2023年12月31日日曜日

Homecoming / Vince Mendoza & The WDR Big Band Cologne (2017)

いいです!すばらしいです。

今まで Vince Mendoza は全く知りませんでしたし、もちろん聴いたことはありませんでした。
NHK FM の挟間美帆の番組で特集してて初めて知りました。
そういう意味では、この番組は僕の知らない世界の扉を開けてくれる貴重な存在です。

Vince Mendoza は僕より5歳年上なので、けっこうなおっさんです。
その分経歴は長く、90年代初頭から音楽業界で職を得ています。
最初はテレビの仕事だったみたいです。
程なくビッグバンドと仕事をするようになり、グラミーにもノミネートされるようになります。
Gary Burton, Pat Metheny, Michael Brecker らに曲を提供したり、Björk, Chaka Khan, Elvis Costello, Robert Glasper, Sting, Herbie Hancock, Joni Mitchell らのレコーディングで編曲してるみたいですから、僕も何かには触れたことがあるかもしれません。

このアルバムは、全曲彼の作・編曲で、The WDR Big Band が演奏しています。
WDR というのは Westdeutscher Rundfunk の略で、英語にすると "West German Broadcasting"。Cologne はケルンですので、「西ドイツケルンのラジオ放送曲ビッグバンド」ということになります。
ヨーロッパではこんな風にラジオ放送局がジャズのビッグバンドを持つという文化があるんですね。
これも最近知りました。
Bob Mintzer が主席指揮者ですが、Vince Mendoza が作曲と指揮に関わっています。

各曲の完成度は高く、見事なアレンジですが、なんとライブ録音です。
曲の最後にお客さんの拍手が入り、あ、これライブなんや、と気付かされます。
2014年11月のドイツケルンとエッセンでのコンサートから。

1曲目の "Keep It Up" か何といってもカッコいい!
ギターとミュートトランペットがモダンです。

どの曲もそうですが、展開が複雑で、よく作り込まれています。
かといってダイナミズムが失われているわけではなく、ソロでのインプロビゼイションも生きています。

現代のビッグバンドジャズ、ラージアンサンブルジャズはこういう形で発展してるんですね。

年の最後にこういうすばらしい音楽を紹介できて幸せです。

  1. Keep It Up
    • Guitar Solo : Paul Shigihara
    • Tenor Saxophone Solo : Paul Heller
  2. Little Voice
    • Alto Saxophone Solo : Karolina Strassmayer
    • Piano Solo : Frank Chastenier
  3. Choros #3
    • Clarinet Solo : Johan Hörlén
    • Percussion Solo : MarcioDoctor
    • Trombone Solo : Andy Hunter
  4. Homecoming
    • Alto Saxophone Solo : Karolina Strassmayer
    • Trumpet Solo : JohnMarshall
  5. Amazonas
    • Percussion Solo : Marcio Doctor
    • Soprano Saxophone Solo : Johan Hörlén
    • Trombone Solo : Ludwig Nuss
  6. One Times One
    • Tenor Saxophone Solo : Paul Heller
    • Trombone Solo : Shannon Barnett
    • Trumpet Solo : John Marshall
  7. Daybreak
    • Electric Piano Solo : Frank Chastenier
    • Trumpet Solo : John Marshall
    • Bass : Mark Bedford

  • Composed By, Arranged By, Conductor – Vince Mendoza
  • Drums – Hans Dekker
  • Percussion – Marcio Doctor(Guest)
  • Electric Bass, Acoustic Bass – John Goldsby
  • Piano, Electric Piano, Organ – Frank Chastenier
  • Electric Guitar, Acoustic Guitar – Paul Shigihara
  • Trumpet – Andy Haderer, John Marshall, Rob Bruynen, Ruud Breuls, Wim Both
  • Alto Saxophone, Flute, Piccolo Flute – Karolina Strassmayer
  • Alto Saxophone, Soprano Saxophone, Flute, Clarinet – Johan Hörlén
  • Tenor Saxophone, Bass Clarinet – Paul Heller
  • Tenor Saxophone, Clarinet, Flute – Olivier Peters
  • Baritone Saxophone, Bass Clarinet, Contra-Alto Clarinet – Jens Neufang
  • Trombone – Andy Hunter, Ludwig Nuss, Shannon Barnett
  • Bass Trombone, Tuba – Mattis Cederberg
  • Producer – Lucas Schmid, Vince Mendoza
  • Executive-Producer – Joachim Becker

