2025年7月28日月曜日

American Dreamers: Voice Of Hope, Music of Freedom / John Daversa Big Band Featuring DACA Artists (2018)

DACA とは  Deferred Action for Childhood Arrivals のことで、16歳未満でアメリカに不法移民の子として連れて来られた子供を保護するためのプログラムです。
この DACA の対象となった人を "Dreamer" と呼びます。
このプログラムはオバマ民主党政権下で成立した、実に民主党らしい政策でしたが、例に漏れずトランプ共和党政権下で廃止されそうになります。

このアルバムは明らかに DACA プログラムを支援する目的で作られています。
アルバムには18タイトル入っていますが、内半分は DACA Dreamers のコメントです。
メキシコ、ベネズエラ、パキスタン、セネガル、ブラジル等々の国から違法入国した家族の子供が、自らのストーリーを語っています。
みんな何らかの楽器の演奏者で、ジャズへの想いを語ると同時に、そういう機会を与えてくれた DACA プログラムへ感謝を述べています。

曲は、ほとんどがカバー曲で、アメリカや移民についての曲です。
James Brown の "Living in America" に始まり、Cole Porter の "Don't Fence Me In"、Led Zeppelin の "Immigrant Song" のラップバージョン、"Stars and Stripes Forever"、ウエストサイドストーリーから "America"、古典の "America the Beautiful" へと続きます。

John Daversa はトランペット奏者でかつマイアミ大学で音楽を教えている教師でもあります。そのキャリアの中で、何人かの DACA Dreamers に出会い、興味を持ったのかもしれません。
アルバムのアイデアはプロデューサーのベーシスト Kabir Sehgal と 弁護士の Doug Davis がもたらし、John Daversa Big Band により形になりました。


  1. Salvador
  2. Living In America
  3. Saba
  4. Don’t Fence Me In
  5. Caliph
  6. Immigrant Song
  7. Daisy
  8. Deportee (Plane Wreck at Los Gatos)
  9. Denzel
  10. Stars And Stripes Forever
  11. Alicia
  12. America (West Side Story)
  13. Juan Carlos
  14. America The Beautiful
  15. Maria
  16. All Is One
  17. Edson
  18. Red, White, and Remixed


  • Miguel Martinez: vocals, guitar, percussion
  • Israel Arce: vocals, violin, percussion
  • Maria Moreno: vocals, flute, percussion
  • Edson Alvarado Fierro: vocals, trumpet, percussion
  • Saba Nafees, Daniella Santos Vieira: vocals, piano, percussion
  • Victor Acosta, Guillermo Martinez, Ana Rodriguez, Doug Davis , Arturo Fernandez, Tomas Monzon, Manny Macias Sandoval, Karina Macias Sandoval, Brisa Ledezma, Patricia Jimenez, Claudia Jimenez, Adrian Escarte, Abdou Doumboya, Juana Delgado Hoyo, Raymond Partolan, Francis Tume, Andrea Seabra, Rixa Rivera Sandoval, Ana Sanchez, Ray Pineda: vocals, percussion
  • Julie Kim, Edwin Alvarez, Michael Hernandez, Mannywellz, Tobore Oweh, Jocelyn Guzman, Tifany Del Rio, Daisy Cardozo, Hareth Andrade Ayala, Kevin Alavrez, Maribel Serrano, Pablo Saldana, Gaby Pacheco, Kate Ried: vocals
  • Zach Larmer: guitar
  • Henry Mancini: strings
  • Jose “Pepe” Carlos Ramirez: accordion
  • Salvador Perez Lopez: clarinet, percussion
  • Jesus Cortez Sanchez: clarinet
  • Melvin Butler, David Leon, Josiah Boornazian, Tom Kelley, Chris Thompson Taylor: saxofone
  • Jean Caze, Jack Wengrosky, Michael Dudley, Jesus Mato, Jr.: trumpet
  • Denzel Mendoza: trombone, percussion
  • Paul Young, Wesley Thompson, Jessica Hawthorne, Derek Pyle: trombone
  • Tal Cohen: piano, keyboards
  • Juan Carlos Alarcon Moscoso: piano, percussion
  • Haziel Andrade: piano
  • Gene Coye: drums
  • Andreas Magnusson, Kabir Sehgal, Michael Angel, Murph Aucamp, Denea Joseph, Leezia Dhalla, Alicia Del Aguila, Eunsoo Yeong, Antonia Riviera: percussion

  • Recorded March – July, 2018, at Frost School of Music, Coral Gables, FL
  • Producers: Kabir Sehgal and Doug Davis


53 Dreamers were featured in the album from 17 different states and 17 different countries.
Some of the countries include Belize, Brazil, Canada, Mexico, Pakistan, Senegal, and Venezuela.
Dreamers sang, performed poetry, and even rapped.


2025年7月20日日曜日

Dindin / Kimi Djabaté (2023)

先日関西万博に行ってきました。
一番気分が上がったのは、写真でしか見たことがなかった楽器の実物を見れたこと。マリのブースでは、コラを置いてたし、ブルキナファソではンゴニを飾ってました。カリンバ(リケンべ)もどっかにあったかな。
それと、実際に触って音が出せたのも興奮しました。トリニダード・トバゴでは、スチールパンを叩け、他でもバラフォンやコンガを叩け、カリンバを弾いてみることもできました。
それだけでも行った価値がありました。
知らない国もたくさんありましたし。

そんな国の一つ、ギニア・ビサウのミュージシャン、Kimi Djabaté の久々のアルバム。
楽器演奏と歌詞による歴史伝承を託されたグリオの家系で、バラフォンを専門としていた家だったようです。
アルバム・ジャケットでも彼自身がバラフォンとマレットを持っています。

