2023年7月24日月曜日

odds and ends / にしな (2021)

にしなのデビュー・アルバム。
2020年10月の "ランデブー" から "真白" 、"夜間飛行"、"ケダモノのフレンズ"、"ダーリン"、"centi"、"ヘビースモーク"まで、毎月デジタル・リリースを続けてきて、最終的に4月にこのアルバムに結実しました。
デビュー・アルバムらしく、書き溜めた曲の寄せ集め的なバラエティに富んだ内容になっています。

歌詞が少し硬いのとアレンジがプロっぽいのはしょうがないところですが、その声がそれらを凌駕しています。
歌手を職業にしようと思った本人も偉いですが、この声を発掘したレコード会社?事務所?の人も偉い!
何かに「中毒性」のある声、と書いてありましたが、「中毒」というよりは、ハートに引っかかるというか、ぐいっと楔を打ち込まれるというか、僕の場合はそんな感じ。
声ってホント不思議だな、と初めて思える歌声でした。
人を個別に認識する力、例えば顔を識別する、声を識別する力は人類が生まれてから数百万年の間に特に発達させてきたんでしょうね。
強力な個性の一つの声がこんな形で僕に迫ってきます。

アルバム・タイトルは「ガラクタ」。「にしな自身が、いろんな人が普通だったら捨ててしまう気持ち、切れ端とかガラクタみたいな感情を拾って、それを繋ぎ合わせてできていった曲たち、また以前は自分の中の余計な感情や欲求が膨らめば膨らむほどそれを醜く感じていたけれど、今はそんな無駄に思えるガラクタみたいな気持ちが自分に色を与え、それらが縫い合わさって自分も形成されているように感じ、それらが集まってできたアルバムみたいだと感じた所から、このタイトルが名付けられた」そう。

"ケダモノのフレンズ"、"centi"、"真白"、"ヘビースモーク"の4曲が特に素晴らしいです。


  1. 秘密基地
  2. ランデブー
  3. 真白
  4. 夜間飛行
  5. ケダモノのフレンズ
  6. ダーリン
  7. centi
  8. ヘビースモーク
  9. 透明な黒と鉄分のある赤
  10. 桃源郷

2023年7月9日日曜日

A Woman Needs Love / Ray Parker Jr. and Raydio (1981)

"Raydio" はもちろん Ray Parker Jr. の "Ray" をモジってますよね。
そういう意味じゃ、ほぼ Ray Parker Jr. のワンマンバンドなんでしょうね。
メンバーチェンジを経て、前作からはついにバンド名に "Ray Parker Jr. and" がつくようになりました。これって、"Ray" の重複のワンマンが過ぎません?
でも、全ての作曲、アレンジ、さらにほとんどの楽器を彼自身が演奏してるということなので、もうソロプロジェクトと言ってもいいのかもしれません。
案の定、Raydio はこのアルバムを最後に解消、Ray Parker Jr. はソロの道に進みます。

このアルバムは、Raydio にとって最大のヒット曲 "A Woman Needs Love" を生み出しました。
この曲もそうですが、アルバム全体を通して、ソフト R&B の香が支配しています。
当時の日本の言い方だと、AOR、そしてブラックコンテンポラリー。
マイルドで引っ掛かりが少なく、リスニングイージー、アーバンな雰囲気。
当時の先端を行くというよりは、流行を大胆に取り入れて、売れる音楽を作りたかったんでしょうね。
Michael Jackson の "Rock With You" が出たのは1979年。Bobby Caldwell "What You Won't Do For Love" 1979年。Christopher Cross "Ride Like the Wind" 1980年。Chic "Le Freak" 1978年。
そんな世相だったんでしょう。

Ray Parker Jr. 自身はセッションギタリストだったわけですが、ギターを全面に出すことなく、柔らかなシンセやストリングスで曲をまとめています。その辺が George Benson と違うところですよね。
とは言っても、ところどころでこ気味いいカッティングギターを聴かせてくれます。

アルバムは、スローテンポな曲と、アップテンポな曲の繰り返し。
メロウさで言えばスローテンポな曲ですが、ファンク風味を付け加えたアップテンポな曲も捨てがたい。

僕が80年代当時行ってた輸入盤屋さんでは、ジャケットいっぱいに顔写真が写ったブラコンのLPがいっぱい出てたのを思い出します。あまり手を出しませんでしたが。音楽的にじゃなくて。


  1. A Woman Needs Love (Just Like You Do)
  2. It's Your Night
  3. That Old Song
  4. All In The Way You Get Down
  5. You Can't Fight What You Feel
  6. Old Pro
  7. Still In The Groove
  8. So Into You


  • Ray Parker Jr. : Producer, Song writrer, Engineer, Mixer, Vocals, Guitar, Bass, Drums, Piano, Synthesizer
  • Arnell Carmichael : Vocals
  • Cheryl Lynn, Darren Carmichael, Deborah Thomas, J.D. Nicholas, Jerry E. Knight, Josephine James, Sharon Jack : Backing Vocals
  • Gene Page : Strings arrange
  • Larry Tolbert : Drums
  • Ollie E. Brown : Drums, Percussion
  • Paul Jackson Jr. : Guitar
  • Sylvester Rivers : Piano, Synthesizer

2023年7月1日土曜日

Né La Thiass / Cheikh Lô (1996)

Cheikh Lô はブルキナファソ生まれのセネガル・ミュージシャン。
このデビュー・アルバムは、セネガルのスター Youssou N’Dour のプロデュースで、Youssou のセネガルの Studio Xippi で録音されています。
セネガルではカセットが当時主流だったようで、6曲入りのカセットとして発売され、のちに3曲追加されています。そのあたりの音楽業界事情がおもしろいですね。したがって何が違うのか分かりませんが、カセットを前提としたミックスだそうです。

タイトルの "Né La Thiass" というのは「一瞬のうちに消え去る」という意味だそうで、どうも「ネラチャス」と発音してますね。

アフリカン・ポップにありがちな、エレクトリックな感じは最小限に抑え、アコースティック中心です。
かつ、地元マーケットを意識した割には伝統音楽に忠実というわけではなく、西洋あるいはラテンを大幅に取り入れた曲調です。ラテンの元になっているキューバのソンも、さらに源流を辿ればアフリカですもんね。

ゆったりとしたフォーキーな曲が多く、ポリリズムのパーカッションとベースにギターが絡み、暑いというよりは涼しげ。
リラックスした時に安心してきける一枚です。

ちなみに、Cheikh Lô はムスリムで、その精神はいくつかの曲と本人のドレッドヘアにも反映されているそうです。曲にもなっている "Cheikh Ibra Fall" というのはその活動家のようです。


  1. Boul Di Tagale
  2. Né La Thiass
  3. Ndogal
  4. Doxandeme
  5. Sant Maam
  6. Set
  7. Cheikh Ibra Fall
  8. Bamba Sunu Goorgui
  9. Guiss Guiss


  • Cheikh 'N'Digel' Lô : Lead Guitar, Drums, Rhythm Guitar
  • Mbaye Dieye Faye : Percussion
  • Assane Thiam : Talking Drum [Tama]
  • Pathe Diassy : Double Bass
  • Habib Faye : Bass, Keyboards
  • Omar Sow : Guitar
  • Youssou N'Dour : Guitar (5,6)
  • Ibrahima N'Dour : Keyboards (4)
  • N'Deye Marie Ndiaye : Vocals
  • Thierno Kouyate : Saxophone
  • Thomas Vahle : Flute


  • All songs written by Cheikh 'N'Digel' Lô
  • Produced by Youssou N'Dour
  • Recorded at Studio Xippi