2022年4月24日日曜日

Sky Blue / Maria Schneider Orchestra (2007)

これはジャズというんでしょうか。
あくまでクラシックの現代音楽で、ジャズのフォーマットを使っている、というのが近いと思いますが、やっぱジャズのコンボでジャズの楽器を使ってたらジャズ?岩絵の具を使ってたら日本画というように。
インプロビゼーションはあるのか、ないのか。全部書かれたものなのか?ソロ以外は全部書かれたもののような気がします。録音風景を見てないので何とも言えませんが。

全体としては、「幻想的かつ雄大」、どこかでそう聞いたことがありますが、まさにそういった印象です。
いたって静かなんですが、テーマに至るあたりは非常にダイナミック、雄大さを感じさせます。

#1 "The 'Pretty' Road" は彼女の生まれ故郷北中部ミネソタを回顧したもの。Ingrid Jensen の トランペットとフリューゲルホーンが、乾いた空気と青空を思い起こさせます。ギターは、Pat Metheny を意識したもの。確かに "Bright Size Life" と似た雰囲気ですかね。ちなみに Pat Metheny は中部ミズーリ出身。

#2 "Aires De Lando" はペルーの Lando 音楽の複雑なリズムとニュアンスを探求したもの。ペルーの打楽器カホンの奏者 Gonzalo Grau と Jon Wikan をフィーチャしつつ、クラリネットの牧歌的な音色とアコーディオンが不思議の世界に誘います。

#4 "Cerulean Skies" は渡り鳥がテーマ。Cerulean は言わずもがなの「水色がかった青」。鳥のさえずりを交え、壮大に空を描きます。22分近くの長編で山あり谷あり、躍動と静寂、鳥の鳴き声ありヴォーカルあり、構成が複雑ですが、難解さは感じません。2007年のグラミーで、最優秀インストゥルメンタル作曲賞受賞。

タイトルトラック "Sky Blue" は亡くなった友人へのオマージュ。静かな弔いの詩といった趣。

アルバムは、グラミーの最優秀ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバムにノミネートされましたが、惜しくも落選。ちなみにこの年の受賞は Terence Blanchard の "A Tale of God's Will" でした。


  1. The 'Pretty' Road
    • Ingrid Jensen - flügelhorn & trumpet with electronics
  2. Aires de Lando
    • Scott Robinson - clarinet
  3. Rich's Piece
    • Rich Perry - tenor sax
  4. Cerulean Skies
    • Donny McCaslin - tenor sax
    • Gary Versace - accordion
    • Charles Pillow - alto sax
  5. Sky Blue
    • Steve Wilson -soprano sax


  • Steve Wilson - alto/soprano/clarinet/flute/alto flute
  • Charles Pillow - alto/clarinet/piccolo/flute/alto flute/bass flute
  • Rich Perry - tenor/flute
  • Donny McCaslin - tenor/clarinet
  • Scott Robinson - baritone/clarinet/bass clarinet
  • Tony Kadleck - trumpet/flügelhorn
  • Jason Carder - trumpet/flügelhorn
  • Laurie Frink - trumpet/flügelhorn
  • Ingrid Jensen - trumpet/flügelhorn
  • Keith O'Quinn - trombone
  • Ryan Keberle - trombone
  • Marchall Gilkes - trombone
  • George Flynn - bass trombone/contrabass trombone
  • Ben Monder - guitar
  • Frank Kimbrough - piano
  • Jay Anderson - bass
  • Clarence Penn - drums
  • Gary Versace - accordion on The Pretty Road, Aires de Lando and Cerulean Skies
  • Luciana Souza - voice on The Pretty Road and Cerulean Skies
  • Gonzalo Grau - cajon/palmas/percussion on Aires de Lando (right) and percussion on Cerulean Skies
  • Jon Wikan - cajon/palmas on Aires de Lando (left) and percussion on Rich's Piece and Cerulean Skies


All compositions by Maria Schneider
Produced by Maria Schneider and Ryan Truesdell


2022年4月10日日曜日

Wake Up Everybody / Harold Melvin & The Blue Notes (1975)

Teddy Pendergrass 在籍最後のアルバムとなってしまいました。
Teddy Pendergrass はソロもいいですが、やっぱグループでフィリー・ソウルやってる時の方がカッコいいですね。

レーベルは Philadelphia International Records、プロデュースは Gamble & Huff、バックはもちろん MFSB。
繊細なギターにキーボード、きらびやかなストリングスとホーン、ホント素晴らしいの一言です。

アルバムには、メッセージ・ソング "Wake Up Everybody" と、ラブ・ソング "Don't Leave Me This Way" の2大名曲が収録されています。これだけでも買う価値がありますが、これ以外も捨て曲ナシ。
Sharon Paige とのデュエット曲 "You Know How To Make Me Feel So Good" も人気があり、サンプリングに多く使われています。