Recorded live in concert November 21st, 2014 at the Philharmonie, Köln, Germany; except track 7 recorded live in concert November 22nd, 2014 at the Philharmonie, Essen, Germany


2023年12月25日月曜日

Keep Moving / Madness (1984)

この頃の Madness はノッてましたよね。
3rd. アルバム "7" ~ "Rise & Fall" ~このアルバムあたりは完璧でしょう。
"It Must Be Love"、"Tomorrow's (Just Another Day)"、"Our House"、このアルバムの "The Sun and the Rain"、"Prospects"、"One Better Day"、"Michael Caine" と名曲ぞろいです。

オリジナル。アルバムは12曲入りですが、イギリスのバンドらしく、シングルは別になっています。前後のシングル "Wings Of A Dove" や "The Sun And The Rain" やその12" Mix などがボーナスとして入ったこのアルバムは最強でしょう。

2トーン・ムーブメントの一員としてデビューしましたが、"7" 以降はスカ色はほとんどなくなり、ロンドン・パブ・ミュージックとなっています。
このあたり、本家 Specials と同じような動きですね。
原初はパンクと同じ、複雑化と産業化を重ねたロックへの反動で、スカを選んだわけですが、その形にこだわる必要がなかったということでしょうかね。

このアルバムとは関係ないですが、"It Must Be Love" のおもちゃのようなドラムのサウンドを、高橋幸宏がえらく誉めていたのを思い出しました。


  1. Keep Moving [Smyth, Foreman, McPherson]
    • Horns – TKO
  2. Michael Caine [Smash, Woodgate]
    • Backing Vocals – Afrodiziak
    • Voice by Michael Caine
  3. Turning Blue [Foreman, McPherson]
  4. One Better Day [McPherson, Bedford]
  5. March Of The Gherkins [Thompson, Barson]
  6. Waltz Into Mischief [Smyth, McPherson]
    • Backing Vocals – General Public
  7. Brand New Beat [Thompson, Barson]
  8. Victoria Gardens [Smyth, Barson]
    • Backing Vocals – General Public
  9. Samantha [Thompson, Barson]
  10. Time For Tea [Foreman, Thompson]
  11. Prospects [Smyth, McPherson]
  12. Give Me A Reason [Smyth, Thompson]
  13. Wings Of A Dove [Smyth, McPherson}
  14. Behind The 8 Ball [Smyth, Foreman, Woodgate, McPherson, Thompson, Bedford, Barson}
    • Producer – The Nutty Boys
  15. One Second's Thoughtlessness [Woodgate, Thompson]
    • Engineer – Mark O'Donaghue
    • Producer – A Hip Young Production
  16. Wings Of A Dove (12" Blue Train Mix)
  17. The Sun And The Rain [Barson]
  18. Fireball XL5 [Thompson, Madness]
    • Producer – Ian (Dad) Horne, Secret Seven
  19. My Girl (Live) [Barson]
  20. The Sun And The Rain (12" Extended Version)
  21. Michael Caine (12" Extended Version)
  22. If You Think There's Something [Barson]
  23. Guns [McPherson]
  24. Sarah [Thompson, Madness]
    • Producer, Mixed By Ian (Dad) Horne
  25. Victoria Gardens (Re-Mix)


  • Bass : Mark Bedford
  • Drums, Triggers : Daniel Woodgate
  • Guitar : Chris Foreman
  • Keyboards : Mike Barson
  • Percussion : Louis Jardim
  • Saxophone : Lee Thompson
  • Producer : Clive Langer & Alan Winstanley


2023年12月17日日曜日

Night Raider / Sonora Ponceña (1981)

プエルトリコのサルサ・バンド Sonora Ponceña の81年のアルバムです。
キレがいい。
N.Y. の Fania が盛り上がったのは、70年代ですが、それをうまく引き継いでいます。

