2020年6月28日日曜日

14番目の月 / 荒井由実 (1976)

松任谷正隆との結婚とほぼ同時にリリースされた、4枚目のオリジナルアルバムですが、なんと彼女はこれを最後に引退しようと考えていたようです。
歌の内容は、結婚を前にしたハッピーなものが多く、あっそう、って感じです。「中央フリーウェイ」なんか、まんまですよね。自分をさらけ出せるところも才能なんでしょうか。もっと後の方になると、他人のストーリーが中心になりますが、この頃は自分が主人公ですね。

プロデュースと編曲は全て松任谷正隆。
ファーストアルバムからずっとティン・パン・アレイがバックを固めていましたが、このアルバムでは、彼らのサポート一辺倒から少し卒業しつつあります。ドラムとベースはアメリカ西海岸のミュージシャンが務め、ストリングス、ブラス、ハープなども使われています。
当時の音楽シーンから一線を画しているのは、やはりポップセンスあふれる編曲でしょうか。一つの型にはまらず、曲に合わせて自由にアレンジするスタイルは、なんなんだろうこの人は、と思います。
荒井由実本人はピアニストで、おそらくピアノで作曲しているはずですが、このアルバムではピアノは抑えられ、いろんな楽器で曲をサポートするという、アレンジャー松任谷正隆を前面に出したアルバムだとも言えるのではないでしょうか。サンバ調はどうかと思いますが。

「天気雨」がおすすめです。

  1. さざ波
  2. 14番目の月
  3. さみしさのゆくえ
  4. 朝陽の中で微笑んで
  5. 中央フリーウェイ
  6. 何もなかったように
  7. 天気雨
  8. 避暑地の出来事
  9. グッド・ラック・アンド・グッドバイ
  10. 晩夏 (ひとりの季節)

作詞作曲:荒井由実
プロデュース・編曲・キーボード : 松任谷正隆
ドラム : Mike Baird
パーカッション : 斎藤ノブ
エレクトリック・ギター : 松原正樹、鈴木茂
ベース : Leland Sklar
コーラス : 山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子、尾崎亜美他

2020年6月20日土曜日

3.15.20 / Childish Gambino (2020)

アルバムタイトル:日付
アルバムアートワーク:白
曲名:ほとんどスタートタイム
という、曲以外の情報はほぼなく、曲にフォーカスせなあかんアルバムです。
彼はラッパーと紹介されることが多い人なので、ラップアルバムかと思いきや、そうでもなかったです。
ブラックミュージックをベースとしながらも、いろんな音楽をごった煮にしたような、あるいはコラージュのようなアルバム、というのが印象です。
  1. 0:00 :”We are, we are, we are” だけの曲ですが、イントロ的に、このアルバムは私たち自身の物語なのだと宣言してるのかもしれません。
  2. Algorhysm:アルゴリズムに合わせて “Move your body”, “That’s gonna make you move and groove”。いつの間にかアルゴリズムに囚われてないか、という問いかけなんでしょうか。機械的なバックにエフェクトのラップが不気味さを表してます。Tom Waits にも通じるような
  3. Time:”Running out of time” 時間が足りない。地球環境を憂えとるのか、社会の動くスピードを憂えとるのか。Ariana Grande フィーチャですが、彼女らしさはほぼなし。でも、曲としてはポップに仕上がってます。
  4. 12:3821 Savage が参加したラップ曲。ドラムマシンに乗せて。
  5. 19:10 “Beautiful”;Prince そのものの、なかなかポップなええ曲です。”To be beautiful is to hunted”。うーん、ちょっと意味不明。
  6. 24.19 “Sweet Thing, Thank You”:パートナーへのラブソング。素直にこう言いたいね。Sly Stone のような曲調が心地よいです。
  7. 32:22 “Warlord”:かなり実験的な曲。”Billie Jean is on fire” 何を指しているんやろう。
  8. 35.31 “Little Foot, Big Foot”:young drug dealer に向けての警告?童謡調が遊び心を出してます。
  9. 39.28 “Why Go To The Party”:ミステリアスなアカペラ調の曲。パーティに行ったから2発やられてもた。
  10. 42:26 “Feel Like Summer”:ミニマルなバックに、美しいメロディが乗っかって進みます。Everyday gets hotter, slow down,  go down.
  11. 47:48 “The Violence”:暴力についての複雑な曲。”Beat him up, keep him down, never say what you see, keep quiet” と言いながら “Don’t worry ‘bout tomorrow” と言う。アメリカでの黒人に対する暴力への反対デモを先取りしたような歌詞に驚きます。終盤の子供とのやりとりにほっとさせられます。
  12. 53:49:ロックテイストあふれるラップ。Beastie Boys を思い出しました。

