール・グループに参加し TV にも出たりしますが、ここでは全く注目されませんでた。グループの中でもメインではなかったようです。その後ソロに転向した後、インスタが縁で DJ Mustard の目に止まり、彼のレーベル 10 Summers Records と契約することになります。
きっと見栄えがいいわけではない、けど飛び抜けて歌唱力があるわけでもない、そんな彼女がうまくチャンスを掴んだ。分からないものです。

一気にスターダムに駆け上がったのは、このアルバムにも入っている "Boo'd Up" のヒットです。2017年に出した EP "Ready" の中の1曲で、じわじわと人気が出ていきました。
控えめなメロディーですが、何か心に引っかかるザラザラ感を持っている不思議な曲です。
アルバムの中で引っかかり度が高いもう1曲が "Trip" です。同じようなテイストを持っていますが、サビのフックが少し強いでしょうか。

アルバムでは Mustard のサウンド一色というわけではなく、ロンドン・コネクションのサウンドもいくつか含まれています。ただ、注意深く聴かないと特色の違いは分かりません。


  1. Emotion
  2. Good Bad [Rogues]
  3. Dangerous [Cox]
  4. Sauce [DJ Mustard, Gulledge]
  5. Whatchamacallit (featuring Chris Brown) [DJ Mustard, Holt]
  6. Cheapshot [H*Money]
  7. Shot Clock [DJ Mustard]
  8. Boo'd Up [DJ Mustard, Rance]
  9. Everything (featuring John Legend) [Rush Hr., DJ Mustard, Gulledge]
  10. Own It [Kosine, Snoddy]
  11. Run My Mouth [DJ Mustard]
  12. Gut Feeling (featuring H.E.R.) [DJ Mustard, Gulledge]
  13. Trip [DJ Mustard, Gulledge]
  14. Close [DJ Mustard, Gulledge]
  15. Easy [Lido, DJ Mustard, Gulledge]
  16. Naked (bonus) [DJ Mustard, Fedi, Groziuso, Sesson II, Friedman]

[ ] Producer
Marlon M. Williams : guitar (track 9)

Samples

  • "Shot Clock" contains an interpolation of "Legend" performed by Drake.
  • "Own It" contains samples from "T-Shirt & Panties" performed by Adina Howard featuring Jamie Foxx.
  • "Easy" contains an interpolation of "I Melt with You" performed by Modern English.



2022年7月26日火曜日

Specialty Profiles / Sam Cooke & The Soul Stirrers

Sam Cooke は 50 年代初頭にゴスペル・グループ The Soul Stirrers のメイン・ボーカルになりました。
素晴らしいゴスペルを紡ぎ出していましたが、彼にはポップ・シーンでの成功といいうアンビションがあり、ゴスペルとポップの間の葛藤があったようです。
ソロ名義の "You Send Me" の成功を受けて、レコード会社 Specialty も少し日和り、Cooke 名義のポップ・ミュージックを出すようになります。
もちろん、The Soul Stirrers のメンバーとしては、ポップ・ミュージックをやるということは不本意だったはずで、最終的には、Sam Cooke はソロへ転向していきます。
ソロ転向は、Sam Cooke にとってもThe Soul Stirrers にとってもハッピーだったのではないでしょうか。その後の Sam Cooke の成功を見れば分かります。

このアルバムはそんな時代の、ゴスペルとポップ(ソウル)ミュージックが混じったコンピレーションです。
やはりここでは、僕はゴスペルを推したい。
"Peace In The Valley", "Touch The Hem Of His Garment", "Jesus Gave Me Water" あたりの曲ですね。
曲調は地味ですが、なんか染み込むものがあります。

アメリカって独特な文化ですよね。ゴスペルといいミュージカルといい。何でもかんでも歌っちゃえ!
それに宗教音楽って、レコードで普通売れへんで。


  1. I'll Come Running Back To You [Sam Cooke]
  2. Forever [Sam Cooke]
  3. Jesus, I'll Never Forget [The Soul Stirrers]
  4. Peace In The Valley [The Soul Stirrers]
  5. Just Another Day [The Soul Stirrers]
  6. Touch The Hem Of His Garment [The Soul Stirrers]
  7. Lovable [Sam Cooke]
  8. Farther Along [The Soul Stirrers]
  9. Jesus Gave Me Water [The Soul Stirrers]
  10. The Last Mile Of The Way [The Soul Stirrers]
  11. That's All I Need To Know [Sam Cooke]
  12. Any Day Now [The Soul Stirrers]
  13. I Don't Want To Cry [Sam Cooke]
  14. I'm Gonna Built Right On That Shore [The Soul Stirrers]



2022年7月18日月曜日

Beautifully Human: Words and Sounds Vol. 2 / Jill Scott (2004)