Sonora Ponceña は Enrique "Quique" Lucca によって1944年に作られたと言いますから、かなり歴史あるバンドです。
"Quique" の息子 Papo Lucca は若くしてバンドに加わり、このアルバムの時、あるいはその後もずっとバンドの音楽監督であり続けています。
ピアニストである Papo Lucca は、Fania All-Stars の一員として、Larry Harlow の後釜に座ります。
実力あるんでしょうね。
このアルバムでも、音楽監督として、ピアニストとして、しっかりサウンドを作っているように思います。

ジャケットは独特の感性ですが、サウンドは最高です。


  1. Ramona
    • Coro : Quique Lucca
  2. Caballo Viejo
    • Coro : Justo Betancourt
    • Sound Effects – Quique Lucca
    • Written by Simon Diaz
  3. A Lo Mejor
  4. Borrachera
  5. Algo Facil / Something Easy
    • Piano Solo, Drum Solo : Papo Lucca
  6. Umi-Layé
    • Bata : Cristobal Colon, Jessie Colon, Johnny Rivero, Papo Lucca
    • Written by Papo Lucca
  7. Nada Para Ti
    • Piano Solo : Papo Lucca
    • Written by Roberto Angleró
  8. Cuestiones De Amor
    • Bass : Sal Cuevas


  • Coro : Edwin Rosas, Miguelito Ortiz, Toñito Ledee, Yolanda Rivera
  • Guiro, Maracas : Miguel A. Ortiz
  • Timbales : Jessie Colon
  • Vocals : Miguel Ortiz (1, 2, 3, 8), Toñito Ledee (4, 6, 7, 8), Yolanda Rivera (8)
  • Piano, Directer, Arranger, Producer : Enrique "Papo" Lucca


2023年12月9日土曜日

Jump to It / Aretha Franklin (1982)

アリスタ時代の Aretha を悪く言う人もいます。
事実、売れんがためのくだらないポップスも多くあります。
しかし、Aretha Franklin はアリスタで第2期黄金時代を築いたのも確かです。


アリスタ時代の Aretha は一通り聴きましたが、一番いいのはこのアルバムですね。
Clive Davis は売れためには何でもする男ですが、彼が今回 Aretha にぶつけたのは Luther Vandross。前年にソロ・デビューし、"Never Too Much" をヒットさせていました。
彼はプロデュースするにあたり、彼のチーム Marcus Miller と Nat Adderley Jr. を連れてきましたが、このチームがこのアルバムでは当たりました。
Miller の脅威的なベースもすごいですが、当時で言う”コンテンポラリー”なサウンドが素晴らしい。

ソウル・クイーンから、ブラック・コンテンポラリー・シンガーへの脱皮ですね。

ヒット曲 "Jump to It" が生まれ、R&B チャートではNo.1になりました。その名の通りのジャンプ・ナンバーです。
アルバムがヒットしたのも、この曲のリードのおかげでしょう。
昔のような鞠のような弾力のあるヴォーカルは聴けませんが、包容力のある広い声はさすがです。

Luther Vandross チームがいい仕事をする中、Aretha はなんとか自作の曲 "I Wanna Make It Up to You" を捩じ込むのに成功したようです。でも、これも悪くない。Four Tops の Levi Stubbs とのデュエットです。

ヒットに気を良くした Aretha と Clive は二番煎じで、自作 "Get It Right" も作ります。同じようなメンバーで、ジャケットまで同じテイストで。これも悪くないのですが、前作ほどは売れませんでした。


  1. Jump to It [Luther Vandross, Marcus Miller]
  2. Love Me Right [Vandross]
  3. If She Don't Want Your Lovin' [Sam Dees]
  4. This Is for Real [Vandross]
  5. (It's Just) Your Love [Vandross, Miller]
  6. I Wanna Make It Up to You [Aretha Franklin]
  7. It's Your Thing [O'Kelly Isley, Ronald Isley, Rudolph Isley]
  8. Just My Daydream [Smokey Robinson]