ドラッグ、地球環境、暴力、差別、機械依存など、現代社会への憂いにあふれ、たまにラブソングが入っているいいアルバムだと思います。
全然違うサウンドの集まりの割には、なぜか統一感があり、何度でも聴いていられるのが不思議です。

2020年6月13日土曜日

Stuff / Stuff (1976)

"Miles in the Sky" が出たのは1968年。
Herbie Hancock にフェンダー・ローズ、Ron Carter にエレクトリック・ベースを持たせ、初めてロックを取り入れました。
ジャズ界は Miles の動きに触発され、怒涛のようにクロス・オーバー、フュージョンへと流れていきます。
その曲 "Stuff" は最初に取り組んだとは思えない完成度の高い曲になってます。

それから、8年。
Gordon Edwards は "Miles in the Sky" を意識したのかどうか分かりませんが、名うてのセッション・ミュージシャンを集めて "Stuff" というバンドを組み、ファースト・アルバムを出します。
ドラムスの Steve Gadd だけがジャズ畑出身で、他のメンバーは全て R&B 畑ですので、決してジャズ、フュージョンといった音楽をやりたかったわけではなさそうです。
ジャズ、フュージョンの枠じゃなくて、R&B とかソウル・ミュージックというジャンルで語られることも多いんですが、それもちょっと違うんよねぇ。
ファンクとかグルーブを強調したような言われ方もするんですが、どっちかというと「インスト軽音楽」って感じでしょうか。とはいってもイージー・リスニングとはだいぶ違う。
フュージョンのようにテクニックを前面に出すのではなく、曲の雰囲気を一番大切にしてそれそれがいい仕事をする、さすがセッション・ミュージシャンの集まりですね、と言いたくなります。

このアルバムは全体的に曲調は明るくて好きです。軽快な気持ちにさせてくれます。

  • "Foots" は Gale と Dupree のギターがブルージーですが、ソウルフルで明るい、さわやかな曲になっています。最初の Dupree のギターの入りなんかは、これは絶対ジャズじゃないです。エレクトリック・ブルースとR&Bが混じったような。このアルバムを代表する曲だと思います。
  • "My Sweetness" はフュージョンっぽい曲。途中盛り上がる箇所がありますが、そこから急に下る。Tee のキーボードがメロウです。
  • "(Do You) Want Some Of This" は、Edwards のうねるようなベースではじまり、Tee のキーボードがフィーチャされたリズミカルな曲。
  • "Looking For The Juice" と "Reflections Of Divine Love" は、Gale と Dupree のギター・プレイを活かしたゆっくり目の曲で、"Reflections Of Divine Love" は、ゴスペル・マナーで、後半盛り上がっていきます。
  • "How Long Will It Last" はB面の1曲目らしく、はじけるジャンプ・ナンバー。少しデキシーズ。
  • 一転して次の "Sun Song" はスロー・テンポに、Dupree の低音ギターと Tee のキーボードが絡みます。
  • "Happy Farms" は曲名通りハッピーなカントリー調の曲で、結構好きです。いっときの細野晴臣の曲調を感じさせます。
  • ラストは、ラストらしく "Dixie / Up On The Roof"、眠りに誘うような心地よさです。


リード楽器でグイグイ引っ張っていく感じじゃなくて、アンサンブル重視のバンド・サウンドが素晴らしいです。

  1. Foots (Written by Stuff)
  2. My Sweetness (Written by R.Tee)
  3. (Do You) Want Some Of This (Written by R.Tee)
  4. Looking For The Juice (Written by G.Edwards, R.Tee)
  5. Reflections Of Divine Love (Written by G.White)
  6. How Long Will It Last (Written by E.Gale)
  7. Sun Song (Written by L.Thomas)
  8. Happy Farms (Written by C.Dupree)
  9. Dixie / Up On The Roof

Gordon Edwards(b), Cornell Dupree(g), Eric Gale(g), Richard Tee(k), Chris Parker(d), Steve Gadd(d)