2020年7月25日土曜日

Sweet Swingin' / 佐藤奈々子 (1977)

デビュー前の佐野元春との共作で曲を作ったセカンド・アルバム。
作詞は全曲佐藤奈々子本人ですが、そこここに佐野元春的なフレーズが出てきますので、かなり影響されてたんでしょうね。

ロック・テイストはあまり感じられず、ボサノバ・フレーバーのかかったジャズ・ポップといったところでしょうか。
曲の良さを活かしたアレンジというよりは、佐藤奈々子のウィスパー・ボーカルに合わせた選曲とアレンジのように思います。

  1. グッド・タイム・スウィンギン
  2. フェアウェル・パーティー
  3. ラズベリー・ラヴァー
  4. ハリー・ブギー
  5. スリーピー・コール
  6. ミューズの恋人
  7. 週末のハイウェイ
  8. 海にうかぶピアノ
  9. チープ・ダンス
  10. オリーブの風
  11. イヴの月の上で
  12. ふらりさよなら ≪ボーナス・トラック≫
  13. フラミンゴの夜 ≪ボーナス・トラック≫

作詞:佐藤奈々子
作曲:佐藤奈々子・佐野元春
アレンジ:横内章次

2020年7月22日水曜日

De Mar y Río / Canalón De Timbiqui (2019)

先日、Harrison Ford が CIA 情報分析官 Jack Ryan を演じる映画 “Clear and Present Danger”(邦題「今そこにある危機」)を観たところでした。
麻薬組織のあるコロンビアの首都ボゴタが映画のステージになってます。
1994年の映画ですが、ボゴタはちゃんとした都会でした。でもめっちゃ危険そう。
僕の数少ないコロンビアの知識、コーヒー、麻薬、以上。くらいなもんで、場所もはっきり認識できてませんでした。ベネズエラの隣なんですね。

そのコロンビアの太平洋側のティンビキという地域をホームにしている、伝統音楽集団が、この Canalón De Tinmbiqui です。直訳すれば、ティンビキの樋。
コロンビアというのは、北はカリブ海に、西は太平洋とエクアドルに、東はベネズエラに、南はペルーとブラジルに面しているという位置関係になります。
その太平洋側のカウカ県にティンビキはあります。

この地域はアフリカ系住民が95%だそうで、伝統音楽というのはつまりアフリカ音楽なんですね。それにちょっとラテンが混じっている。
Canalón De Tinmbiqui も、マリンバとパーカッションにボーカル、といったシンプルな構成を基本としているアフリカン・スタイルの音楽をやってます。
このシンプルさが素晴らしく、いい!シンプルなアンサンブル。
マリンバのリズムとサウンドが心地よい。

アフリカのポップ・ミュージックはいくつか聞いたことはありますが、この Canalón De Tinmbiqui のスタイルは、そのどれとも違います。アフリカの純粋なコア部分だけが残ったように感じます。昔の京言葉が沖縄で一部残っているような。

Canalón De Tinmbiqui はなんと1974年に結成された歴史あるバンドだそうで、今はボーカルの Nidia Góngora に率いられています。堂々としたハスキーなスモーキン・ボーカルがいい感じです。
ライブ映像も、シンプルそのもの。
こういう風に、伝統音楽を真摯にやって、発展させているバンドが世界中にいて欲しいと願います。


  1. Tio Guachupesito グアチュペシトおじさん
  2. A Palanquero パランケロへ
  3. Quitate de mi escalera 梯子を降りて
  4. De mar y río 海と川から
  5. En Belén nació ベツレヘムで生まれた
  6. Subiendo bubuey arriba ブブエイ川を上流に向かって
  7. La casa de la compañia 仲間の家
  8. Digna y feliz ふさわしく幸せな
  9. La posada ラ・ポサーダ
  10. Agustín se casó アグスティンは結婚した
  11. Malvada 悪女
  12. Oí yo オイ・ジョ
  13. Bárbara aplaca tu llanto バルバラ、鳴き声を鎮めて


Nidia Góngora Bonilla – Voz principal y Dirección Musical
Policarpa Angulo Hinestroza – Voz y guasa
María Celia Zuñiga Sinisterra – Voz y guasa
Yuli Magali Castro Bonilla – Voz y guasa
Lizandro Vallecilla – Bombo Arullador
Duvan Dias del Castillo – Cununo
Danilo Cuenú Carabalí – Bombo Golpeador
Andrés Lucumí – Cununo
Cristian Bonilla Zuñiga – Marimba

*Guasa:シェイカー、Cununo, Bombo:パーカッション

2020年7月12日日曜日

Stanley Road / Paul Weller (1995)

Paul Weller は、"Wild Wood" 以降、ほとんど聴いてませんでした。
この "Stanley Road" は、その "Wild Wood" に続く、ソロ3作目になります。