  • Luther Vandross : keyboards (2), rhythm arrangements (2, 4, 5, 7), vocal arrangements (2, 3, 5, 8)
  • Marcus Miller : synthesizers (1), synthesizer and rhythm arrangements (1), bass guitar (1, 2, 4–7)
  • Nat Adderley Jr. : keyboards (1, 3–8), rhythm arrangements (3–8)
  • keyboards (2)
  • George Duke : acoustic piano (5)
  • Reginald "Sonny" Burke : keyboards (8)
  • Doc Powell : guitar (1–8)
  • Steve Love : guitar solo (7)
  • Francisco Centeno : bass guitar (3)
  • Louis Johnson : bass guitar (8)
  • Yogi Horton : drums (1, 3–8)
  • Buddy Williams : drums (2)
  • Errol "Crusher" Bennett : congas (1), percussion (3, 4, 5, 8)
  • Paulinho da Costa : percussion (7)
  • George Young : soprano saxophone (4)
  • Four Tops : backing vocals and vocal arrangements (6)
  • Levi Stubbs : lead vocals (6)

  • Producers : Luther Vandross (1–5, 7, 8), Aretha Franklin (6)


2023年12月3日日曜日

Doing It to Death / The J.B.'s (1973)

最初の Introduction で "12 young men" と紹介してて、そんなにいるのかと思いましたが、ホーンセクションが7人、ギター2本とベース、ドラムス、James Brown で確かに12人になります。ジャケットでは10人しか写ってませんが。
これだけホーンセクションを厚くしなければならなかったのかはよく分かりませんが、トランペット3本、サックスが、アルト1本、テナー2本、そして Fred Wesley のトロンボーンです。
サックスには Maceo Parker が帰ってきました。

The J.B.'s は旧バンドメンバーが賃金ストライキを起こした結果生まれたと言われています。新たにメンバーを入れ替えたんですね。そこで加入したのが、Collins 兄弟。その後、Fred Wesley が復帰するに伴って、Collins 兄弟は抜けますが、このアルバムは Collins 脱退後のバンドメンバーによるものです。

記録映像によると、James Brown はとにかくバンドメンバーに評判が悪い。給料はケチる、絶対服従を強い、こき使う。Fred Wesley も Maceo Parker も悪口しか言ってません。
でもなぜ Wesley は復帰したんでしょうね。
酷い扱いを受けても、それでもビッグビジネスを回している Brown に引き寄せられたのか、やはり Brown の音楽性に惹かれたのか。

このアルバムは、J.B.'s 名義になってますが、全曲 Brown 作曲。(もしかしたらメンバーの作曲への貢献があってもクレジットしてもらえなかったのかも)
ヴォーカル曲は James Brown 節全開ですが、インスト曲、あるいはインスト部分は結構オリジナリティがあり、だいぶジャズフレーバーが効いてます。この辺りは Wesley のリーダーシップなんでしょうか。
帰って来た Maceo Parker もフルートを吹いています。

全8曲ですが、うち2曲は、ラストの曲 "You Can Have Watergate Just Gimme Some Bucks And I'll Be Straight" のインタールード曲で、 Introduction も最初に入っているので、実質5曲。(ちなみにウォーターゲート事件は1972年)
Collins 兄弟いなくても、全盛期に近い James Brown にとっては関係なし。同じ年には、"The Payback" を出しています。
1拍目ファンクと、カッティングギターとベースの永遠に続くリフの繰り返しは、P-Funk の原型なんでしょうね。

全体的に Good!


  1. Introduction To The J.B.'s
  2. Doing It To Death - Part 1 & 2
  3. You Can Have Watergate Just Gimme Some Bucks And I'll Be Straight
  4. More Peas
  5. La Di Da La Di Day
  6. You Can Have Watergate Just Gimme Some Bucks And I'll Be Straight
  7. Sucker
  8. You Can Have Watergate Just Gimme Some Bucks And I'll Be Straight


  • Fred Wesley : trombone
  • Darryl "Hasaan" Jamison : trumpet
  • Jerone "Jasaan" Sanford : trumpet
  • Ike Oakley : trumpet
  • Maceo Parker : alto saxophone, flute
  • St. Clair Pinckney : tenor saxophone
  • Eldee Williams : tenor saxophone
  • Jimmy Nolen : guitar
  • Hearlon "Cheese" Martin : guitar
  • Fred Thomas : bass
  • John "Jabo" Starks : drums
  • James Brown : lead vocal