歌詞はマンディンガ語。全く分かりませんが、マンディンガ族の言葉です。
マンディンガ族は、中世にマリ帝国を築いた民族の末裔で、西アフリカに点在しているようです。
「ルーツ」(Alex Haley) のクンタ・キンテはマンディンガ族とされているようですが、西アフリカは、アメリカ大陸への奴隷貿易の一大拠点だった歴史があります。ポルトガル植民地時代のことです。
独立後のギニア・ビサウは政情が不安定で、そのせいでもあるんでしょう、Kimi Djabaté はある時からポルトガル在住です。
ちなみに、ビサウは首都で、ギニア、赤道ギニアと区別するために、ギニア・ビサウという国名にしたようです。ギニア、赤道ギニア、ギニア・ビサウとも離れた国なのに、なぜギニア?(一説では、ギニアは黒人たちの土地というベルベル語から来ている)

伝統楽器と地元言語の曲ですが、聴きやすく、モダンな感じがするのは、ポルトガル在住という地理的なものが影響しているのでしょうか、あるいは Kimi Djabaté のポップ・センスの成せる技なのか。
結構タイトル名は繰り返し発音語が多いですね。"Dindin" とか "Mana Mana" とか "Djugu Djugu" とか。
#4 "Kambem" は団結がテーマ。飢餓、戦争の終結、正義、誇りを歌ってます。
タイトル曲 #6 "Dindin" は子供たち。グリオの家系に生まれ、音楽を強制された経験から、子供たちからの搾取を訴えています。
#7 "O Manhe" は強制結婚への反対を歌っています。アフリカでは経済的な要因で若い女性が人身売買の被害者となることが深刻な社会問題となっていることを訴えています。

アルバム全体として、宗教、女性の権利、貧困、教育、政治などの社会的なテーマを扱いながら、ダンス、ポップ・ミュージックとして成立させているところが素晴らしいと思います。


  1. Afonhe
  2. Yensoro
  3. Alidonke
  4. Kambem
  5. Dindin
  6. O Manhe
  7. Sano
  8. Mbembalu
  9. Mana Mana
  10. Djugu Djugu


  • Kimi Djabaté : vocals, acoustic guitar, bongos, bala, claps, mola
  • Marcos Alves : percussion
  • Chico Santos : bass
  • Mamadi Djabaté : electric guitar
  • Paulo Borges : keyboards, accordion
  • Miroca Paris : congas, bongos
  • Fernando Fafe : vocals
  • Mbye Ebrima : kora
  • Elmano Coelho : saxophone
  • Daniel Salomé : saxophone


2025年7月6日日曜日

A Quiet Storm / Smokey Robinson (1975)

3枚目のソロ・アルバム。
"Quiet Storm" というラジオ・カテゴリーの名前の元になったのがこのアルバム or 曲になります。

アルバムからは #3 "Baby That's Backatcha" がシングルになって、ヒットしていますが、圧倒的に表題曲の存在感がすごい!
ベースに鳴り続けるシンセ、間奏のフルート、キーボード、ソフトな曲調でありながら、一転サビでグッと盛り上がる(と言っても静かに)ところも含めて、全機能的に "Quiet Storm" を表現しています。
何と言っても、Smokey Robinson のハイトーン・ヴォイスが曲調を生かしています。
作曲は、Smokey Robinson と 妹の Rose Ella Jones。どういう役割分担をしているのか知りませんが、Rose Ella Jones にとってもこの曲は代表曲でしょう。

アルバムを通して、ソフト&メロウな曲が大半を占め、印象を形作っています。
2〜3曲ほど少しアップ・テンポな曲もありますが、いいアクセントになっている感じですね。
曲間では嵐的な風の音が挿入されており、アルバム全体として "Quiet Storm" を表しているんでしょう。
そういう意味ではコンセプト・アルバムと言えなくもありません。
まったりしたいときに、アルバム全体を流しておきたい、そんなアルバムです。

ちなみに #4 はその名の通り Jermaine Jackson と Hazel Gordy の結婚のために作られた曲です。Hazel Gordy は Berry Gordy の娘で、よくもまあそんな人と結婚するわ、と思いますが、The Jackson 5 が CBS に移籍するときに 義父である Berry Gordy に引き止められ、The Jackson 5 は "Jacksons" として、Michael が音楽をリードするグループに脱皮します。Jermaine もその後ソロとして活躍しますが。
Robinson と Gordy はモータウンを一緒に作った盟友ですので、家族同様だったんでしょうね。


  1. Quiet Storm *
  2. The Agony And The Ecstasy
  3. Baby That's Backatcha
  4. Wedding Song
  5. Happy (Love Theme From "Lady Sings The Blues") **
  6. Love Letters *
  7. Coincidentally


All tracks written by Smokey Robinson, except 
* by Robinson, Rose Ella Jones
** by Robinson, Michel Legrand


  • Keyboards, Backing Vocals, Arrange : Russ Turner
  • Guitar : Marv Tarplin
  • Bongos, Congas, Backing Vocals : James "Alibe" Sledge
  • Horns, Woodwind : Fred Smith
  • Electric Cello : Michael Jacobsen
  • Drums : Gene Pello
  • Drums, Percussion : Joseph A. Brown Jr.
  • Percussion : Gary Coleman
  • Backing Vocals : Carmen Bryant, Melba Bradford
  • Special Sound Effects : Shawn Furlong, Terry Furlong
  • Produce, Arrange : Smokey Robinson


The "Wedding Song" was originally composed for the wedding of Jermaine and Hazel Joy Jackson December 15, 1973.