こんな感じの曲たちは永遠に聞いていたいです。


  1. Wake Up Everybody (J. Whitehead, G. McFadden, V. Carstarphen)
  2. Keep On Lovin' You (J. Whitehead, G. McFadden, V. Carstarphen)
  3. You Know How To Make Me Feel So Good (K. Gamble, L. Huff)
  4. Don't Leave Me This Way (C. Gilbert, K. Gamble, L. Huff)
  5. Tell The World How I Feel About 'Cha Baby (G. McFadden, V. Carstarphen)
  6. To Be Free To Be Who We Are (J. Whitehead, G. McFadden, V. Carstarphen)
  7. I'm Searching For A Love (K. Gamble, L. Huff)


  • Performed by MFSB
  • Produced by Kenneth Gamble And Leon Huff


2022年4月3日日曜日

Love All the Hurt Away / Aretha Franklin (1981)

アトランティックからアリスタ移籍後のセカンド・アルバムになります。

Aretha は1942年生まれやから、このとき39歳か。さすがにちょっと声も変わってきたな、という印象です。後期の Aretha っぽいというか。

このアルバムの一番の売りは、表題曲 "Love All the Hurt Away" でしょうか。なんと George Benson とのデュエットに挑戦してまあまあ成功しています。狙うところは AOR 路線でしょうか。もちろん Benson なんでそうなんでしょうね。
1981年といえば Benson が "Give Me the Night" (1980)を出した直後、ノリに乗っているときです。残念ながらここでは Benson のギターは聴けません。

このアルバムのイマイチなところは、選曲にまとまりがないこと。
#2の "Hold On, I'm Comin'" (もちろん Sam & Dave のカバーです)はいきなり派手なブラスとコーラスでたまげます。これが、グラミーの 「女性ベスト R&B ヴォーカル・パフォーマンス」に選ばれてるのも驚きですが。でもまあ、曲調を別としてヴォーカルだけを取り上げれば、そりゃ Aretha やからすごいでしょうよ、という感想です。

もう一つ驚きなのは、Diana Ross の曲をカバーしていること。前年の同名映画 "It's My Turn" の主題歌らしいですが、Diana と Aretha というのは対極のヴォーカル・スタイルですので。よっぽど曲が好きなのか、ヴォーカル・スタイルの幅を広げようと思っていたのか。でも、結局は Aretha スタイルで歌い上げてますので、前者なんでしょうかね。

スローな曲もたくさん入っているのですが、やっぱりミドル〜アップ・テンポの曲の歌は圧巻ですね。鞠のような弾力のあるヴォーカルはダンサブルになればなるほど、あるいはゴスペル調になればなるほど輝いてくるように思います。

中でも Rod Temperton が書いた "Living in the Streets" と Burt Bacharach の筆になる "Truth and Honesty" はいいですね。
特に "Truth and Honesty" は全く Bacharach らしくありませんが、ポップスの名曲だと思います。イントロのギターとバックのカッティング・ギターがカッコいい。

Rod Temperton の起用といい、TOTO のメンバーの起用といい、のちの "Thriller" と被るところがありますが、その他にも、David Foster, Marcus Miller など豪華なバック陣を用意したのはプロデューサーの Arif Mardin のセンスとアリスタが力を入れている証拠でしょう。

Rolling Stones のカバー "You Can't Always Get What You Want" もあり、Aretha の曲も2曲あり(これまた良し) バラエティに富んだ(悪く言えばまとまりのない)アルバムですね。


  1. Love All the Hurt Away "duet with George Benson" (Sam Dees)
  2. Hold On, I'm Comin' (David Porter, Isaac Hayes)
  3. Living in the Streets (Rod Temperton)
  4. There's a Star for Everyone (Allee Willis, Don Yowell, David Lasley)
  5. You Can't Always Get What You Want (Mick Jagger, Keith Richards)
  6. It's My Turn (Carole Bayer Sager, Michael Masser)
  7. Truth and Honesty (Burt Bacharach, Carole Bayer Sager, Peter Allen)
  8. Search On (Chuck Jackson)
  9. Whole Lot of Me (Aretha Franklin)
  10. Kind of Man (Aretha Franklin)


  • David Foster – keyboards (1,3)
  • Robbie Buchanan – keyboards (2,4)
  • Greg Phillinganes – keyboards (2-7,10)
  • David Paich – piano, Fender Rhodes (5,7–9)
  • Buzz Feiten – guitar (1,7)
  • David Williams – guitar (2-9,10)
  • Steve Lukather – guitar (5-9)
  • Louis Johnson – bass (1,3)
  • Marcus Miller – bass (2,4,5,7–10)
  • Abraham Laboriel – bass (6)
  • Jeff Porcaro – drums
  • Paulinho da Costa – percussion (1,3,5)
  • Steve Ferrone – percussion (7)
  • Produced by Arif Mardin & adit Aretha Franklin (7,9,10)