前作、"Who Is Jill Scott? Words and Sounds, Vol. 1" を発展させたようなセカンド・アルバムです。

静かで、ミディアム〜スロウ・テンポ、そして平板。
H.E.R.、Jhené Aiko、Lucky Daye、Summer Walker、Ella Mai.....
今の R&B シーンのメイン・ストリームはこの Jill Scott の影響が大きいのではないでしょうか。
幾分か Jill Scott の方がネオ・ソウルしていますが。

サウンド的には、オーガニックかつジャジー。
アルバムの中の多くの曲がフィラデルフィアの A Touch Of Jazz Studios で録音されており、ライター、プロデューサーとも Andre Harris、Vidal Davis、Darren Henson、Keith Pelzer、Carvin Haggins、Ivan "Orthodox" Barias、Anthony Bell、Ronald "PNutt" Frost といった A Touch Of Jazz Studios のメンバーが関わっています。
そのあたりがジャジーさを感じさせるところなんでしょうか。
その他の曲でも、The Roots の James Poyser、Pete Kuzma、意外にも Raphael Saadiq らの名前がクレジットされており、全体的なサウンド・カラーが統一されています。

先行シングルの "Golden" では珍しく力強いヴォーカルとアップ・テンポが使われていますが、むしろこれは稀です。
どの曲が際立っている、というより、アルバム全体として聴かせるという意味ではトータル・アルバムなんでしょうね。


  1. Warm Up [Jill Scott, James Poyser]
  2. I'm Not Afraid [Scott, Omari Shabazz]
  3. Golden [Scott, Anthony "Ant" Bell]
  4. The Fact Is (I Need You) [Scott, Pete Kuzma]
  5. Spring Summer Feeling [Scott, Raphael Saadiq, Kelvin Wooten]
  6. Cross My Mind [Scott, Keith "Keshon" Pelzer, Darren "Limitless" Henson]
  7. Bedda at Home [Scott, Ivan "Orthodox" Barias, Carvin "Ransum" Haggins, Frank Romano, Johnnie Smith]
  8. Talk to Me [Scott, Poyser]
  9. Family Reunion [Scott, Barias, Haggins, George Kerr]
  10. Can't Explain (42nd Street Happenstance) [Scott, Poyser]
  11. Whatever [Scott, Ronald "PNutt" Frost]
  12. Not Like Crazy [Scott, Kuzma]
  13. Nothing" (Interlude) [Scott, Andre Harris, Vidal Davis]
  14. Rasool [Scott, Harris, Davis, Tom Brock, Percy Taylor, Barry White]
  15. My Petition [Scott, Harris, Davis]
  16. I Keep / Still Here [Scott, Harris, Davis / Scott, Kuzma, Dave Manley]


"Family Reunion" contains elements of "Look Over Your Shoulder" by the Escorts.
"Rasool" contains a sample of "Mellow Mood Pt. 1" by Barry White.



2022年7月10日日曜日

In Our Lifetime? / Marvin Gaye (1981)

このアルバムのレコーディングを始めた1979年当時、Marvin Gaye は私生活で大きなトラブルを抱えていました。
再婚相手との不仲、コカイン、脱税容疑、借金、モータウンとの契約解除...
ずたぼろ状態だったわけですね。

音楽的には、前作 "Here, My Dear" (1978) の商業的失敗が、大きな負担になっていました。
何せ、1977年の "Got to Give It Up" 以降ヒット曲が出ていなかったわけです。

Marvin は一念発起して "Love Man" プロジェクトを立ち上げ、より大衆層にウケる商業的成功を狙ったアルバムの制作を目指します。

レコーディングはしたものの、私生活のトラブルが次々と発生し、完成は混乱を極めます。
特にコカインのオーバードーズがひどかったんでしょうね。
脱税その他への対応としてロンドンに移り、Odyssey スタジオと George Martin の AIR スタジオで最終的なミックスを始めます。
単なるミックスではなく、シンセサイザーを加え、アルバム・コンセプトも見直しています。

そんな中、音源を入手したモータウンは、アルバムを勝手にリリースしてしまいます。ギターなどの追加と独自のミックスを施して。Marvin の最終ミックス中でした。
契約解除を控えて、いつまでも完成しないアルバムに業を煮やしたんでしょうね。
そんなこんなで、商業的にはさっぱり、評判も芳しくなかったアルバムですが、改めて数
年の時を経て聴いてみると、なかなかいい曲が揃っている、いいアルバムだと思います。
"What's Going On" 以降、コンセプチュアルなアルバムを作り続けてきた Marvin にとっては少し散漫に感じているかもしれませんが。