Stanley Road は、Paul Weller が生まれ育った通りの名前らしく、つまり、このアルバムでは、彼のルーツ・ミュージックに焦点を当てたものです。
Steve Winwood がゲスト参加しているのが象徴的なのですが、かなり、ソウル寄りの曲が集められています。そして、ブルーズ。
ブリティッシュ・ロックというよりは、アメリカン・ミュージックへのあこがれが詰まっています。
元々、イギリスのロックはアメリカのR&B、ブルーズに強い憧憬をもったものでしたから、ルーツをたどると、そこへ行きつくのは当然かもしれません。
彼のアイドル、The Who はともかくとして、Small Faces は強くソウルを意識したバンドでしたし、Small Faces の Steve Marriott が作ったバンド Humble Pie はまさしくヘビー・ソウルともいえるサウンドが特徴でした。

The Jam、The Style Council に続く Paul Weller のキャリア3世代目のソロ時代は、原点回帰、アメリカン・ロックの追求時代なのでしょうか。
The Jam、The Style Council ともに、いたってイギリス的でした。
キャリア最高傑作(だと僕は思います)の "All Mod Cons" の "Down in the Tube Station at Midnight" なんかは、イギリス人の、かつ彼でなければ書けない曲だと思います。
The Style Council も確実に時代を作っていました。

この "Stanley Road" もすばらしい曲が集められた、これまた傑作ですが、アメリカ色が強すぎるところに、レス・オリジナリティの物足りなさを感じるのは僕だけでしょうか。
それとも期待が高すぎるのか。

それでも、このアルバムには、カッコいい曲が揃っています。
  • 1曲目 Eric Clapton ばりの "The Changingman"、スロー・ダウンした2曲目 "Porcelain Gods"
  • 美しい "You Do Something to Me"
  • デラックス・エディションにはデモ・バージョンも収録されていますが、"Broken Stone" はデモの方がワイルドで断然いいです
  • エッジの効いた "Whirlpool's End"

  1. The Changingman
  2. Porcelain Gods
  3. I Walk On Guilded Splinters
  4. You Do Something To Me
  5. Woodcutter's Son
  6. Time Passes...
  7. Stanley Road
  8. Broken Stones
  9. Out Of The Sinking
  10. Pink On White Walls
  11. Whirlpools' End
  12. Wings Of Speed

Noel Gallagher(ac-g)
Steve White (d)
Steve Winwood (org, ep)
Produced by Brendan Lynch

2020年7月4日土曜日

It's About Time / Nile Rogers & Chic (2018)

1992年の “Chic-ism” 以来、実に26年ぶりとなる Chic のニュー・アルバムですが、Bernard Edwards と Tony Thompson がいない Chic は、もはや Chic と言えるのか、と思いますので、実際は、Nile Rogers のソロ・アルバムと言っていいでしょう。
ただ、フロントに女性ボーカルを使ったり、かつてのディスコ・サウンドを再現したりという、Chic のフォーマットを使っているのは確かなので、それで Chic の名前をあえて使ったのかもしれません。

相変わらず、カッティング・ギターが効いています。これでもか、というくらい、繰り返し、繰り返し、コピーのように使われます。
そして、BPM を刻むかのような、単調なドラム。ディスコ・サウンド。
ここには、僕たちが Nile Rogers に期待するもののが全てあります。

今回の復活は、2013年の Daft Punk“Get Lucky” への起用がベースになっているに違いありません。もう7年も前かと思いますが、彼らのディスコ・サウンドへのオマージュが、 “Random Access Memories” の大成功につながり、かつ Nile Rogers に活力を与えたのでしょう。
思えば、80年代前半は、Nile Rogers はプロデューサーとして引っ張りだこでした。
Let's Dance / David Bowie (1983)Like a Virgin / Madonna (1984)Notorious / Duran Duran (1986)Original Sin / INXS (1984)Cosmic Thing / The B-52's (1989)
いずれも商業的な成功に導きました。ダンサブルなサウンドを下敷きに、アーティストのユニークさを際立たせる力があったんでしょうね。

それでも、やはり Nile Rogers の全盛は1977年〜1979年にかけての Chic 時代だと言えます。革新的なサウンドだったが故に、ワン・パターンと認識されて飽きられてしまったのは残念ですが、そのワン・パターンこそが、ワン・アンド・オンリーだということを、僕たちは後で気づかされます。

その時代の再現に “Get Lucky” で自信を持ったのでしょう。見事に1970年代の Chic サウンドを現代のサウンドに置き換えて、再現してくれています。
中に、フュージョン的な曲(“State of Mine”)、The Stylistics の "You Are Everything" の焼き直し、”I Want Your Love” のセルフ・カバー、Nile Rogers の活躍の後の時代を担ったニュー・ジャック・スイングを再現するために Teddy Riley まで担ぎ出した曲があるのが面白いところです。豪華なゲストも見もの。


  1. Till the World Falls (featuring Mura Masa, Cosha and Vic Mensa)
  2. Boogie All Night (featuring Nao)
  3. Sober (featuring Craig David and Stefflon Don)
  4. Do You Wanna Party (featuring LunchMoney Lewis)
  5. Dance with Me (featuring Hailee Steinfeld)
  6. I Dance My Dance
  7. State of Mine (It's About Time) (featuring Philippe Saisse)
  8. Queen (featuring Elton John and Emeli Sandé)
  9. I Want Your Love (featuring Lady Gaga)
  10. New Jack' Sober" (Teddy Riley version)