アルバムの最初の "Praise" は明るく、"Love Party" は軽快なダンス・ナンバーです。
"Heavy Love Affair" は "Let's Get It On" の系列に繋がる名曲だと思います。
"I Want You" 以降の少し暗めの曲調から、明るく突き抜けたような感じでまとまっているのは好感が持てます。
"Love Man" アルバムの先行シングルの扱いで出された "Ego Tripping Out" は当初の発売にには入っていませんでしたが、CD化に伴って追加されています。

そして、2007年についに、Odyssey スタジオと AIR スタジオミックスがボーナス・追加された "Expanded edition" 版が発売されました。
最初に発売されたモータウン・ミックス版も悪くはないですが、ロンドン・ミックス版がより原作者の意図に近いモノだと思うと、こちらの方が正統かなと思います。
イントロダクションが全く違っていたり、シンセの追加で少し宇宙的なアレンジが施されている曲もあります。曲のタイトル、歌詞が代わっている曲もあります。

このアルバムの翌年には、名盤 "Midnight Love" を出すんですから、Marvin の才能には底知れないものがあります。


  1. Praise
  2. Life Is for Learning
  3. Love Party
  4. Funk Me
  5. Far Cry
  6. Love Me Now or Love Me Later
  7. Heavy Love Affair
  8. In Our Lifetime
  9. Ego Tripping Out


Air Studios Mix (Outtake)

  1. Nuclear Juice
  2. Ego Tripping Out
  3. Far Cry


Odyssey Studios Mix

  1. Praise
  2. Life Is For Learning
  3. Heavy Love Affair
  4. Love Me Now or Love Me Later
  5. Ego Tripping Out
  6. Funk Me
  7. In Our Lifetime
  8. Love Party


The Love Man Sessions

  1. Life's a Game of Give and Take [→Heavy Love Affair]
  2. Life Is Now in Session
  3. I Offer You Nothing But Love [→I Offer You Nothing But Love]
  4. Just Because You're So Pretty [→Love Me Now or Love Me Later]
  5. Dance 'N' Be Happy [→Love Party]
  6. Funk Me, Funk Me, Funk Me [→Funk Me]
  7. A Lover's Plea [→Praise]


Personnel

  • Marvin Gaye – vocals, keyboards, drums
  • Preston "Bugsy" Wilcox – drums
  • Lee Kentle – drums
  • Nigel Martinez – drums
  • William Bryant – drums, keyboards
  • Joe James – percussion
  • Gary Jones – percussion, conga
  • Joe Mayo – percussion
  • Elmira Collins – vibraphone
  • Raymond Crossley – keyboards
  • Frank Bates – bass
  • Frank Blair – bass, drums
  • Robert Ahwry – guitar
  • Gordon Banks – guitar
  • Curtis Anthony Nolen – guitar
  • Dr. George Shaw – trumpet
  • Ray Brown – trumpet
  • Kenny Mason – trumpet
  • Nolan Andrew Smith – trumpet
  • Sidney Muldrew – French horn
  • Fernando Harkness – saxophone
  • Raphael Ravenscroft – alto saxophone



2022年7月1日金曜日

Dear Love / Jazzmeia Horn and Her Noble Force (2021)

Noble Force という15人編成のビッグ・バンドと組んだ初めてのアルバムになります。(前2作はソロ名義)
といっても、ビッグ・バンド的アレンジはあまり感じさせず、少し管が多めなのかな、といった程度に感じました。

アフリカンで、ラップ(というか語り)が中心の #1 "I Feel You Near" で面食らいますが、あとは通常の歌ものです。

Jazzmeia というだけあって、ジャズが好きなんでしょうか。でも決してジャズの範疇に収まり切らない才能を感じます。
曲調もバラエティに富んでいて、4ビート・ジャズから、ポップス、R&B など、それぞれ違った顔を見せてくれます。もちろん僕は R&B の顔が好きですが。

そんな中で、僕が 1 番いい、と思ったのはラストの曲 "Where Is Freedom!?" ですかね。グルービーなオルガンから始まる R&B ナンバーです。


  1. I Feel You Near
  2. Be Perfect
  3. He Could Be Perfect
  4. He's My Guy
  5. Let Us (Take Our Time)
  6. Back to Me
  7. Lover Come Back to Me
  8. Money Can't Buy Me Love
  9. Nia
  10. Strive
  11. Strive (To Be)
  12. Where We Are
  13. Judah Rise
  14. Where Is Freedom!?


  • Bruce Williamson (alto saxophone)
  • Keith Roftis (tenor saxophone)
  • Freddie Hendrix (trumpet)
  • Corey Wilcox (trombone)
  • Sullivan Fortner (organ)
  • Keith Brown (piano)
  • Eric Wheeler (bass)
  • Anwar Marshall (drums)